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土づくりは「何を生やしておくか」で決まる! カバークロップの7つの効果と種類を農家が徹底解説

土づくりは「何を生やしておくか」で決まる! カバークロップの7つの効果と種類を農家が徹底解説

収穫が終わった畑を、そのまま裸地にしてはいないだろうか。作物を栽培していない期間に「何を生やしておくか」は、実は土づくりを考える上で重要である。そこで注目したいのが「カバークロップ(被覆作物)」だ。カバークロップとは、直接的な収穫を主な目的とせず、土壌を覆い、農地の環境を改善するために栽培する植物のことである。土壌流亡や雑草を抑えるだけでなく、余分な養分を吸収したり、有機物を供給したり、根や土壌生物を介して土壌環境を改善したりと、その働きは実に多彩である。本記事では、カバークロップとは何なのか、どのような効果が期待できるのか、その仕組みを詳しく解説する。

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カバークロップとは?

カバークロップ(cover crop)とは、主として収穫物を得るためではなく、農地を植物で覆い、土壌や農業生態系を改善する目的で栽培される植物のことである。筆者らの野菜や果樹の畑でも、もちろんカバークロップを意識的に育てている。以前紹介したヘアリーベッチも、カバークロップとしてよく利用されているものだ。

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ヘアリーベッチ

ヘアリーベッチ

果樹園の場合は特に、樹と樹の間や通路部分に植物を維持する「草生栽培」も、カバークロップを利用した管理方法の一つと考えることができる。

野菜などを生産する畑の場合、土壌が裸地になる期間にイネ科、マメ科、その他の草本植物などを栽培し、土壌の保護や改善をする方法として活用されることもある。

たとえば、春ジャガイモを収穫したあと、次の作付けまで畑を何も生えていない状態にしておくのではなく、暑さに強く生育旺盛なソルゴーなどを播種しておく。

夏の暑さでもしっかりと生育するソルゴー

夏の暑さでもしっかりと生育するソルゴー

そして、十分に生育したところで刈り倒したり、すき込んだりする。このソルゴーがカバークロップである。ソルゴーは夏場に大きなバイオマスをつくりやすく、土壌を覆って雑草や土壌流亡を抑えるほか、根をよく張るため土壌改良にも利用されている。

カバークロップと緑肥は何が違う?

カバークロップについて調べると、「緑肥」という言葉も頻繁に登場する。
両者は非常に近い概念であり、同じ植物がカバークロップにも緑肥にも利用されるため、明確に区別されない場合も多い。ただし、言葉が強調している機能には若干の違いがある。

「緑肥」は、植物体を土壌へすき込み、有機物や養分を供給する「肥料としての役割」に重点を置いた言葉である。一方、「カバークロップ」は文字通り「土を覆う作物」であり、侵食防止、雑草抑制、養分保持、土壌構造改善、生物多様性向上など、より幅広い機能を含む。

したがって、「緑肥はカバークロップとして利用できる」という関係になることが多いが、必ずしもカバークロップは、緑肥として土壌にすき込まれる植物ではない。刈り倒して地表に残す方法もあれば、果樹園などでは生きたまま維持するリビングマルチとして利用する場合もある。

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なぜ「土を裸にしない」ことが重要なのか

カバークロップの効果を理解するためには、まず「植物が生えていない裸地」が、土壌にどのような影響を与えるのかを考えてみると分かりやすい。

自然界を観察すると、植物が生育できる場所で地面が長期間むき出しになっていることは意外と少ない。植物が枯れても、落ち葉や枯れた茎葉が地表を覆い、その下からまた次の植物が生えてくる。ところが農地では、収穫や除草、耕起などによって、人為的に土壌がむき出しの状態になることが多い。

裸地になると、まず問題となるのが雨である。植物や残渣が地表を覆っていればクッションのような役割を果たすが、裸地では雨粒が直接土壌表面をたたく。これによって土壌の団粒が壊れたり、細かな土壌粒子が流されたりする。特に傾斜地や大雨の多い地域では、表土そのものが流亡する「土壌侵食」につながる。また、強い日射も直接地面に当たるため、地温の上昇や土壌水分の蒸発も起こりやすくなる。

そこで筆者らの果樹園では、果樹の周囲をなるべく裸地にしないよう、意識的に植物を生やしている。例えば、アテモヤの木々の周囲には枝豆を植えている。

アテモヤ(果樹)の木々の周りに枝豆を植えている

アテモヤ(果樹)の木々の周りに枝豆を植えている

カバークロップとして地表を植物で覆うことができるだけでなく、枝豆はマメ科植物なので、根粒菌との共生による窒素固定も期待できる。さらに、収穫すればそのまま食べられるというのも大きな魅力である。カバークロップは必ずしも「収穫してはいけない植物」というわけではなく、土壌を覆うという役割を果たしながら、副産物として収穫物を得るような使い方もできる。

