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緑肥とは?主要な緑肥作物の種類と有効な使い方・メリットやデメリットなど紹介

緑肥とは?主要な緑肥作物の種類と有効な使い方・メリットやデメリットなど紹介

肥料は、農作物を育てる上で絶対に欠かせない物です。肥料を作付け前に畑にまいたり埋めたりして土に施し、その後は植物の成長に合わせて追肥を行うのが一般的ですが、畑に植えた植物を肥料として土壌に入れたまま耕す「緑肥(りょくひ)」という方法もあります。
ここでは、緑肥の効果やメリット、緑肥に使われる作物の種類や有効な使い方について紹介していきます。

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緑肥とは?

緑肥

そもそも緑肥とは、栽培した植物を腐らせずに土壌に入れて耕し、肥料にすること。

そのために栽培する植物のことを「緑肥作物」と呼びます。その歴史は古く、ヨーロッパでは小麦を栽培する前にクローバーが、アメリカではトウモロコシを栽培する前に大豆が緑肥として利用されるなど、世界各国の農業に採り入れられています。

春の田んぼ一面に咲くレンゲは、自然に生えているのではなく農家が緑肥として栽培しているのです。

主要な緑肥作物の種類とその特徴は?

緑肥

緑肥作物にはさまざまな種類や特徴があり、害虫の発生を抑制したり、作物の病気を低減したりする効果が期待できる物もあります。

他にも、雑草の抑制や土壌に含まれる塩類の濃度が高くなる塩類障害の防止、土の構造を改善して水はけや保水力を高めたり、土壌中に窒素やカリウムをはじめとする栄養分を放出したりする効果など、堆肥では得られない効果があるのも緑肥の特徴です。

そのため、緑肥を利用する際には、畑の状況や目的に合わせて選ぶことが大切です。

ここでは、代表的な緑肥作物の種類を紹介します。

燕麦野生種(イネ科)

燕麦(えんばく)野生種は、大根やニンジン、レタスなどの大敵であるキタネグサレセンチュウやキタネコブセンチュウといった害虫の抑制に効果的とされています。種類によりますが、高冷地では4月下旬~9月上旬(春まきまたは夏まき)、暖地では3月上旬~11月下旬(春、夏、秋まき)頃に種まきが可能です。

ヘアリーベッチ(マメ科)

ヘアリーベッチは、雑草抑制効果が高く日陰でもよく生育するため、果樹園の下草によく使われます。種を3月にまき4月下旬にすき込めば、1カ月後に作付けするトマトやナス、ピーマン、キュウリなどの夏野菜に利用可能です。ただし、種の発芽を抑える効果があるため、ダイコンなどの種まき野菜を育てるには向きません。

ヒマワリ(キク科)

ヒマワリは、根から排出される根酸には、土壌に含まれる不溶性リン酸を可溶性リン酸に変え、作物が吸収できる性質に変える働きがあります。そのため、火山灰土や気温が低くリン酸が吸収されにくい北海道などでよく利用されます。タマネギやソラマメ、エンドウの栽培前の緑肥に向いており、その場合は5~8月頃に種をまきます。

ライ麦(イネ科)

根野菜の大敵であるキタネグサレセンチュウやキタネコブセンチュウなどの害虫の抑制に最適なのがライ麦です。塩類濃度が高い畑の肥料分の除去にも使われます。ライ麦の一品種「ライ太郎」は、北海道などでの玉ねぎ収穫後の後作緑肥に使われることが多いです。高冷地では4月中旬~9月上旬、暖地では3~5月、8月中旬~11月頃に種まきが可能です。

レンゲ(マメ科)

レンゲは、秋に刈り入れが終わった後の水田の緑肥として利用されています。窒素含有量が非常に高く、土壌に化学肥料使用に匹敵する窒素分を供給することが可能です。ピンクや紫の鮮やかな色の花を咲かせるため、景観用としても優れています。

マリーゴールド(キク科)

葉茎に含まれる成分が、サツマイモネコブセンチュウやキタネグサレセンチュウの抑制に最適とされるマリーゴールド。種まきは、高冷地では4~6月上旬、暖地では4~7月頃に行います。8月頃にはきれいな橙色の花をつけるため、レンゲと同じく景観用としても優れています。

緑肥用トウモロコシ(イネ科)

緑肥用トウモロコシは吸肥力が強いため、すき込んだ後の肥料としての高い効果があるとされています。日光があれば、場所を選ばず生育が可能です。ホウレンソウやブロッコリー栽培前の緑肥に向いています。

チャガラシ(アブラナ科)

辛味成分のグルコシノレートを多く含み、土壌殺菌効果が高いとされるチャガラシ。すき込むとガスを発生し、土壌中の病原菌や害虫を減らしてくれます。ジャガイモの黒あざ病、ホウレンソウの萎凋病、トマトの青枯病の被害低減に効果が期待できます。

緑肥のメリットは?

