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黒枝豆「ひかり姫®」が地域農業の未来をつくる。兵庫県加西市『農のクリエイティブ万願寺』の挑戦

黒枝豆「ひかり姫®」が地域農業の未来をつくる。兵庫県加西市『農のクリエイティブ万願寺』の挑戦

兵庫県加西市の中山間地域に位置する万願寺谷。この地域では、黒枝豆や酒米「山田錦」など、特色ある農産物がつくられている。
一方で、高齢化率は約50%を超え、獣害や農業インフラの老朽化も進んでいる。現在、移住者や地元の後継者が農業を支えているが、将来にわたって農業を継承するには、収益性の高い営農モデルが欠かせない。

こうした課題を背景に、地域の農業者は『農のクリエイティブ万願寺』を結成。黒枝豆「ひかり姫®」をはじめとする農産物の生産、選果、加工、販売、情報発信までを一体的に進め、農業を軸とした地域の活力づくりに取り組んでいる。

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地域の課題

高齢化が進む中、農業を次世代へどうつなぐか

万願寺谷は、三つの町に約319世帯、774人が暮らす中山間地域だ。そのうち60歳以上は390人で、高齢化率は約50%を超えている。

地域では、農業や暮らしを支える課題が顕在化している。特に大きいのが、イノシシやシカ、クマなどによる獣害だ。農業者が手間をかけて育てた作物が被害を受ければ、収量が減るだけでなく、営農意欲や経営の見通しにも影響する。
また、水路やため池など、農業インフラの老朽化も進んでいる。高齢化によって維持管理の担い手が限られるなか、地域資源を誰が、どのように守っていくのかが課題となっている。

現在、万願寺谷では移住者や地元の後継者が農業を担っており、担い手がまったく不足しているわけではない。しかし、今後も農業を続け、次世代へ引き継ぐには、担い手の数だけでなく、農業所得を高めることが重要だ。
十分な収益を得られなければ、若い世代が農業を職業として選び、地域に定着することは難しい。地域農産物の価値を高め、安定した販路を確保し、収益性の高い営農モデルを確立する必要があった。

さらに、農業者が個々に活動するだけでは、販路開拓やブランド化、加工、情報発信にかけられる時間や労力に限界がある。そこで、地域の農業者が連携し、万願寺谷の農業を一つの地域資源として発信する体制づくりが始まった。

取り組み内容

黒枝豆を核に、生産から販売・交流までを地域で担う『農のクリエイティブ万願寺』結成

地域の農業者を中心に結成されたのが、『農のクリエイティブ万願寺』だ。目指すのは、万願寺谷の元気と、農業を通じた地域活力の創出である。

移住・定住者が地域で農業を続けられる営農モデルを確立し、農産物を通じて地域外の消費者や企業ともつながることを目指している。現在は、主力メンバー3名とサポートメンバー1名が活動中だ。少人数だからこそ意思決定が早く、試行錯誤を重ねながら、生産、販売、加工、情報発信に取り組んでいる。

「ひかり姫®」を営農の核に

農業生産では、兵庫県育成品種の黒枝豆「ひかり姫®」を核に据えている。

「ひかり姫®」は、黒枝豆ならではの濃厚なコクや甘み、豊かな風味が魅力だ。収穫時期によって味わいが変化することも特徴で、限られた時期にしか味わえない旬の農産物として高い商品力を持つ。

農のクリエイティブ万願寺では、「ひかり姫®」を約3ha生産している。新品種でありながら県内最大の生産地となっており、関東圏を中心に約30社へ出荷している。

そのほか、山田錦についても、メンバー同士が栽培技術を共有し、品質向上に取り組んでいる。市内品評会では1位から5位までに入賞するなど、地域として技術を高めてきた。また、地域在来品種の「絹里芋」、丹波黒大豆、うるち米、新品種の白ネギ「兵庫N1」も栽培している。

選果場を自ら運営し、産地の力を高める

同団体の特徴は、農産物の生産だけでなく、選果場の運営まで自分たちで担っていることだ。
基盤づくりと販路開拓を行うフェーズ1を経て、現在は実行と検証を進めるフェーズ2に取り組んでいる。JAから機械を借用して作業体制を整え、他産地を視察して工程や設備、運営方法を研究した。

現在は選果場を自社で運営し、販路の見直しや作業オペレーションの改善を進めている。選果場を共同利用することで作業を効率化し、選別基準や出荷体制を整えることで、産地として品質をそろえ、取引先の信頼向上につなげるといった仕組みだ。

