ヒメジョオンとは?どんな雑草?

初夏になると道端や畑の隅で咲く白いかわいい花を見かけます。ヒメジョオンは野の花としてすっかり日本に定着している植物ですが、実はもともと日本には生息していなかった外来種です。江戸時代末期に観賞用として輸入され、初めはヤナギバヒメギクと呼ばれていました。明治時代には雑草化して今では日本全国の農地や市街地、河原や道端などあちこちに分布しています。姿形のよく似たハルジオンと混同されることが多いですが、どちらも外来種で繁殖力が強く、在来種を脅かす厄介な雑草となっています。
ヒメジョオンの基本情報
| 雑草名(漢字名) | ヒメジョオン(姫女苑) |
| 分類 | キク科・ムカシヨモギ属 |
| 学名 | Erigeron annuus |
| 繁殖 | 種子 |
| 分布 | 北海道~沖縄 |
| 地上部生育期間 | ほとんど通年 |
| 開花・結実期 | 6~8月 |
| 6~8月 | 30~150cm |
| 生活型 | 一年草または越年草 |
ヒメジョオンの生態と分布環境
ヒメジョオンの生態

ヒメジョオンは背丈が150cmと、雑草の中でも背が高いタイプです。背の高さは他の植物よりもたくさん日光を浴びて光合成を盛んにしたり、風で種子を飛ばすのに役立ちます。ヒメジョオンの種子の大きさは非常に小さく、一つの植物体から約5万個の種ができたという報告例もあります。タネには冠毛と言って細かい毛のようなものがついており、たんぽぽの綿毛のようにふわふわと風に乗って飛ばされます。この小さくて驚異的な数の種子をたくさん遠くに飛ばす戦略がヒメジョオンの勢力拡大の大きな要因と言えるでしょう。
また、ヒメジョオンは冬の間はロゼット型と言って地面に張り付くように葉を伸ばすことで厳しい冬を越すことができます。春になるとヒメジョオンはロゼット型から直立型に変化し、一本の茎がまっすぐ上に伸びるようにぐんぐんと大きく成長します。ロゼット型で冬を越すことが、春からのロケットスタートを可能にし、他の植物との競争に優位に立てるのです。

ヒメジョオンのロゼット
ヒメジョオンの分布環境
ヒメジョオンはヨーロッパ、アジアに分布しており、日本では北海道から九州まで広く見られます。土壌の種類を選ばず、肥沃な畑でも、踏み固められた道端でも、乾燥しやすい場所でもたくましく成長します。土壌環境に対する適応性が大きいため、畑、牧草地、果樹園、路傍、荒地、草原、線路脇などあちこちで生育します。これはヒメジョオンに限らず一年生雑草に共通する特徴ですが、耕起や除草によって一時的に裸地ができる環境ではいち早く勢力を広げます。
名前の由来と貧乏草と呼ばれる理由
ヒメジョオンは荒れた土地に多いので貧乏草とも呼ばれます。きれいな庭には生えないけれど、庭の手入れができないような貧乏な家に咲くため、この草が生えるような家は貧乏だというイメージがつき、そう呼ばれるようになったという説もあります。管理が行き届かない場所に増えやすいという経験則が言葉として残ったのでしょう。
ヒメジョオンの葉や花の特徴

暖かい時期の葉は細長く先が尖った形で、縁がギザギザしています。ヘリと裏面には毛が生えており、ざらっとした手触りです。寒い時期には冬を越すために地面にへばりつくようにギザギザした円形の葉を広げます。花はタンポポのような集合花で、2センチほどの花に見える部分は、実は100個ほどの小さな花が集まってできています。
ハルジオンとの違いー見分け方のポイント
ヒメジョオンとハルジオンはどちらも外来種で、荒地によく生える雑草として知られています。この2種は非常によく似ていますが、ヒメジョオンは種子繁殖で増える一方、ハルジオンは種子のほか地下系でも増えるため、防除するためにはきちんと見分けておくことが大切です。似てはいますがポイントを押さえれば簡単に見分けられます。