もちろん、枝豆を収穫すれば、植物が取り込んだ養分の一部は畑の外へ持ち出されるため、植物体を丸ごと緑肥として還元する場合とは効果が異なる。それでも、何も生やさず土を裸にしておくより、果樹と競合しない範囲で植物を育て、地表を覆い、生きた根を土壌中に維持するという考え方は、カバークロップを利用する上で大切である。

大切な土を外に逃がさない

筆者が農業を営む沖縄県では、この土壌侵食は特に身近な問題である。沖縄県農林水産部も「赤土流出防止プロジェクト」を立ち上げ、対策に力を入れている。沖縄では大雨や台風などによって、畑から赤土などが流出する「赤土等流出」が長年問題となっている。

赤土流出防止プロジェクトについて(おきなわ花と食のフェスティバル イベント会場にて)

赤土流出防止プロジェクトについて(おきなわ花と食のフェスティバル イベント会場にて)

畑から流れ出した土壌は、農地にとって貴重な表土が失われるだけでなく、河川を通じて海へ流れ込み、サンゴ礁や海草藻場など沿岸の生態系にも影響を及ぼす。

特に耕起した直後や作物がまだ十分に生育していない時期など、畑の表面が裸地になっていると土壌は雨の影響を受けやすい。沖縄県では、この赤土等流出を防ぐ営農対策の一つとして、畑の周囲や畝間などを植物で覆う方法も利用されている。

つまり、畑に植物を生やして土を覆うことには、「土を良くする」という効果以前に、そもそも大切な土を畑の外へ逃がさないという重要な役割があるのである。

土壌中の微生物への配慮

土壌を裸地にしないことは、土壌中に暮らす微生物などの生き物にとっても重要である。
土壌中には、細菌や菌類をはじめ、原生生物、線虫、ダニ、トビムシ、ミミズなど、実に多様な生物が暮らしている。そして、これらの土壌生態系を支える重要なエネルギー源の一つが、植物の光合成によってつくられる有機物である。

植物は光合成によって大気中の二酸化炭素を取り込み、糖などの有機物をつくる。その一部は地下部へ送られ、根の成長に使われるだけでなく、糖類、有機酸、アミノ酸などの形で根の周辺へ放出される。これらは「根滲出物(こんしんしゅつぶつ)」と呼ばれ、根の周囲に形成される「根圏(こんけん)」に暮らす微生物にとって重要な炭素源やエネルギー源となる。

また、植物が枯れたあとも根や茎葉などの植物残渣が土壌生物によって分解され、その一部は土壌有機物となる。このように考えると、植物は単に土壌から水や養分を吸収しているだけではなく、光合成によって得た炭素を地下へ送り込み、土壌生態系を支える役割も担っているのである。

一方、作物を収穫したあとに畑を長期間裸地にすると、その期間は生きた根から根圏へ供給される有機物も少なくなる。そこで、通常なら何も生えていない期間にもカバークロップを育てることで、できるだけ長く「生きた根」が存在する環境をつくることができる。

地上では植物が土を覆い、地下では根が微生物などの土壌生物を支える。カバークロップは、土壌を物理的に守るだけでなく、そこに暮らす生き物を含めた「土壌生態系」を維持するという点でも重要なのである。

カバークロップの7つの効果

ここでは、カバークロップの7つのメリットについて詳しく解説していく。

1.土壌流亡を防ぐ
2.土壌有機物を増やし、炭素を蓄える
3.団粒構造の形成や水の浸透を助ける
4.肥料成分を逃がさない
5.マメ科なら空気中の窒素を利用できる
6.雑草を抑える
7.害虫の忌避効果が期待できる

1.土壌流亡を防ぐ

最も分かりやすい効果が、土壌侵食の防止である。植物の葉や茎が地表を覆うことで、雨滴が直接土壌に衝突するのを防ぐ。さらに根が土壌を保持し、地表付近を流れる水の速度も低下させる。

特に大雨の多い地域や傾斜地では重要な効果である。筆者らの露地のアボカド園地も傾斜の厳しいところが多いが、意識的に草を生やし、地表を覆うことで土壌流亡を防いでいる。

アボカド園地でも意識的に草を残し,地表を覆っている

アボカド園地でも意識的に草を残し、地表を覆っている

土壌は一度流出してしまえば簡単には元に戻らない。表土には有機物や養分が多く含まれるため、侵食は単に「土が減る」だけではなく、農地の生産力そのものを失うことにつながる。

