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特定外来生物・クビアカツヤカミキリ対策の最前線 〜モスピランが拓く果樹害虫防除の現在地〜

特定外来生物・クビアカツヤカミキリ対策の最前線 〜モスピランが拓く果樹害虫防除の現在地〜

「クビアカツヤカミキリは、その幼虫が2年ほどの時間をかけてじわじわと木の内部を食害し、最終的には樹を枯らしてしまう、恐ろしい特定外来生物です」と語るのは、JAわかやま営農部生産振興課で品目別専門指導員を務める西岡慶二さんです。2012年に愛知県のサクラで初めて発見されて以来、被害は急速に拡大し、同じバラ科の樹木であるモモやウメでの被害も報告されています。しかし、いまだ決定的な対策が確立されていないのが現状です。今回は、産地で取り組まれている対策とその課題について、西岡さんに話を聞きました。

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クビアカツヤカミキリとは?その生態と被害の実態

クビアカツヤカミキリの成虫。体長約20~40mm。成虫は体全体が光沢のある黒色で、前胸背板(首のように見える部分)にとげ状の赤色の突起がある

クビアカツヤカミキリとは、東アジアを原産地とする外来のカミキリムシです。輸入貨物や木製の梱包材などとともに国内に持ち込まれたとみられ、国内では2012年に愛知県で最初に確認されました。その後、埼玉、大阪、東京、徳島などへと被害が拡大し、2018年には特定外来生物に指定されました。2019年には和歌山県紀北地区でもついに発生が確認され、県内第一号の発見には、西岡さんも関わっていました。

「この虫が厄介なのは、モモやスモモ、ウメなど、バラ科の樹木を好んで樹皮に産卵し、ふ化した幼虫が樹木内部にある養分を運ぶ「形成層」を食い荒らすことにあります。人間で言えば、血管を徐々に破壊していくような致命的な被害を及ぼします。被害初期にはほとんど外見に変化が現れないのも厄介なところで、樹への侵入から2年ほど経過してから“葉が小さくなった”“実が小さくなった”“枝が枯れ始めた”と気づいた時には、すでに内部がかなり食害されていて手遅れであることが多いです」(西岡さん)

JAわかやま営農部生産振興課の西岡慶二さん。クビアカツヤカミキリに関して幅広い知見を持つ

木くずと糞が混ざった「フラス」は発生の重要な目安になりますが、アリやコスカシバなど他の害虫でも生じるため、正確な判別が求められるといいます。しかし、実際にフラスを見たことのない生産者やJA担当者もまだ多く、その判別は容易ではありません。
紀北地区では2020年に15本だった被害本数が2025年には7,000本近くに上るなど、深刻な状況です。

被害状況の推移

「防虫ネットを張る、農薬で防除を行うなどの対策は打っていますが、害虫そのものの生態がまだよくわかっていないこともあり、被害を完全に食い止めることができていないのが現状です」と西岡さん。

被害を受けた木でも数年は収穫が可能なため、生産者が深刻さを実感しにくく、対応が遅れがちになることも課題です。クビアカツヤカミキリ被害は和歌山県内で南下を続けており、ウメの大産地である紀南地区への波及も時間の問題となっています。地域の農業景観そのものを変えてしまいかねない外来害虫との闘いは、まさに今が正念場です。

成虫をすばやく殺虫。モスピラン顆粒水溶剤

有力な薬剤と言われているモスピラン。速効性を備え、幅広い害虫に効果を持つ

クビアカツヤカミキリの防除策として、有効な手段のひとつと言われているのが、成虫への直接的な薬剤散布です。登録されている薬剤のなかでも高く評価されている薬剤のひとつが、『モスピラン顆粒水溶剤』です。2025年に上市30周年を迎えた総合殺虫剤で、クビアカツヤカミキリには2019年に登録を取得しました。

「モスピランの優位性は、その殺虫スピードにあります。現場での試験では、成虫に直接薬液が接触すると、約30分で異常行動を示し始め、1時間程度でほぼ動かなくなります。成虫は卵をポンポンと産み落とすことが知られていますので速効性こそが重要です。成虫が飛び交うピーク時、モスピランを散布した後の圃場で、地面に落ちて死んでいるのを確認していますので、成虫への殺虫効果については間違いなくありますね」(西岡さん)

一方で課題もあります。クビアカツヤカミキリの成虫は他の昆虫と異なり、「食欲が旺盛ではない」という特性があり、2週間という短い成虫期間のほとんどを交尾と産卵に費やします。口からの農薬摂取が期待しにくいため、成虫に薬剤がかかりやすいタイミングで農薬を散布する、ということがポイントとなります。また、木の中に潜る幼虫への効果は確認が難しく、「モスピランは成虫には速効的に効くが、幼虫にはまだまだ確認、検討が必要」というのが、現時点での現場での評価です。

