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農産物加工品の商品名に、原材料の品種名を使用することはできるのか?【農業法律相談所#11】

連載企画:農業法律相談所

農産物加工品の商品名に、原材料の品種名を使用することはできるのか?【農業法律相談所#11】

6次化商品のブランディングや差別化を目指すに当たって、インパクトある商品名はブランドイメージの訴求と定着に有効な手段である。本稿では、そんな商品名を検討する際に押さえておきたい「商標権」について、サツマイモ生産者から寄せられた相談をもとにひも解いていこう。

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種苗会社が開発した品種の名前を、6次加工品の商品名に使用することはできるか

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私の妻はパン屋を経営しており、自作のパンを自分の店舗で販売しています。私自身は農家をやっており、長年さつまいもを栽培していました。このほど、妻から新商品を開発したいとの要望を受け、私が栽培しているさつまいもを利用して、スイートポテトを作って販売することになりました。私が栽培しているさつまいもは、種苗業者αが開発した上質な甘さを特徴とするさつまいもであり、「A」という名前で流通している有名な品種です。せっかく「A」という品種を使用しているので、開発したスイートポテトは品種名を冠した「Aスイートポテト」という名前で売り出すことを考えているのですが、何か問題はあるでしょうか。

弁護士の見解「種苗業者αが『A』の加工品について商標登録をしている場合、『Aスイートポテト』という名前で売り出すことは、種苗業者αの商標権を侵害して違法となる可能性があります」

なぜ、商標権の侵害となる可能性が高いのか

商標とは、事業者が自己の取り扱う商品・サービスを第三者のものと区別するために使用するネーミングやマーク(識別標識)を意味します。もし、自己の商標を第三者が勝手に使用してしまうと、自ら築いたブランドイメージが崩れたり、販売機会を奪われるなどの損害が生じる可能性があります。そのため、「商標登録」をすることによって、自己の使用している商標を権利として保護し、第三者が勝手に使用することを防止することができることとなります。

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そして、種苗業者においても、自己が開発し販売している種苗のブランドを保護するため、品種登録するだけでなく、その名称又は通称を商標登録することが一般的に行われています。注意すべき点として、以下の2点が挙げられます。

まず、このような場合に登録される商標は、品種登録の際に使用されている品種名とは別の名称で登録されることが多いという点です。従って、品種名について商標登録がなされていないからと言って、その品種について商標登録がなされていないとは言い切れません。

次に、種苗だけでなく加工品についても商標登録されている場合があるという点です。もし加工品についても商標登録されている場合、本問のように、さつまいもそのものではなくその加工品であるスイートポテトを販売する場合にも、種苗業者αの商標権を侵害してしまう可能性があることとなります。つまり、加工品であるから違法とならないというわけではないということになります。

「Aを使用したおいしいスイートポテト」などの表記で商標権の侵害を回避

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ご質問者様としては、「A」を使ったスイートポテトという意味であり、原材料として品種名を表示しているにすぎないので、商標権の侵害にはならないのではないかと疑問に思われるかもしれません。確かに、食品衛生法など「表示しなければならないもの」として法律に基づいて表示している場合には、商標権の侵害とはなりません。一方で、今回のように、商品名として「Aスイートポテト」と表示している場合には、商標権を侵害すると判断される可能性が高いものと考えられます。従って、種苗業者αが「A」の加工品について商標登録をしている場合、「Aスイートポテト」という名前で売り出すことは避けたほうが良いと考えられます。「A」を使用していることをどうしても表記したいという場合は、商品名にするのではなく、例えば、「Aを使用したおいしいスイートポテトです」などという形で、文章の形で表記するという事が考えられます。

具体的な対応策「まずは商標登録の有無と範囲の確認を」

「Aスイートポテト」という名前で売り出すことができるかどうかを判断するためには、まずは、種苗業者αが「A」という名称について商標登録を行っているか、登録を行っているとしてどのような範囲で行っているのかを確認する必要があります。現在はインターネットを利用して商標登録の有無について調査することが可能ですが、ご自分で調査することが難しい場合には、弁理士や弁護士などの専門家に調査を依頼するということも考えられます。

仮に、種苗業者αが「A」の加工品について商標登録をしていたとしても、種苗業者αの許可があれば、「A」という商標を使用することが可能となります。従って、商標登録がされていたとしても、あきらめずに種苗業者αに連絡してみることも手です。いずれにしても、何らの調査や対応を行わずに、「Aスイートポテト」という名前で売り出すことは、違法となる可能性があるため、避けたほうが良いと考えられます。

事案のポイントを整理

✅種苗業者は、品種登録の際に使用されている品種名とは別の名称で商標登録していたり、加工品について商標登録している場合が多い。
✅商標登録されている商標を無断で使用すると、商標権侵害となる可能性がある。
✅「A」のような品種に関する名称を使用する場合は、商標登録の有無を調査するなど、一定の対応を行わないと、商標権侵害を引き起こしてしまう可能性がある。

弁護士プロフィール

杉本隼与

2003年早稲田大学法学部卒業。2006年に旧司法試験合格(第61期)
2016年東京理科大学イノベーション研究科知的財産戦略専攻卒業 知的財産修士(MIP)
同年に銀座パートナーズ法律事務所を開設し、現在に至る。
銀座パートナーズ法律事務所

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