【初期の不安】苗立ちが揃わない、芽が出ないを解決するQ&A
Q1:種をまいたのになかなか芽が出ない原因は?

A:主な原因として考えられるのは、水分不足、土の表面が固くなるクラスト化、播種の深さです。
播種後に雨が降らず、畑がカラカラに乾いてしまうと、種子は発芽に必要な水分を吸えません。また、雨の後に急激に乾燥した場合、土の表面がカチカチの膜(クラスト)になり、芽が物理的に地上へ出られなくなります。
これらへの対策としては、「フラッシング(走り水)」で一時的に田んぼを湿らせるのが有効です。しかし、水のムラで逆に出芽が揃わなくなるリスクもあるため、実施は慎重な判断が求められます。
さらに、種を播く深さは、1〜2センチが理想とされています。これより深いと、芽が地上に出るまでに力尽きてしまい、出芽率が低下するためです。播種深度を安定させるには、播種前後に「鎮圧作業」を行い、ほ場の土を適度に固めることが重要です。
Q2:苗立ちを安定させるための畑作りはどうすればいい?
A:「田んぼを平らにする(均平)」と「土を固める(鎮圧)」、この2点がその後の苗立ちや水管理のしやすさ、そして雑草対策の成否を左右します。
代かきをしない乾田直播では、レーザーレベラー等での均平作業が必須。ほ場内の高低差は10センチ以内を目指しましょう。これにより、入水後の水深が均一になり、土の高い部分の乾燥や、低い部分の水没による苗立ちムラを防げます。
播種前後の鎮圧は、苗立ちの安定と漏水対策の面でも不可欠です。ほ場の固さの目安は、かかとに全体重をかけて踏み込み、5センチほど沈むくらい。これにより、種と土が密着して出芽が安定し、水漏れも抑えられます。
【難題の克服】水管理・雑草防除の失敗を防ぐQ&A
Q3:乾田直播の雑草対策が難しい理由は?

A:最大の理由は、代かきを行わないからです。
移植栽培で行われる代かきは、雑草の種を土に埋め、水でフタをすることで発芽を抑えられる優れた防草技術です。しかし、乾田直播は代かきの工程がないため、雑草が生えやすい環境になりやすいのです。
そのため乾田直播では、移植栽培にはない「乾田期の防除」が雑草対策の分かれ道。基本戦略は水を入れる前に、「雑草を一度生やして、除草剤で処理する」こと。このタイミングを逃し、雑草が大きくなってしまうと、その後の対策が困難になるため、入念な計画が必要です。
Q4:乾田期の除草剤の散布に適したタイミングと注意点は?

A:乾田期の除草剤の散布は、「非選択性除草剤」を出芽直前に使うことと、「選択性除草剤」を早めに使うこと。この2つが成功のポイントです。
播種後、イネより先に生えた雑草を一度リセットするため、出芽直前に非選択性除草剤(ラウンドアップ等)を散布します。タイミングは「種籾を掘ってみて、芽が動き出したらすぐ」。遅れるとイネに薬害が出るため、播種後1週間頃からこまめに観察しましょう。
出芽後に発生するノビエには、選択性除草剤(クリンチャー等)を使います。薬剤が効くタイムリミットは「ノビエ5葉期まで」ですが、確実に仕留めるなら「3〜4葉期」の早めの散布が肝心です。
散布時ノウハウ:ノズルの使い分け
- 非選択性剤(ラウンドアップ等):飛散しにくい「泡噴口」でOK。
- 選択性剤(クリンチャー等):薬液を全体にかける必要があるため、「霧噴口」に切り替えましょう。
Q5:漏水を防ぐ具体的な対策手段は?

A:「畦畔(けいはん)」と「田面」の両面をしっかり固めましょう。
畔(あぜ)塗り作業の際、土壌に「ベントナイト(5kg/m)」を混ぜ込むと、強固な畔を形成できます。また、畔塗り後にトラクターのタイヤで畔の際を踏み固める一手間が、水漏れのリスクを減らします。
田面からの水漏れには、ケンブリッジローラー等を用いた鎮圧が有効です。ただし、乾いた土で行っても効果はイマイチなので注意が必要。ローラーに土が付かないギリギリまで土を湿らせた状態で鎮圧するのがコツです。これにより、土の隙間が埋まり、水を通しにくい層ができます。
Q6:乾田直播に向かない畑は?