2.土壌有機物を増やし、炭素を蓄える

カバークロップを利用する大きなメリットの一つが、畑へ有機物を供給できることである。
カバークロップは光合成によって大気中の二酸化炭素を取り込み、糖などの有機物をつくる。それらは茎や葉、根など植物体をつくる材料となり、刈り倒したり枯死したりしたあとは植物残渣として畑に残る。また、生育中にも根から根滲出物として有機物の一部が土壌中へ供給される。

これらは土壌中の微生物などによって分解され、一部は再び二酸化炭素として大気へ戻る一方、一部は土壌有機物として土の中に残る。

土壌有機物は、土壌生物の餌となるほか、養分を保持したり、団粒構造の形成に関わったり、水を保持したりするなど、土壌のさまざまな性質に関係している。また、有機物が分解される過程では窒素やリン、硫黄などの養分が無機化され、作物が利用できる形で供給されることもある。そのため、土壌有機物を維持することは、作物を安定して育てられる土をつくる上で重要である。

つまりカバークロップは、肥料や堆肥のように有機物を外から持ち込む方法とは異なり、太陽光と大気中の二酸化炭素を利用して「畑の中で有機物をつくる」方法とも考えることができる。

長期的にカバークロップを取り入れ、こうした有機物の供給を積み重ねていくことが、土壌有機物を維持・増加させ、土づくりにつながっていくのである。

3.団粒構造の形成や水の浸透を助ける

カバークロップは、土壌の物理性を改善する効果も期待できる。根が土壌中へ伸びることで細かな孔隙が形成されるほか、根や微生物に由来する有機物などが土壌粒子を結び付け、団粒構造の形成や安定化に関わる。

カバークロップが土壌の物理性に与える影響について、98報もの査読論文をまとめたBlanco-Canqui and Ruis(2020)の大規模なレビューによると、カバークロップの利用によって、湿潤時の団粒安定性は平均16%向上し、土壌への水の累積浸透量は平均43%増加、土の硬さの指標となる貫入抵抗も平均5%低下することが報告されている[1]。

農家にとって特に注目したいのが、水が土壌へ浸透しやすくなることである。大雨が降った際に水が地表を流れにくくなれば、表土や肥料成分の流亡を抑えることにつながる。また、根が伸びやすい土壌環境をつくることは、作物がより広い範囲から水分や養分を吸収する上でも重要である。長期的な土づくりの一つとして取り入れていくことが大切なのである。

4.肥料成分を逃がさない

人気が高いソルゴー

人気が高いソルゴー

カバークロップの非常に重要な機能が、養分の「回収」である。作物を収穫したあとも、土壌中には硝酸態窒素などの養分が残っていることがある。植物が存在しなければ、これらの窒素は雨によって地下へ移動し、根域外へ流亡する可能性がある。

そこでカバークロップを生育させる。 特にイネ科などの植物は土壌中に残った無機態窒素を吸収する能力が高く、養分流亡防止に適している。 吸収された窒素は植物体に一時的に保持されるが、その後カバークロップが枯れ、微生物によって分解されると、窒素の一部が再び土壌へ戻る。流亡する可能性のある養分を農地の内部で循環させるのである。

肥料価格が高騰する状況では、こうした養分をできるだけ畑の中で循環させることは、農家にとって非常に重要であると筆者は考える。

5.マメ科なら空気中の窒素を利用できる

筆者が好んで利用するマメ科植物

筆者が好んで利用するマメ科植物

クローバー、ヘアリーベッチ、レンゲ、クロタラリアなどのマメ科植物には、根粒菌との共生による「生物的窒素固定」という面白い能力がある。

大気の約78%を占める窒素ガス(N2)は、そのままでは多くの植物が利用できない。しかし、マメ科植物と共生する根粒菌は、窒素固定酵素ニトロゲナーゼによって窒素ガスを植物が利用できる形へと変換する。そのため、マメ科のカバークロップを利用することで、大気中に豊富に存在する窒素を農地の窒素循環へ取り込むことができる。

大まかにいえば、マメ科は「窒素を農地へ取り込むカバークロップ」、イネ科は「土壌中に余った窒素を回収するカバークロップ」と考えると理解しやすい。

筆者らの果樹園でも、クローバーやヘアリーベッチ、レンゲ、クロタラリアなどのマメ科植物を意識的に植えている。

背丈がかなり高くなるクロタラリアもおすすめ!

背丈がかなり高くなるクロタラリアもおすすめ!

