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植物は会話する!? アレロパシーによる植物たちのコミュニケーションネットワークの秘密

植物は会話する!? アレロパシーによる植物たちのコミュニケーションネットワークの秘密

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。皆さんは「アレロパシー」という言葉を聞いたことがありますか? 聞き慣れない言葉ですし、調べてみると「連作障害の原因」「野菜の生育を妨げる」といったネガティブな情報が目立ちます。しかし実は、アレロパシーは植物たちが何万年もかけて磨いてきた、自然界のコミュニケーション手段であり、そしてその働きには抑制だけでなく、促進や共栄の側面もあります。この記事では、アレロパシーの本質を理解し、畑作りにどう生かせるかを考えていきます。

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アレロパシーって何?

ヘアリーベッチ とアレロパシー

ヘアリーベッチはアレロパシーによる雑草抑制効果が高い

アレロパシー(allelopathy)とは、植物が根・葉・茎・種子・落ち葉などから放出する化学物質が、周囲の別の生物に影響を与える現象のことで、日本語では「他感作用」と訳されます。影響の対象は主に植物ですが、微生物、線虫、昆虫なども含まれます。
これらの化学物質(アレロケミカル)は、揮発性ガスとして空気中に放出されたり、雨や根からの分泌物によって土壌水に溶け込んだりしながら、周囲の生物の発芽・成長・行動などに影響を与えます。
植物たちは自分の力ではほとんど移動できないし、動けませんから、このアレロパシーを使って、周囲の環境に影響を与えるわけですね。

敵を排除するだけじゃない!アレロパシーの2タイプ

コンパニオンプランツのバジルとトマト
アレロパシーと聞くと敵を排除する手段として紹介されることが多いですが、実際はそれだけではなく、さまざまな影響を及ぼしています。今回は分かりやすく2タイプに分類してみました。

1. 排除タイプ

まず最も代表的なのは自分のテリトリーを広げるために、他の植物を排除しようとする作用です。根から出す物質や、落ち葉が分解されて出るアレロケミカルによって、他の植物の種子の発芽を止めたり、根の成長を阻害したりします。
例えば、セイタカアワダチソウは根から出す物質でススキなどの競合植物を抑え込み、一時的に大群落を作ります。
また、ヘアリーベッチは雑草を強力に抑えるため、農家が意図的に植えることもあります。

2. 防御タイプ

自分を食べようとする虫や動物などの天敵から身を守るためのバリアのような作用です。虫や動物が嫌がる成分を分泌して、近寄らせないようにします。
代表例としては、マリーゴールドの根から出る成分が、土の中の有害なセンチュウ(ネマトーダ)を遠ざけます。
また、ヒガンバナは球根に毒成分を含み、モグラやネズミを避けるため、田んぼのあぜ道に植えられていたと言われています。
ミントやローズマリーなどの強い香りは、多くの昆虫にとって不快なため、虫除けとして機能します。

連作障害の一因になることも

アスパラガスとアレロパシー
連作障害には、病原菌や線虫の増加、養分バランスの偏りと並んで、アレロパシー物質の土壌中への蓄積も関与していると考えられています。同じ場所に同じ科の野菜を植え続けると生育不良や病害虫被害が増えることがありますが、その一因として、自分自身や近縁種に不利に働く化学物質を、根や作物残渣から出し続けるという現象が指摘されています。
例えば、アスパラガスは根からフェノール性化合物などを放出し、自分自身の生育を阻害してしまう「自家中毒」を起こします。そのため、アスパラガス栽培跡地では、数年間の休作期間を置くことが推奨されています。

排除タイプのアレロパシーを持つ雑草への対策3ポイント

メヒシバはアレロパシーが強い

メヒシバは排除型アレロパシーが強い植物の一つ

畑の中に良く生えるメヒシバ、スギナ、ヨモギなども排除型のアレロパシーを持つ植物です。こういった植物に対してはどう付き合って行けば良いのかポイントを3つまとめておきます。

1. 土を豊かにして、植物のストレスを減らす

植物が排除型のアレロパシー物質を強く出すのは、厳しい環境で生き残ろうとする「防衛本能」によるものです。土が硬かったり栄養が少なかったりと、ストレスを感じるほど、彼らは競合相手を排除しようと必死になって多くの毒を出します。
逆に、土壌中の有機物や微生物が豊富で、根がのびのびと張れる環境であれば、彼らも必要以上に攻撃物質を出しません。つまり、土作りをして土中環境を良くしてあげること自体が、彼らのアレロパシーを弱める根本的な対策になります。

2. 刈り敷いて雑草の発生を抑える

彼らの強い排除能力を、逆にこちらの味方につけるという発想です。種をつける前に刈り取り、その場に敷き詰めます。 すると、彼らの体から出る排除型のアレロケミカルによって他の雑草の発芽が抑制されるため、雑草の発生を抑えることができます。

3. 分解されるのを待つ

植物に有害なアレロケミカルも時間がたてば微生物によって分解されて、野菜の栄養分に変わっていきます。分解にかかる期間はアレロケミカルの成分や土壌の状態によって異なりますが、3〜4週間で大概のものは分解されると考えて良いのではないかと思っています。微生物が多い土壌の方が分解は早いので、こういった点でもやはり土づくりは重要になってきます。

【番外編】コンパニオンプランツについて

アレロパシーを活かした野菜の混植
アレロパシーに近い考え方とされているのがコンパニオンプランツです。植物同士の相性を利用することで、病害虫の抑制や生育の安定につなげられます。

例えばトマトとバジルの組み合わせです。バジルの香り成分には、一部の害虫を遠ざける働きがあるとされ、株元を覆うことで土壌の乾燥や温度変化を抑える効果も期待できます。その結果、トマトの生育や風味が良くなるといわれています。

トマトとラッカセイの組み合わせもよく知られています。ラッカセイは根粒菌と共生し、空気中の窒素を植物が利用できる形に変えます。この働きによって土壌環境が改善され、トマトの生育を間接的に助けます。また、根からの分泌物によって土壌微生物のバランスが変化し、病害が起きにくくなる可能性も指摘されています。

マリーゴールドとナス科野菜の組み合わせでは、マリーゴールドの根が放出する成分が土壌中の線虫を抑制します。これにより、トマトやナス、ジャガイモなどの根が被害を受けにくくなります。

さらに有名なのがアメリカ先住民が好んで用いていたといわれる三姉妹栽培です。トウモロコシがインゲンの支柱となり、インゲンが窒素を供給し、カボチャが地表を覆って雑草を抑え、土壌の乾燥を防ぎます。ここでは排除ではなく、役割分担による共生関係が畑全体を安定させています。

コンパニオンプランツは、アレロパシーを「競争」ではなく「協力」として生かす実践例といえます。

アレロパシーは多様な生き物たちが共存していくための知恵

アレロパシーは他の植物を排除するというイメージで語られがちですが、実際はそれぞれの植物たちがそれぞれ自立しながらも、適度な距離感を保ちながらも共存していくために身につけた知恵でもあるような気がします。人間社会でもやはり適度な距離感って大事ですもんね。
私たちの目に見えないところで、植物たちが周囲の生き物たちと活発にコミュニケーションを取り合っていると思うと、面白いですね。ぜひ皆さんもそんな視点でそれぞれの畑を見直してみると、また畑作りの面白さが広がっていくかもしれません。

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