「箱わな」と「くくりわな」それぞれの特徴は?

箱わなにかかったイノシシ。体当たりしていましたが、箱からは出てこられないので安心
箱わなとは、読んで字のごとく「箱の形をしたわな」です。野生動物が中に入ってエサを咥えて引くなどすると、扉が下りて閉じ込めるというもの。一方、くくりわなはワイヤーなどで野生動物の足や胴体を「くくって捕らえるわな」です。
箱わなは、かかった野生動物と檻越しに対峙することになるため、安全面ではくくりわなよりも上です。ただし、大きな箱わなは一度設置するとなかなか移動することができず、掛けなおすことが容易ではありません。
このため、掛からない場所に置きっぱなしになりがちであったり、獣がわなを学習して入らなかったりして、捕獲率が低いようです。さらに、自作ができないので高くつくという問題もあります。
くくりわなのメリット
前述のように、捕獲率や汎用性の高さもあって、筆者はわな猟免許を取得する前から「もしもわな猟をするならくくりわながいいな」と思っていました。
もちろん、箱わなならではの強みもあるのですが、くくりわなにも他にはない面白さがギュッと詰まっています。ここでは、筆者が思うくくりわなのメリットや魅力をいくつか紹介します。
野生動物との駆け引きが面白い!

尾根にできた溝を飛び越えた先に、混みあって付いていた大小のイノシシの足跡。ファミリーで次々にジャンプしたんだろうなと想像が膨らむ
くくりわなのメリットは、なんといっても機動力の高さ。軽くて小さいため、山や林の中、畑に続く藪の中など、獣の通り道に仕掛けることができます。
野生動物の足跡や食痕を見て行動を読み取るアニマルトラッキングをしながら、どこにわなを仕掛けるか考える「動物との知恵比べ」も醍醐味。自分なりに工夫を重ねながら、捕獲に向けたアプローチができるところに楽しさがあると思います。
自作できるため、コストが抑えられる
くくりわなは完成品を購入することもできますが、仕組みさえ分かれば自作できます。繰り返し使えるパーツもあるため、消耗したパーツを取り換えてメンテナンスしながら使用すれば、安く長く使えるのも魅力。パーツの交換は、基本的に数百円ほどの出費で済むことがほとんどです。
また、バネの強度や長さ、踏み板の素材や形状など、自分なりの工夫を施してオリジナルのわなが作れるのもDIY好きにはたまりません。
ある程度なら狙う獲物の大きさを選べる
くくりわなは、野生動物が掛かったときに脚がちぎれないよう、「留め具」の使用が義務付けられています。
この留め具で締め付ける輪の大きさを調整できるため、「畑を荒らしているこのイノシシを獲りたい!」という際には大きめの輪っかで止まるようにしておけば、仮にアライグマやハクビシンが掛かっても脚が抜けて勝手に逃がすことができます。
くくりわなのデメリット
一方で、デメリットもやはりあります。筆者の住むエリアでは箱わなを選ぶ人も多いのですが、「箱わなは捕獲率が悪いってみんな言っているのに、なぜだろう」と思っていました。
その理由も、いざ自分がやるとなると「なるほど」と思うことばかりです。ここでは主なデメリットを3つ紹介します。
野生動物と直接対峙することになる

周囲の地面をえぐりながら暴れまわるイノシシ。ベテランの猟友会の先輩に無理を言って撮影してもらったが、本来はこの状況で撮影はおすすめできない
デメリットの筆頭は、なんといっても「野生動物と間に何も隔てずに対峙することになる」という点です。
わなに掛かった野生動物は、時に自分の足をちぎってまで逃げようとし、個体によっては人間にだって襲い掛かってきます。
特にイノシシは死に物狂いで向かってくるため、事故が多いそう。猟友会の先輩からは、「病院勤めの人が言うには、猟期になるとイノシシに噛まれて骨折した人がよく来るらしい」…などという話も聞きました。
近年では錯誤捕獲でクマがくくりわなに掛かる事例も増えており、クマが生息する地域ではいっそうの注意が必要となります。
毎日の見回りと運用が大変

わなの近くに付けることが必須とされている標識
2つ目は、見回りが箱わなよりもシビアなこと。
そもそも、箱わなでもくくりわなでも、一日一回以上の見回りが義務付けられているので回数的には同じなのですが…。くくりわなは、もしも野生動物が掛かっていたらできるだけ速やかに処理しないと危険です。
ワイヤーや脚が切れて逃げることもあるし、たまたま通りかかった人や飼い犬にケガをさせる可能性だってあります(原則、人が通る場所にはわなをかけてはいけません)。
箱わなの場合は周辺に危険が及ぶことはあまりないので「一日の中で空いている時間に行こう」と思えますが、くくりわなの場合は朝のうちに見に行かないとなんだか不安です。しかも、見に行けないときは事前に掛けたわなを一つひとつ回って「作動しない状態」にしなくてはいけないという大変さもあります。
“から弾き”や悪天候で露出しやすい

から弾きで地面から出てしまったくくりわな
3つ目は少しの刺激で作動しやすいため、再設置の必要が結構あること。例えば大雨で土から出てしまったり、野生動物が踏んだけれど掛からずに逃げる“から弾き”もよくあります。
くくりわなは持ち運びやすいだけに、山中や林の中に掛けることが多くなります。そうした場所を歩き回ってチェックし、露出やから弾きがあった場合はワイヤーをセットして埋め戻すというのはかなり面倒です。
その点でいえば、箱わなはそこまで天候に左右されず、から弾きもほぼありません。
くくりわなでの“止め刺し”はどうする?

シカもオスだと攻撃してくることがある。特に繁殖期のオスは気が荒く、ツノで突かれて大怪我をする事故も発生している
前章で紹介した通り、デメリットの中で最も深刻なのが、「野生動物と直接対峙する」ことです。
大きなイノシシやシカが掛かっていたら、まずは遠くからワイヤーがしっかり脚にはまっていることを確認。かかりが浅いと、脚がわなから抜けて逆襲に遭うことがあります。ワイヤーを固定している木の方も、折れそうにないかを改めて目視でチェックしておきましょう。
筆者は銃を持っているため、「イノシシや牡鹿が捕れたら銃で止め刺ししよう」と思っていますし、だからこそ銃が使える場所にわなを掛けようと思っています。
でも、銃がなかったり銃を使うには危ない場所だったりする時はこん棒で殴打して気絶させるか、槍で直接止め刺しをすることが多いそう。これは初心者には怖すぎます。
銃猟免許がなくてくくりわなをする人は、いざという時に手伝ってくれる銃猟免許のある知人を見つけておくことを強くおすすめします!
まとめ
目当ての野生動物が通る場所を選び、能動的に捕獲へのアプローチができるくくりわな。コツを掴めば捕獲率も上がるし、最初に一式作ってしまえば、あとは数百円程度のパーツの交換だけで済むため、モチベーションやコスト的にも長く続けられると思います。
ただし、毎日の見回りと掛かったあとのことを考えると、万人に向いているわけではありません。周囲を見ると、「農家の人に頼まれてわなを掛ける代わりに、見回りはしてもらっている」といったWIN-WINな連携を取っている人も多いです。
これからくくりわなを始めようと検討している人は、自分の生活環境や止め刺し方法などをしっかり検討して、まずは近場に数個掛けるところからスタートしてみてはいかがでしょう。
















