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85品種超のキウイで観光農園も直売も成功 次は“世界の人々を豊かにする農業”へ!

2026年度のナフィールド国際農業奨学金制度の日本代表スカラーに選ばれた平野耕志(ひらの・こうし)さん 。代表を務める静岡県掛川市のキウイ観光農園「キウイフルーツカントリーJapan 」は、約10ヘクタール の農地で85品種を超える キウイフルーツを栽培しています。平野さんは2011年からJICA海外協力隊としてアフリカ・ザンビアに赴任 。そこで農業の意義を強く感じたといいます。そして今なお続くチャレンジとは。ナフィールドジャパンを通じた国際的ネットワークへの期待など、ナフィールド国際農業奨学金制度の研修プログラムを目前に控えた平野さんに聞きました。

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アフリカ・ザンビアで直視した「命を支える農業」

ザンビアの子供たちの生活習慣

「ザンビアには、餓死しそうな子供はほとんどいませんでした」
2011年から約2年間、JICA海外協力隊としてアフリカ・ザンビアで農業指導に携わった平野さん。きっかけは、地元の掛川市で耕作放棄地が増え、景観がみるみる変わっていくことへの危機感でした。農業や地域社会の課題を解決しようと、茶摘みの体験イベントなどを企画したものの赤字。解決の糸口を模索する中で、協力隊に応募します。
「食料を生み出す農業は『命を支える仕事』と言われることがありますよね。ザンビアではそれをリアルに感じました。住民たちが食事の問題で亡くなっていたからです。それも餓死ではなかった。肥満や糖尿病などの、生活習慣病が理由です。バランスの良い食事ができないのですね」
入院して治療したとしても、退院後には食生活が戻り、また入院を余儀なくされることもあったといいます。

海外協力隊時代の平野さん

「いい農家が居ないと国は豊かにならない」

「現地の医師は『いい農家が居ないと国は豊かにならない』と言っていました。いい病院を用意しても、栄養の高い食料が出回らないと人は健康になれず、国も豊かになれないという意味です。それほどまでに重要なのだなと感じました。けれども一方では、農家の地位は低く、収入も少ない。そのギャップに課題感を持ちました」
また、現地の子供たちの生活にも驚かされたと話します。
「5歳の子供が、2歳くらいの子供を背負いながら、火をおこしてスープを作ったりする。日本では火をおこそうとするだけで怒られそうですよね。その違いを感じたときに、何かが起きても食べることに困らないような、生きる強さのようなものを日本の子供たちに身に付けてもらいたいと思いました。農業という仕事や、うちのような施設は、それを伝えるためにいい場所だと思い、帰国後の2014年から本格的に農業を行っています」

日本最大級のキウイ観光農園での学習事業

ティースプーン1杯の種から

平野さんが運営するキウイフルーツカントリーJapanは日本最大級のキウイ観光農園です。
もともとはミカンとお茶を中心に栽培していましたが、1976年に平野さんの父親である正俊(まさとし)さんがキウイフルーツの栽培をスタートさせました。正俊さんは1974年から2年間アメリカで暮らした際にキウイフルーツと出会いました。
「そこでティースプーン1杯の種を購入したことが始まりです。ミカンやお茶を少しずつキウイフルーツに変え、1990年にキウイフルーツカントリーJapanという観光農園を開くに至りました。世の中に観光農園が少ない時代でしたが、高品質の農作物や農家の思いを直接伝えたいという理由もあって、農業体験などができる施設を作りました」

キウイフルーツカントリーJapanでは、キウイ狩り以外にイベントやBBQが出来る

栽培品種の多様さは世界有数

2026年現在、キウイフルーツカントリーJapanでは、85品種1500本以上のキウイフルーツを栽培しています。
「キウイフルーツで世界的な大手企業であるゼスプリ社は3品種に特化しています。けれども同じことをうちがやっても負けてしまう。そこでニッチなマーケットに合わせて多品種を作っているのが、うちの強みですね。というのも、キウイフルーツは品種ごとの味の違いが大きい。酸味の強いものから、糖度が20を超えるような甘いものまである。魅力的ですごく面白いですよ」
更に独自品種の開発も行っています。
「大きいものも作りますが、フルーツサンドに使うと断面が鮮やかに見えるような品種を作ったりしています。キウイフルーツは栄養価も高い ので、病気の抑制にもつながります。湿地帯や砂漠地帯でも育つようなキウイフルーツは作れないかと、研究を続けています」
気候変動により品種が無くなる可能性もあるため、多品種栽培はリスクヘッジという側面もあると平野さんは考えています。実際にこの約10年で、無くなってしまった品種もあるといいます。