葉の違い
ヒメジョオン:葉の付け根は細くて、柄のようになっている。
ハルジオン:葉の付け根が茎を包み込むように取り囲んでいる。
茎の中の違い
ヒメジョオン:茎を横に切ると、中心部は白いスポンジ状になっている
ハルジオン:茎を横に切ると、中は空洞になっている
花の違い
ヒメジョオン:花びらは細いがやや幅広で色は白か、白に近い淡い紫色
ハルジオン:花びらは糸のように細く、色は白~淡い紅色
農業や生態系への影響
侵略的外来種としてのヒメジョオンの特徴
先述のように、ヒメジョオンは数万粒という膨大な数の種をつけ、それを風に乗せて親から遠く離れた場所に広く運ばせます。風に流されて種がたどり着いた場所が生育に適しているかどうかはわかりませんが、一個体当たりの種子生産数を多くすることで、数打ちゃ当たる的に生存数を伸ばしていくことができます。
種は温度15~30度まで幅広い範囲で発芽が可能で、しかも種子の寿命が35年の例もあるほど寿命が長いのが特徴です。この点が、侵略的と呼ばれるヒメジョオンの強力な拡大性を支えていると言えるでしょう。
また、冬にロゼット型、春に直立型と姿形を変化させることも侵略的戦略に非常に有利に働きます。秋遅く他の植物が枯れてしまうほどの弱い光の中でも、ヒメジョオンの芽は一旦発芽すれば成長し続けることができます。さらに冬の間も死んでしまわずに葉を残したまま冬を越し、早春から芽を出す他の植物に先んじて速やかに成長をスタートできるのです。早い時期に茎を伸ばせば他の植物よりも高い位置でたくさん太陽の光を浴びることができるため生育が有利になります。直立型になったヒメジョオンは身長150cmにまで成長し、陣取り合戦に有利な大型雑草に成長します。
在来種への影響

ヒメジョオンは日本のあちこちで繁殖しており、もはや在来種ではないかというほどの繁栄ぶりです。ヒメジョオンが勢力を拡大すれば、その分在来種の陣地が減ってしまいます。実際に亜高山帯の自然性が高い環境にも侵入しており、在来の植物との競合が問題になっています。外来生物法では要注意外来生物に指定されています。日本の侵略的外来種ワースト100にも入っている堂々たる厄介者の外来種なので、故意に増やしたりしないようにしましょう。
農業への影響
ヒメジョオンは牧草地など農地にも生えます。大型で作物を覆ってしまうと光合成の邪魔になって収量低下を招きます。また、背の高さは風通しの悪さにもつながり、風通しの悪いところというのは病害虫の巣窟となりやすい場所です。さらに、種子数が多いことから、開花結実まで放置してしまうと翌年たくさん生えてきて除草がさらに厄介です。除草剤耐性を持つものも確認されており、難防除の雑草となっています。
その他、私有地への影響

庭や路地など土壌を選ばず、荒地でも乾燥地でも元気に生えてきます。舗装の割れ目など、わずかな土しかないところでも逞しく生育します。
ヒメジョオンの駆除・予防に効果的な除草剤
ヒメジョオンは種子で増える一年草または越年草であり、地下茎で広がるタイプの雑草に比べれば物理的な除去もやりやすいと言えます。しかしながら、種子数が非常に多く、一度増えると手取りだけで完全に抑えるのは難しくなります。特に庭や農地では、発芽のたびに抜き続けるよりも、発生初期に適切な方法を組み合わせる方が現実的です。
ヒメジョオンは広葉雑草であるため、除草剤を使用する場合は適用表に「広葉雑草」と書いてある除草剤を選びます。一年生雑草と書いてある場合も使用できます。また、除草剤を散布するタイミングも重要です。ロゼット期のヒメジョオンは背丈も低く葉も開いていて除草剤を散布しやすいのでおすすめです。
この時期であれば手でも抜きやすく、株も小さいため作業時間が短くて済みます。逆に、大きく成長して種がすでに周囲に飛んでいるような場合は除草剤でも期待する効果が得られないことがあります。除草剤、刈り取りの場合ともに、早めの除草で種子形成を抑えることが繁殖を防ぐ上で最も重要です。「今年は咲かせない!」を徹底すれば翌年以降の発生量が確実に減っていきます。ヒメジョオンは裸地にも侵入しやすいので、防草シートであらかじめ防いでおくのも一つの手でしょう。
ヒメジョオンに関してよくある質問
ヒメジョオンとヒメジオンは同じ種類ですか?
ヒメジオンという名前の植物はなく、ヒメシオンという名前の植物があります。ヒメシオンは多年生草本で、高さ30~100cm、花は白く1cmに満たないくらいの大きさです。ヒメジョオンと違いヒメシオンは在来種で、現在個体数が減っており、都道府県によっては絶滅危惧種に指定されています。
ヒメジョオンは食べられますか?
食べられます。ヒメジョオンはキク科の植物で、春菊の親戚のようなものです。春に出てきた若芽はえぐみが少なく食べやすいので除草を兼ねて食べてみるのもいいかもしれません。蕾がついた頃の葉はえぐみが強いので、もしどうしてもこの時期に食べたいなら下茹でしてアク抜きをしっかりしたほうがいいでしょう。
まとめ
ヒメジョオンは、可憐な花を咲かせる一方で、非常にしたたかな生存戦略を持つ植物です。環境を選ばず、発芽の機会を逃さず、早く成長し、確実に種子を残します。この積み重ねが、外来種ながら在来種かと思うほどの現在の広い分布につながっています。驚異的に種子数が多いため、ヒメジョオンを減らすためには、農地でも庭でも重要なのは開花前に対処するという点です。特に冬場は除草に適した時期です。早めに対処して夏場にヒメジョオンの群生を作らないようにしましょう。
