土づくりや窒素固定を期待してのことだが、実際に育ててみると、それ以外にも楽しみがある。花の時期になるとミツバチなどの訪花昆虫がたくさん飛んできて、果樹園が一気ににぎやかになるのである。

クローバーやレンゲなどの花が咲き、その上をミツバチが飛び回っている光景を見ると、単純に農作業をしていて気分も上がる。カバークロップは土壌を改善するためだけの植物ではなく、昆虫を呼び込み、果樹園の生物多様性や景観を豊かにしてくれる存在でもあると、筆者自身は感じている。

6.雑草を抑える

カバークロップを雑草の抑制に利用することも可能である。

カバークロップが地表を素早く覆うと、雑草が利用できる光や空間が少なくなり、発芽や生育が抑えられる。また、カバークロップを刈り倒して地表に残せば、その植物残渣がマルチのような役割を果たし、雑草の発生を抑える効果も期待できる。

農家にとっては、雑草の発生量を減らすことで、除草作業の負担軽減につながる可能性がある。また、刈り取ったカバークロップをそのまま地表に残せば、雑草を抑えながら有機物も畑へ還元することができる。

つまりカバークロップは、「雑草を生やさないために土を裸にする」のではなく、「育てたい植物で先に土を覆い、雑草が入り込む余地を少なくする」という、少し発想を変えた雑草管理にも利用できるのである。

筆者は以前、雑草抑制を目的としてタピアンという植物を試したことがある。地表を覆うスピードも速く、花もきれいで、非常に満足した。

雑草抑制を目的として利用したタピアン

雑草抑制を目的として利用したタピアン

7.害虫の忌避効果が期待できる

カバークロップの中には、植物が放出する香り成分などを利用して、害虫を寄せ付けにくくする効果が期待されているものもある。

筆者が以前、鹿児島県でアボカドを栽培する友人の園地を訪れた際に驚いたのが、カメムシなどの害虫を少しでも寄せ付けにくくする目的で「ペニーロイヤルミント」を果樹園に植えていたことである。

筆者の友人のアボカド園地は,ペニーロイヤルミントが植えられていた

筆者の友人のアボカド園地では、ペニーロイヤルミントが植えられていた

ペニーロイヤルミント

ペニーロイヤルミント

ペニーロイヤルミント(Mentha pulegium)はシソ科ハッカ属の植物で、葉や茎から強いミント系の香りを放つ。毒性が強く、食用には向かないため注意が必要であるが、実際に園地を歩いてみると、足元から爽やかな香りが広がり、農作業をしていても心地よい。

害虫を殺すことだけではなく、「害虫が近づきにくい環境を植物によってつくる」という発想は非常に興味深い。カバークロップは土づくりや雑草抑制だけでなく、こうした害虫管理の一部として利用できる可能性も秘めているのである。

カバークロップにはどんな種類がある?

カバークロップに利用できる植物は非常に多いが、大きく分けると「イネ科」「マメ科」「アブラナ科」「その他の広葉植物」などに分けて考えると分かりやすい。それぞれ得意とする働きが異なるため、「何を改善したいのか」によって植物を選ぶことが重要である。

イネ科

代表的なものには、ライムギ、エンバク、オオムギ、ソルガム、スーダングラスなどがある。
筆者らはたまに、果樹園でナギナタガヤなどを利用している。柔らかい草で、初夏になると自然に枯死し、その植物体が地表を覆ってくれるため、果樹園では非常に使いやすい草だと感じている。

発芽直後のナギナタガヤ

発芽直後のナギナタガヤ

イネ科は生育量が大きく、細かな根を大量に張る種類も多いため、土壌被覆、土壌流亡の防止、有機物の供給、雑草抑制などを目的として利用しやすい。また、土壌中に残った硝酸態窒素などを吸収する能力にも優れ、「余った肥料成分を回収する」カバークロップとしても利用される。

一方、成熟したイネ科植物はC/N比が高くなるため、大量の残渣をすき込むと、分解する微生物によって土壌中の窒素が一時的に取り込まれ、次作で窒素不足が起こることもある。利用する場合は、刈り取り時期や次に植える作物まで考えて管理したい。

マメ科

代表例は、クローバー類、ヘアリーベッチ、レンゲ、クロタラリア、エンドウ類、ササゲなどである。

園地の広いエリアをすぐに覆ってくれるクローバー,花を摘んで遊ぶこともできる

園地の広いエリアをすぐに覆ってくれるクローバー、花を摘んで遊ぶこともできる

赤紫色の花が綺麗なヘアリーベッチ

赤紫色の花が綺麗なヘアリーベッチ

最大の特徴は、根粒菌と共生して大気中の窒素を取り込めることである。そのため、土壌被覆や有機物供給だけでなく、次作への窒素供給を期待して利用できる。筆者らの果樹園でも、クローバーやヘアリーベッチ、レンゲ、クロタラリアなどを利用している。