キウイフルーツを中心に多事業を展開

一方で観光農園自体の魅力開発にも、積極的に取り組んでいます。
その取り組みは、カフェやバーベキュー場の運営など多様です。キウイフルーツの剪定枝をバーベキューやたき火に用い、その煙は病害虫予防に、灰は土壌活性剤としても活用。利用者に楽しんでもらいながら、栽培面での効率化も図られています。更に農園内ではヒツジを飼育し、そのふん尿からたい肥を作るなど、循環型農業を実践しています。
2022年からは、キャンプ場の運営も始まりました。
「教育企業や掛川市、市内のお茶農家や地元企業などとの連携で、修学旅行を実施 してきました。高校生たちに掛川茶の担い手不足や耕作放棄地の拡大などの社会問題を知ってもらい、その解決方法を考え、最終日にプレゼンテーションしてもらうという内容です。そこで学生が提案してくれたのが、キャンプ事業でした」
茶を試飲してもらい、茶畑を見ながらキャンプをしてもらうことで、地域のファンづくりにもつながる事業です。修学旅行で訪れた学生が、その後、地域の農業を手伝いに来るという成果も出ています。

御茶摘み体験をする参加者たち

特別なイベントも開催できる

ナフィールドの研修プログラムへの期待

利益の一部を世界の貧困農家へ

キウイフルーツカントリーJapanでは、こうして得た利益の一部をザンビアの貧困農家との農業事業に活用しています。現在はブルーベリーの栽培に取り組み、いずれはキウイフルーツの栽培も視野に入れているのだと平野さん。
「栄養価の高いものを作って、国を豊かにしたい。その事例を広げ『農家ってかっこいいな』と思ってもらいたいです」
キウイフルーツカントリーJapanはお茶とキウイフルーツが主軸です。従業員との協力を行い、年間3カ月程度の自由な時間を確保でき、これを海外との事業などに充てています。
「もちろん私が農園に全く関与しないというのは難しい。けれども今は農業界でもリモートワークが進んでいますよね。海外との事業は、そのチャレンジでもあります」

ナフィールドの研修プログラムでのネットワーク

平野さんは2026年にナフィールド国際農業奨学金制度の研修プログラムに参加します。このプログラムでは、2年間にわたって世界6大陸の農業生産現場などを旅しながら、先進的な農業技術や文化を学びます 。2026年度(第7期)の日本代表は、平野さんを含め3人。
「実はナフィールドのことは知らなかったんです。国際農業者交流協会で『世界のリーダーファーマーや、リーダーファーマーを目指す人と一緒に時間を共有できて、ネットワークが構築できる場』と知り、応募しました。日本の農業に活用できる海外のノウハウがあると考えていますし、その逆もあるかもしれません。私は農業が世界ではどのような位置づけの仕事と捉えられているのかに関心があります。就農希望者も少ない中で、海外ではどのように若手育成をしているのか、知りたいですね。また小規模農家の営農や、役割についても、世界的な視点を知り、学びにつなげたいです」
得た学びを、更に若い世代や地域などへ広げていくことに積極的な平野さん。キウイフルーツカントリーJapanも、平野さんは“実験圃場(ほじょう)的な役割”だと見なしています。
「うちの農園に来てもらって『自分の農場ならこのアイデアを取り入れられそうだ』などと、持ち帰ってもらえるとうれしいです。そのために先進的な技術をどんどん導入したいですし、チャレンジを続けたいですね」

キウイフルーツカントリーJapanキャンプ場にて

(編集協力:三坂輝プロダクション)

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