「アスパラガス農家になろう!」。就農支援が手厚い壱岐市を選択。

東京のオフィス街でキッチンカー事業を営んでいた北嶋さん。40歳までには、肉体労働で収入が安定しない飲食の仕事から、まったく違う仕事をはじめたいと模索していた頃、コロナ禍による緊急事態宣言という前代未聞の事態になりました。
「都心から労働者がいなくなる状況なんて、想像もしていませんでした。これからは、飲食業ではなく、何かつくる農業の仕事がしたいと考えるようになりました」と北嶋さん。
そこで目を付けたのが、アスパラガスでした。数本で200円、300円と単価が高く、料理に使うにも汎用性があり、苦手な人も少ない食材です。「アスパラガスならきっと生計を立てられるだろう」と産地を調べ、移住先を考えるようになりました。
「収穫量では北海道や長野が多いのですが、寒いところが苦手なんです。九州も有名だと知り、母が学生時代に住んでいたという壱岐市にたどり着きました」。
壱岐市には手厚い支援体制があり、JA壱岐市でも新規就農者の募集をしていたことから、詳しく話を聞こうと現地へ。手厚いサポート環境に惹かれ、2021年3月に移住、4月からJA壱岐市の新規就農者支援事業によるサポート(年間約110万円)や国の補助(年間約150万円)を受け、就農の準備を進めました。
「それ以外にも堆肥費用の補助があり、長崎県から無料でアスパラガスの苗を支給してもらえるなど、何かと助かりましたね。生活費だけでスタートできました」と当時を振り返ります。
研修中に家と農地を探し、スムーズに就農。農業から暮らしまで安心!
「移住して1年間で圃場や家が見つからなければ諦めよう」と期限を設定し、シェアハウスに住み、いろいろな人に話を聞きながら家と農地を探していきました。すると、5月には「いい場所に家と圃場があるよ」と理想に合う物件の話が舞い込んできたそうです。
「このハウスはどうだろう?この家はどう?と本当に多くの人が声をかけ、助けてくれました。ほかの島を知らないので比べられませんが、JAさんも、先輩農家さんも、壱岐市の方も、長崎県の方も、とてもいい方ばかり。困ったら何でもブレーンになってくれるような感じで、小さなことでも親切に教えてもらえます。私は素直に聞いて、実践するだけ。地方や島の良さなのだろうと感じますね」。
2年目以降の資金援助は国の補助のみとなりますが、アスパラガスの育て方はもちろん、稼ぎ方やノウハウに関する支援が潤沢にあり、壱岐島を選んで良かったと話します。
一方、東京から島への移住に不安もありましたが、普通に生活するのに困ることは何もなかったそうです。
「福岡まで1時間で行けるし、ネットショッピングは翌日に届くし、島内のどこに行くにも車で30分以内。都心の生活と比べると快適だし、人生が豊かになりました」と話します。
アスパラガスは3月から10月がシーズン。11月から2月までの約4カ月間は、ほぼ休みです。
「オフシーズンは2週間単位で東京の家族のもとに戻り、販売先のお客様に会いに行ったり、福岡に寄ったり、旅行を楽しむなど、自由気ままに過ごしています。ちなみに、アスパラガス農家と別の仕事を兼業している人も多く、いろいろな働き方ができるのではないでしょうか」。

子どもたちも手が離れた今、単身で島にわたり、東京との二重生活を楽しめていると言います。
一度植えたら20年、25年は同じ苗から収穫でき、暮らしも上向きに。

朝晩の寒暖差が大きく、高原野菜のような甘みを持つのも壱岐産アスパラガスの特長です。潮風にあたることで甘みが凝縮されるとも言われる島の野菜は、何を食べてもおいしいと北嶋さん。さらに、農家にとって最大の安心は、イノシシもシカもクマも圃場を荒らす害獣がいないこと。唐津や対馬から泳いでくることもあるそうですが、そんなときでもすぐに猟友会が動くため、害獣被害もありません。
アスパラガスは年間を通じて単価が高く、3期目が終わった北嶋さんの年収は約1000万円。アスパラガスを植えて1年目は、株を育てる時期のため、収穫はゼロとなり、2年目、3年目も、将来の収量をできるだけ増やすため、控えめに収穫します。これまで我慢した分、4年目からは本格的に収量を増やし、前年比120%や150%とさらなる増収を見込んでいます。
「アスパラガスを育てるのに必要なのは、水代、電気代、肥料代くらいで、苗を一度植えたら20年、25年と同じ苗から収穫していきます。大切なのは苗をどれだけきちんと管理できるか。マメな人ほど管理できるため、アスパラガス農家に向いていると思います。反対に、何でも後回しにしてしまう人には不向き。早めに小まめに動ける人だと20年間は収量が右肩上がりとなり、所得も生活も安定していくと思いますよ」。
生産者の高齢化や担い手不足が課題にあるのは壱岐市も同じですが、重たい作物ではないため、女性や高齢者でも無理なく取り組めるのもアスパラガスの大きなメリットです。ハウスを建てるとなると初期投資の面で負担もありますが、資材などの費用が上がり続ける今、はじめるなら早い方がいいと北嶋さんは話します。
「初期費用の負担をできるだけ少なく」そんな親身なサポートが支えに。
壱岐市で就農をめざすなら、アスパラガスやイチゴがおすすめだとJAの榊原さん。JA壱岐市新規就農者支援事業では、「育成型」「平行型」「研修型」の3つから自分に合ったコースを選択することができます。
また、経験を積みながら収入を得ることができる農業版マルチワーカー制度もあり、アスパラガスやイチゴ、日本一に輝いたこともある長崎和牛「壱岐牛」など、農家さんそれぞれの作業に従事する中で仕事内容を知り、自分の働き方やスタイルに合う品目を見つけることもできます。
「研修では技術的な面はもちろん、座学で農薬の扱い方など、幅広く学ぶことができます。研修中から就農の相談まで受けることで、スムーズな就農につなげられるよう支援しています」と榊原さん。
JA壱岐市では、新規就農者を支援するため、行政と定例会で情報共有するほか、オンラインセミナーや就農ツアーなども企画。壱岐市への移住をサポートする行政の部署と連携し、学校や生活全般の不安な部分に関しても相談会を実施しています。
「アスパラガスやイチゴで新しく就農支援を受けた先輩農家の皆さんも、しっかりと生計を立てることができています。中には、牛と複合的に経営する方もいます。また、JAのトレーニングハウスでは、施設を利用して模擬経営で実践的に学べるなど、いつでもスタートできる環境を整えています」と榊原さん。
「とにかく支援が手厚い!」と北嶋さんが話すように、新規就農者の負担をできるだけ少なくできるよう親身にサポートしてくれる人に恵まれることも壱岐島で就農をめざす大きな魅力です。

【写真提供】
(一社)壱岐市観光連盟
お問い合わせ
JA壱岐市
〒811-5132
長崎県壱岐市郷ノ浦町東触560
TEL:0920-47-1331(代表)
<就農相談連絡先>
担い手支援課 TEL:0920-45-0301(直通)
E-mail: ninaite01@jaiki.sakura.ne.jp
