土壌環境の改善

緑肥は、土壌中の微生物を活性化させ、土壌の有機物を分解する働きがあります。そのため、土壌の肥沃度を高めることが可能です。また、根が深く張る緑肥作物を利用することで、土壌を緩和することができ、水はけの改善にもつながります。

土壌の水分蒸発を抑制するため、乾燥地域などでの水管理にも効果があるでしょう。

センチュウ抑制

緑肥は、農地の害虫であるセンチュウの発生を抑制する効果があります。緑肥作物が地上部を茂らせることで、センチュウの卵を孵化させないようにし、成虫が飛び立つのを妨げます。

また、緑肥作物が放出する特定の化合物は、センチュウの発生を抑制する作用があるとされています。

施肥量削減

緑肥は、窒素やリンなどの栄養素を土壌に補給するため、化学肥料の使用量を減らすことができます。緑肥作物が窒素を固定する力を持っている場合には、窒素肥料の施用量を削減できるため、コスト削減にもつながるでしょう。

また、緑肥作物が分解されることで放出される栄養素は、速やかに微生物によって分解され、根に吸収されるため、化学肥料と比較して、栄養分の浸透が速く、効率的な肥料となります。

景観の美化

緑肥作物は、植物の多様性を増やし、農地の景観を豊かにします。また、土壌を覆うことで、土壌流出を防ぎ、砂嵐の発生を抑制するなど、地域環境の保全にも貢献します。

さらに、緑肥作物の多様な花は、ミツバチやチョウなどの花粉を運ぶ昆虫を呼び込み、生態系のバランスを保つことにもつながります。

緑肥のデメリットは?

周辺環境への影響

緑肥を利用することで、周辺環境への影響が懸念される場合があります。

例えば、繁茂した草が道路や住宅地へ侵入し、視界を妨げたり、害虫の発生を促進することがあります。また、緑肥が風で散布され、周辺の農作物や住宅地に影響を与えることがあるため、適切な管理が必要です。

さらに、緑肥の生育に伴い、水分や養分を多く必要とするため、周辺の農作物と競合することがあります。

コスト

緑肥の栽培には、種子の購入や栽培管理にかかるコストがかかります。

緑肥の種子の価格は、種類によって異なりますが、一般的に作物の種子よりも高価です。

また、緑肥の育成には、適切な土壌管理や草刈り、追肥などの管理が必要です。これらの作業には、人件費や機械費用などが必要になるため、緑肥のコストは高くなる傾向があります。

緑肥のやり方は?

緑肥は、栽培中の作物と同時に栽培することができます。栽培の流れとしては以下のような内容になります。

種まき

緑肥の種をまきます。まく量や時期は、種類や栽培する地域によって異なります。

まく量が多すぎると、弱い発芽や発根につながるため、適切な量を計算し、均等にまくことが大切です。

また、適した時期にまかなければ、十分な効果を得ることができないため、地域の気候条件に合わせた時期を選ぶ必要があります。

生育期間

緑肥作物は、種まきから収穫までの期間を生育期間と呼びます。生育期間は種類や地域によって異なりますが、一般的には3か月から半年程度です。生育期間中は、生育状況を定期的に確認し、根が張る前に収穫することで、土壌改良効果を最大限に引き出すことができます。

収穫

緑肥作物は、収穫前に刈り取るか、土壌に返すかのどちらかになります。緑肥作物の種類によっては、収穫して利用することも可能です。例えば、クローバーは、牧草としても利用されることがあります。

土壌への返却

緑肥作物を刈り取った後は、根っこごと土壌に返します。根っこが分解されることで、土壌中の有機物が増え、土壌改良効果を高めることができます。

緑肥作物の選び方は?

土壌を肥沃にしたいとき

土壌を肥沃にするためには、緑肥作物の中でも特に豆類やキャベツ類がおすすめです。

これらの作物は、大量の根を伸ばし、土壌の中の栄養素を吸収することができます。また、豆類は根粒菌と共生し、窒素を固定する能力があるため、土壌の窒素を増やすことができます。

そのため、土壌改良に適した緑肥作物としては、以下のものが挙げられます。

・エンドウ:窒素を固定する力が強く、土壌改良に適している。
・ハクサイ:根が深く、地下水を探す力が強いため、地中に残った栄養分を取り出すことができる。
・大豆:窒素を固定する力が強く、作物の育成に必要な栄養素を供給することができる。

水はけ・水もちを良くしたい

水はけや水もちを改善するためには、ライ麦やオオムギが適しています。これらの作物は、深い根を伸ばし、土壌を緩めることができます。また、土壌に水分を蓄える能力があり、水はけを改善することができます。

水はけ改善に適した緑肥作物としては、以下のものが挙げられます。

・オオムギ:深い根を伸ばすため、土壌の緩和や水はけ改善に適している。
・ライ麦:茂った地上部が土壌を保護し、土壌中の水分を保持することができる。
・ダイコン:根が深く、土壌中の水分を取り出すことができ、水はけ改善に適している。

雑草・虫対策

雑草や虫を防ぐためには、クローバーやハーブ類が適しています。

これらの作物は、地上部が茂り、雑草の成長を抑制する効果があります。

また、ハーブ類は、その香りが虫を寄せ付けず、害虫を防ぐ効果があります。雑草・虫対策に適した緑肥作物としては、以下のものが挙げられます。

・クローバー:地上部が茂り、雑草の成長を抑制する効果がある。また、土壌改良にも適している。
・ハーブ類(例:ローズマリー、タイム、ラベンダー):香りが虫を寄せ付けず、害虫を防ぐ効果がある。また、ハーブティーや調味料として利用することもできる。

特徴を踏まえて緑肥作物を選ぶことで大きな効果が期待できる

緑肥は、自分の求める効果に最適な作物を選び、また適切な時期に種まき・すき込みを行うことで、その効果を最大限に活かすことができます。

同じ種類でも品種別に違いがあり、まき時や効果が違うこともありますので、使用する際はよく比較して選ぶようにしましょう。

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