A:一般的に水はけが良すぎる土壌は、乾田直播に向いていません。
具体的には、砂や砂利を多く含む砂質土や礫質土(れきしつど)などです。砂や砂利が多い土壌は、いくら鎮圧しても土の隙間が埋まらず、入水後に水が筒抜けになってしまいます。これでは除草剤も肥料も流れてしまい、安定した栽培は望めません。
逆に粘土質でキメの細かい細粒グライ土などの土壌は、鎮圧によって水漏れを防ぎやすいため、乾田直播に適していると言えます。ご自身のほ場の性質が分からない場合は、地域のJAや農業普及指導センターに相談するのがおすすめです。
【コスト等への疑問】肥料や品種、機械のQ&A
Q7:使う肥料は移植栽培より多く必要ですか?

A:移植栽培に比べ乾田直播は、窒素の施肥量を1.5倍程度に増やすことが一つの目安とされています。
これは、乾田状態で管理するため土壌中の窒素が無機化する速度が遅れ、特に生育初期の窒素供給量が低下する傾向があるためです。用いる肥料は、緩効性肥料(ゆっくり効くタイプ)を基肥として使うのも一つ。これにより、生育期間を通じて安定して窒素を供給できます。
施肥の方法は、播種前にほ場全体に散布し、土と混ぜ込むのが基本ですが、専用の機械があれば、種をまくのと同時に肥料を播種溝に施用する「同時施肥」を行い、作業を効率化することも可能です。
Q8:大豆作の後に乾田直播を行うメリットは何ですか?

A:「肥料の使用量を減らせる」ことと、「稲の過剰生育を防げる」という2つのメリットが挙げられます。
大豆を栽培した後の畑は、根に共生する「根粒菌」の働きにより、土壌中に天然の窒素が蓄えられています。この豊富な地力窒素を生かせるため、窒素肥料を半分、あるいはゼロにしても、通常通り肥料を与えた場合と変わらない収量が期待できるとされています。
また、窒素が豊富な畑では、稲が育ちすぎて倒れてしまう倒伏のリスクが高い一方、乾田直播は移植栽培に比べて窒素の吸収が穏やかです。そのため、稲の過剰な生育に自然とブレーキをかけ、倒伏リスクを減らすことができます。
Q9:乾田直播で用いる機械への投資を抑えつつ回収の効率を上げる方法は?

A:麦や大豆などとの輪作を組み合わせることです。
輪作は、投資費用の早期回収だけでなく、経営全体の効率化にもプラスに働きます。
乾田直播で使う「グレーンドリル」や「プラウ」は、もともと麦や大豆を栽培するための機械です。ポイントは、これらの機械を米・麦・大豆で使い回すこと。稲作のためだけに高価な機械を買うのではなく、畑作物と組み合わせた輪作体系を組むことで、一台の機械の稼働率を高め、投資コストを分散できます。さらに、GPS自動操舵システムを導入すれば、高速作業でもオペレーターの負担減に加え、作業精度の向上も見込めます。
Q10:乾田直播に用いる品種選びのポイントは?

A:基本は、直播適性を持つ品種を選ぶことです。
乾田直播は移植栽培に比べて倒伏リスクが高いため、「萌えみのり」のように倒れにくい専用品種を選ぶのが、収量の安定につながります。一方で、乾田直播には、倒伏をコントロールしやすいという側面もあります。鎮圧により播種床が固く締まることや、初期の窒素吸収が穏やかになることで、稲の過剰な生育を抑えられるからです。この特性を活かし、栽培条件によっては「ササニシキ」や「ひとめぼれ」などの品種も栽培されています。
まとめ|乾田直播によくある質問・Q&A
乾田直播は、単に楽ができる栽培技術ではありません。まだまだ一般化していないため、なぜ苗立ちが不安定になるのか、なぜ雑草対策が難しいのかといったさまざまな課題と一つひとつ向き合っていく体力が求められます。
乾田直播の成功は、小さな「なぜ?」を放置せず、その原因を追求し、適切な対策を積み重ねていくことにかかっています。
※本記事は以下のマニュアルの情報を元に作成しています。
出典:
農研機構:乾田直播栽培技術マニュアル Ver.3.2
いしのまきグリーンな農業推進協議会:グリーンな栽培マニュアル
石狩農業改良普及センター:水稲乾田直播栽培 栽培体系紹介
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター:飼料用稲乾田条播直播栽培マニュアル


















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