黒枝豆の価値を高める加工品開発

生鮮品だけでは、黒枝豆の旬の短さが販路拡大の制約になる。そこで、冷凍加工と商品開発にも力を入れている。

目指すのは、単に枝豆を冷凍することではない。旬の味わいや収穫時期による風味の違いを、一年を通じて楽しめる価値へ変えることだ。

「ひかり姫®」を使った「クラフト黒枝豆」は、新たな価値提案が評価され、第38回優良ふるさと食品中央コンクールで農林水産省大臣官房長賞を受賞した。

また、熟度の違いを商品の個性として捉えた商品も開発し、百貨店のお歳暮に採用された。「完熟黒枝豆」は第16回チーム・シェフ・コンクールで三つの賞を受賞。加工品は関東圏のレストランなどにも出荷され、加西市のふるさと納税返礼品にも採用されている。

バイヤー招聘と人材育成

関東圏を中心としたバイヤーを産地に招き、農地や選果場を見てもらいながら商談を行っている。年間約10社の産地訪問や商談につながっているほか、収穫祭などのイベントも開催し、地域の暮らしやつくり手の思いを伝えている。

加西市の観光協会とも連携し、集客にも取り組む。さらに、移住・定住後に就農を目指す研修生を受け入れ、農業技術や地域で暮らすための知識を指導している。令和8年度には、新規就農者1名を輩出した。

取り組みの成果

黒枝豆を軸に、販路・商品・担い手が広がる

現在、同団体では「ひかり姫®」を約3ha生産し、県内最大の産地となった。約30社への出荷に加え、加工品によって百貨店、レストラン、ホテル、ふるさと納税などへ販路が広がっている。

また、白ネギ「兵庫N1」も約1haを生産し、県内最大の生産地となった。テレビ番組で紹介されたことも、地域農産物の認知拡大につながっている。

加工品開発では、黒枝豆を「旬にしか食べられない農産物」から、「旬の価値を一年中楽しめる商品」へと広げた。コンクールでの受賞は、商品の品質だけでなく、地域の農業者が自ら加工や商品開発に挑戦する姿勢への評価でもある。

また、バイヤーの産地訪問や収穫祭、農業体験を通じて、地域外との接点も増えている。山田錦の品評会入賞や新規就農者の輩出など、技術継承と人材育成の面でも成果が表れているようだ。

他の地域で参考にすべきポイントとは

地域農業を「生産」だけで終わらせない

農のクリエイティブ万願寺の特徴は、農業を生産活動だけでなく、販売、加工、交流、人材育成を含む地域経営として捉えている点にある。

第一に、担い手不足が深刻になる前に収益性を高めようとしている点だ。「ひかり姫®」を核に、販路や加工による付加価値を高め、農業を続けられる経営基盤をつくろうとしている。

第二に、個人農家が連携し、産地として動いている点である。選果場を共同利用・自主管理することで、品質と出荷体制を整え、地域全体で取引先に提案できる。

第三に、地域性や希少性のある品目を活用している点だ。「ひかり姫®」は、黒枝豆の濃厚な味わいに加え、収穫時期による変化という物語性を持つ。地域でつくる意味を伝えられる品目は、ブランド化の核になる。

第四に、加工によって旬を新しい価値へ変えている点である。冷凍加工は保存のためだけでなく、販売期間を延ばし、新たな市場へ参入する手段になる。

今後は、ECサイト、会員組織や定期販売、CSA、体験イベントなどにも展開する予定だ。品目別の収支や作業時間、利益率を分析し、機械設備への投資も進めながら、持続可能な運営体制を目指している。

黒枝豆から始まる、万願寺谷の地域づくり

農のクリエイティブ万願寺が目指すのは、黒枝豆を販売して利益を上げることだけではない。

「ひかり姫®」を地域の核に据え、生産、選果、加工、販売、情報発信を一体化する。そこに、移住・定住者の受け入れ、研修生の育成、収穫祭や農業体験を組み合わせることで、農産物の価値と地域との接点を高めている。

高齢化や獣害、インフラ老朽化など、万願寺谷の課題は小さくない。それでも地域の農業者が連携し、黒枝豆という具体的な強みを生かして、次世代へ農業をつなぐ仕組みをつくっている。

「旬を閉じ込める」黒枝豆の加工品と、「地域の未来をつなぐ」農業者の連携。農のクリエイティブ万願寺の挑戦は、中山間地域が農業を継承するための一つのモデルになろうとしている。

▼問い合わせ先
株式会社元源
https://www.instagram.com/gengen.831

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