先代の土づくりを受け継ぐトマト栽培、立ちはだかったコナジラミの壁
群馬県伊勢崎市に4反8畝のハウスを構える上田農園では、「桃太郎」シリーズなどの大玉トマトを中心に、複数品種のミニトマトを栽培し、直売所や契約先に出荷しています。

栽培責任者の丸山重和さん(48)は、8年前に妻の実家である上田農園に就農。先代の栽培哲学を受け継ぎ、有機肥料を主体とした土づくりを行いながら、できるだけ農薬に頼らない栽培を目指してきました。
しかし、土づくりを徹底しても避けられないのが病害虫のリスクです。なかでも丸山さんを悩ませたのが、トマトの生育や品質に深刻な被害を及ぼすコナジラミでした。
「近年の温暖化の影響なのか、ハウスの外にいるコナジラミの量が尋常ではなくて、ハウス内に侵入する数も明らかに増えています」と丸山さん。

上田農園の丸山重和さん
従来は複数の農薬を組み合わせて対処していましたが、個体数の増加に加え、薬剤抵抗性の獲得により、効きにくさを実感する場面も増えていったといいます。
「できるだけ農薬を使わずに、どう作物を守っていくか」。そんな悩みを抱えるなかで丸山さんが着目したのが天敵を利用した防除でした。
農薬だけに依存せず、耕種的・物理的・生物的・化学的防除を組み合わせたIPM(総合的病害虫管理)が近年普及しつつあり、その中核技術の一つとして天敵利用が位置づけられています。
「トマトで使える天敵」がもたらした劇的な変化

タキイ種苗が販売するアグリ総研(株)の天敵製剤『バコトップ』
コナジラミに対して有効な対策を探していた丸山さんが、JA佐波伊勢崎の担当者に紹介を受けたのが天敵製剤『バコトップ』でした。
「有機肥料を主体に減農薬を目指す当園の栽培方法に合っているのでは、と勧めてもらったのがきっかけです。試してみようと、すぐに導入を決めました」と丸山さん。
これまで、トマト栽培では葉の表面にある毛茸(もうじょう)が天敵昆虫の活動を阻害するため、天敵製剤の利用は難しいとされてきました。しかし、『バコトップ』の有効成分であるタバコカスミカメは、毛茸の影響を受けにくく、トマトでも定着しやすいという特性があります。
初年度はハウス1棟で試験的に導入し、その効果に確かな手応えを感じた丸山さん。その後の『バコトップ』がミニトマトに適用拡大されたこともあり、現在はすべてのハウスに『バコトップ』を導入しています。

左:使用方法はシンプル。容器を開け、容器内の植物片をタバコカスミカメごと作物に乗せていく。右:タバコカスミカメの成虫
「導入前は、ハウス内を歩くとコナジラミが雲のように舞い上がることもありましたが、今ではほとんど見られなくなりました。農薬散布の回数も明らかに減り、作業負担やコストの削減につながっています」と丸山さん。
コナジラミによる黄化葉巻病の発生リスクも大幅に低下し、収益に直結する「秀品率」も向上しています。
「黄化葉巻病による被害が減り、耐性を持たない品種でも安心して栽培できるようになりました。品種を自由に選んで作れるのは生産者として嬉しいことです」
『バコトップ』を防除体系に組み込んだことで、義父の代からの有機・減農薬の取り組みはより確かなものとなり、特別栽培農産物の認証取得にもつながったそうです。

左:敷地内に設置されたトマト専用の自販機。夕方には売り切れることも。右:上田農園の大玉トマト
効果を最大化する!上田農園の『バコトップ』活用術
導入にあたってはJA全農ぐんま、JA佐波伊勢崎による技術支援を受けながら、3年間にわたる試行錯誤を重ねてきました。丸山さんがたどり着いたバコトップ活用術のポイントは、「天敵が働きやすい環境を整えること」にあります。上田農園では、タバコカスミカメの住処となる「バンカープランツ」としてクレオメをハウスの谷にあたる通路に約2本ずつ植栽しています。

クレオメ。熱帯アメリカ原産の一年草で暑さに強い
「クレオメにタバコカスミカメを放飼すると、葉を吸汁しながら増殖していき、そこを拠点にハウス内を巡回してコナジラミを捕食してくれます」と丸山さん。
クレオメの葉が穴だらけになっていれば、天敵が世代交代しながら活動している証拠です。放飼量の目安はトマト2株につき1頭。もし定着が弱い株があれば、クレオメの枝を切ってタバコカスミカメを軽くはたき落とし、分布を整えます。さらに、粘着捕虫資材、目合0.3mmの防虫ネットの設置などでIPMを実践しています。

ハウス内の様子
『バコトップ』の効果を引き出すために、コナジラミの密度をできるだけ下げてから施用することも欠かせません。上田農園では、8月後半の植え付け2週間前までに化学農薬の処理を完了し、9月終わりから10月中旬に『バコトップ』を導入します。定着したタバコカスミカメは、収穫が終わる翌年5~6月ごろまで活動し、収穫後は太陽熱土壌消毒をして次作に備えます。
もちろん、天敵だけですべての害虫が抑えられるわけではありません。昨年はコナジラミをしっかり抑制できた一方でサビダニが発生しました。
「それでも、タバコカスミカメが害虫を捕食してくれるおかげで圃場全体のバランスが保たれ、大きな被害には至っていません。天敵に影響の少ない農薬を選択しながら、うまく共存させていくことが重要だと感じています」と話してくれました。

IPMを支える開発と販売、広がる『バコトップ』の可能性
天敵製剤『バコトップ』の開発・製造を手がけた株式会社アグリ総研は、送粉昆虫・天敵昆虫の研究開発・製造・販売を専門に行う企業です。生態系をいかした防除技術の普及に取り組み、IPMを支える基盤づくりを進めています。
営業担当の森修二郎さんは、「タバコカスミカメは日本土着の天敵です。持続可能な防除(※)を実現したいという思いで『バコトップ』を開発しました。天敵製剤は、IPMの4つの防除体系を念頭に使っていただくことで、減農薬や省力化などの効果を実感していただけます」と語ります。『バコトップ』は、キュウリのアザミウマ類にも適用しています。
※持続可能な防除(病害虫対策)とは、IPMの考え方に基づき天敵や物理的防除を活用しながら、将来にわたって安定生産を可能にする病害虫管理を指します。

『バコトップ』の適用表
こうした技術を生産現場へ橋渡しするのが、販売元であるタキイ種苗株式会社です。
同社営業担当の谷口陽一さんは、「環境負荷を抑えながら安定生産を目指す生産者の課題に対し、天敵製剤だけでなく、粘着捕虫資材や防虫ネット、耐性品種なども取り揃えた総合的な提案でIPMへの取り組みをサポートしていきます」と抱負を語ってくれました。
先代からの土づくりを守りつつ、新たな技術を積極的に取り入れる上田農園の挑戦は、自然の力を生かした次世代の防除体系の姿を示しています。持続可能な病害虫対策に『バコトップ』は確かな解決策として広がりつつあります。

左から丸山さん、谷口さん、森さん
【取材協力】
【商品に関するお問い合わせ】
タキイ種苗株式会社 資材部
電話 075-365-0123
住所 京都市下京区梅小路通猪熊東入
*お買い求めは、お近くのJAもしくは販売店にご相談ください*
