また、花を咲かせる種類が多く、開花期にはミツバチなどの訪花昆虫が飛び交う姿も見られる。土づくりだけではなく、果樹園の生物多様性や景観を豊かにしてくれるのも、マメ科カバークロップの面白いところである。

アブラナ科

アブラナ科も、世界的によく利用されているカバークロップの一つである。代表例には、飼料用ダイコン、カラシナ、ナタネ、カブなどがある。

アブラナ科の特徴の一つが、生育が比較的速く、土壌中に残った窒素などの養分を回収する能力が高いことである。また、ダイコン類のように太い直根を深く伸ばす植物では、硬くなった土層へ根を伸ばし、土壌中に大きな孔隙を残す効果も期待できる。

さらに、カラシナなどのアブラナ科植物には「グルコシノレート」という成分が含まれている。植物体が細かく破砕されると、これらからイソチオシアネート類が生成され、線虫や一部の土壌病原菌などを抑制すると言われており、筆者も野菜の作付けの合間によくカラシナを植えている。収穫しきれずに残ったものは、最終的に土壌へすき込んでいる。

カラシナ

カラシナ

収穫せずに残ったカラシナは,最終的に土壌へすき込んでいる

収穫せずに残ったカラシナは、最終的に土壌へすき込んでいる

ただし、アブラナ科植物を植えておくだけで土壌病害虫が必ず抑えられるわけではない。効果は植物の種類や生育量、破砕やすき込みの方法、土壌水分などによって大きく異なる。また、キャベツやダイコンなどアブラナ科作物を栽培する畑では、共通する病害虫を増やす可能性もあるため、輪作体系を考えて利用する必要がある。

その他の広葉植物やハーブ類、花など

カバークロップは、イネ科、マメ科、アブラナ科だけではない。ソバ、ヒマワリ、ファセリア、チコリなど、さまざまな広葉植物が利用されている。

筆者は,気分転換にヒマワリなどの花を植えることもある

筆者は、気分転換にヒマワリなどの花を植えることもある

例えばソバは初期生育が速く、短期間で地面を覆いやすいため、雑草抑制などを目的として利用できる。また、花を咲かせる植物を取り入れることで、ミツバチなどの訪花昆虫を呼び込むことも期待できる。

さらに、前述したペニーロイヤルミントのような芳香性のハーブを果樹園に取り入れ、害虫を寄せ付けにくくすることを狙った利用方法もある。こうした植物は、土づくりだけではなく、害虫管理、生物多様性、景観など、カバークロップに別の機能を持たせられる点が面白い。

ただし、ハーブ類は種類によって性質が大きく異なり、繁殖力が強すぎる植物では、カバークロップそのものが管理しにくい雑草になってしまうこともある。導入する際には、その植物の繁殖性や毒性、主作物との競合なども確認しておきたい。

複数の植物を混ぜる方法もある

近年は、イネ科+マメ科+アブラナ科など、性質の異なる植物を混播する方法も利用されている。ただし、種類を増やせば増やすほど優れたカバークロップになるというわけではない。

重要なのは植物の種類数ではなく、何のためにカバークロップを植えるのかである。土壌流亡を防ぎたいのか、窒素を増やしたいのか、余った養分を回収したいのか、雑草や害虫を抑えたいのか。目的を決めてから、それに適した植物を選ぶことが大切である。

まとめ

カバークロップには、さまざまな効果が期待できることを説明してきた。この記事を読んでいる方の中には、本業として農業を営んでいる方だけでなく、家庭菜園や小さな果樹園を楽しんでいる方もいるだろう。そんな場合には、「何を植えれば一番効率がよいのか」だけではなく、「この植物を畑に植えたら楽しそうだ」という遊び心があってもよいのではないだろうか。

カバークロップには実にさまざまな種類があり、それぞれ得意なことも違う。だからこそ、自分の畑の目的に合わせながら、いろいろな植物を試してみてほしい。土づくりや農作物の生産だけでなく、花を咲かせたり、昆虫を呼び込んだり、畑を彩ったりするために利用するのも一つの楽しみ方である。カバークロップをうまく取り入れながら、楽しみつつ、自分なりの畑をつくっていってほしい。

【参考文献】
[1]Blanco-Canqui, H. & Ruis, S. J. (2020). Cover crop impacts on soil physical properties: A review. Soil Science Society of America Journal, 84, 1527–1576.

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