被害木の断面とクビアカツヤカミキリ幼虫(老齢幼虫)

「特定外来生物という性格上、どうしても研究や試験が制約されてしまいます。成虫を移動させての実験は簡単にはできませんし、登録試験も成虫段階のものに限られています。実証として示すことができないことはもどかしいですね」(モスピラン普及会 事務局の坂本里枝さん)

それでも、成虫への効果という点においては、現場とメーカーの双方が太鼓判を押しているという事実は生産者にとって心強いものとなっています。

モスピランの効果的な活用法とは

噛み切られないように緩く張ったネット。黒色は視認性が高く、出てきた成虫を捕殺しやすい

モスピランを最大限に活かす上で重要なのは、「タイミング」です。成虫の飛翔期間は6月下旬から8月上旬にかけての約2カ月間。気温や降水量によって初発時期にばらつきがあるため、毎年の巡回による現状把握は欠かせません。

「成虫が1匹でも見つかったら、すぐにモスピランを散布します。ある程度増えてきてから対応していては遅いのです」(西岡さん)

薬剤の効果持続期間はおよそ1週間。飛翔期間全体をカバーしようとすれば、理論上8回以上の防除が必要になりますが、夏場の高温下での作業は、熱中症のリスクも伴うため現実的ではありません。そのため、発生状況を見ながら、的確なタイミングで集中的に散布することが求められます。個人で防除しても成虫が隣の園地へ逃げてしまっては被害が拡大してしまうため、地域全体での「一斉防除」が効果的です。紀北地区では、JAの「つたえるねっと」を通じて防除時期を一斉告知し、地域の農家が同時期に散布することで、退避した成虫も対処できる体制を整えています。

また、薬剤防除と合わせて取り組むべき物理的防除がネット巻きです。被害を受けた木からの成虫の脱出防止と、未被害木の株元への産卵阻害の両方に効果があると考えられています。巻き方にもコツがあり、ピンと貼りすぎると成虫に噛み切られるため、若干たるみを持たせることがポイントとのこと。色については、害虫を視認しやすい黒が現場では主流ですが、試験場では忌避効果を期待して、白色も推奨されています。さらに、フラスが出ている穴を発見したら、速やかに幼虫を直接除去する「掘り取り」作業を実施し、被害拡大を最小限に抑えることが重要です。

掘り取りの様子。ピアノ線を中心孔に押し込んで幼虫を引き摺り出す

「YouTubeでは、ネット巻きや掘り取りの実演動画を公開しています。生産者が畑でスマートフォンを見ながら作業できると好評で、これまでは防除方法について多数の問い合わせが寄せられていましたが、動画公開後は問い合わせ件数も減りました。現場で方法が着実に普及しつつあることを実感しています」(西岡さん)

共存を視野に、目指すは総合的な病害虫管理

西岡さんと圃場で現状を語り合う生産者の中谷嘉宏さん。左側に見える木はしっかりとネットで覆われている

「『これ一本で完全に防げる』という最強の切り札こそまだ存在しませんが、成虫が飛び交うピーク時に、成虫の密度を確実に減らす。そのためにモスピランはとても大事な薬剤です。それと並行して、卵やふ化したばかりの幼虫に効く薬や、木の中に潜り込んだ幼虫に効く薬、成虫・卵・幼虫の3つのステージにそれぞれ対応できる薬剤が揃えば、防除体系が完成に近づくと思います」(西岡さん)

「我々は今後も幼虫ステージや、樹体内部への効果を持つ薬剤や効果的な使用方法の研究を継続していく方針です。特定外来生物という制約の中で、できる範囲の現場試験を重ね、生産者と指導員、我々メーカーが情報を共有しながら、防除体系をレベルアップしていきたいと考えています」(坂本さん)

木の表面に比較的凹凸が少ない若い木ほど、産卵されにくいという知見から、老木の計画的な植え替えも有効な対策として注目されています。和歌山県では、伐採や抜根への補助金制度も設けられており、農家の決断を後押しする環境が整いつつあります。モスピランを中心とした薬剤防除、ネット巻きや掘り取り、一斉防除、早期発見、そして園地の若返り。これらを組み合わせた紀北地区の取り組みは、今後、被害が予測されるエリアへの、貴重な指針となるに違いありません。

取材協力
JAわかやま営農部生産振興課

クビアカツヤカミキリ被害樹の事後対策(ネット巻き) 

お問い合わせ

モスピラン普及会:日本農薬株式会社・日本曹達株式会社(事務局)
モスピラン顆粒水溶剤 製品詳細(日本曹達株式会社)
モスピラン顆粒水溶剤 製品詳細(日本農薬株式会社)

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