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度重なる大雨・水害・強風から畑を守る! 農家が知っておくべき事前対策と被災後のリカバリー術

度重なる大雨・水害・強風から畑を守る!  農家が知っておくべき事前対策と被災後のリカバリー術

「最近、雨の降り方が以前とは違う」と感じる農家は多いのではないだろうか。実際、気象庁「日本の気候変動2025」によると、短時間に降る豪雨の発生頻度は長期的に増加している。大雨は、単に畑を水浸しにするだけではない。根の酸欠、土壌流亡、肥料成分の流出、病害の発生、果実の裂果や落果を引き起こし、強風を伴えば枝折れや倒木にもつながる。筆者自身も台風の多い沖縄で果樹を育てているが、被害を減らす鍵は災害後の対応ではなく、平時から排水や防風を整えておくことだと感じている。特に豪雨の被害が多い今年、より一層の対策が重要であると痛感している。本記事では、大雨・水害・強風によって畑で何が起こるのかを整理し、事前にできる対策と、被災後に植物を回復させる管理方法について解説する。

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大雨による畑や作物へのダメージ

大雨により植物が水に浸かってしまうと、種類によっては枯れてしまうものがある。特に問題となるのが、長時間にわたって土壌が水で満たされる「冠水」や「湛水」である。

水がたくさんあるのだから、植物にとってはむしろ良いのではないかと思う人もいるかもしれないが、実は植物にとって水は多ければ多いほど良いというものではない。むしろ、土壌中に水が多すぎることで、植物の根は大きなダメージを受けることがある。

根が酸欠によって傷む

大雨による被害を理解する上で、まず知っておきたいのが「根も呼吸している」ということである。
通常の土壌には、土の粒子だけではなく、多数の隙間が存在する。この隙間の一部には水が入り、残りの部分には空気が入っている。

ところが大量の雨が降って土壌が水で満たされると、それまで土の中に存在していた空気が追い出されてしまう。その結果、根の周囲にある酸素が急速に減少し「低酸素状態」になり、さらに深刻になると「無酸素状態」になる。
果樹の根圏が低酸素状態になると、根のエネルギー生産や細胞代謝が阻害され、水や養分の吸収能力、根の水分通導性、光合成など、さまざまな生理機能に影響が及ぶことが知られている。

根が酸欠によって傷んでしまうことで逆に吸水能力が低下し、最悪の場合、枯れてしまうという一見すると不思議な現象が起こることもある。

果樹では根腐れ性病害が発生しやすい

ただし、水に浸かったからといって、すべての植物が同じように傷むわけではない。湛水への耐性には、植物の種類や品種、台木、樹齢、根の状態、土壌温度などによって大きな差がある。

たとえば、水田で育てられるイネのように、根の周囲に酸素が少ない環境へ適応した植物もあれば、水はけの悪い環境を非常に苦手とする植物もある。果樹についても、この低酸素耐性には樹種や台木による違いがあり、耐湿性の高い台木の利用は、水害に強い果樹園を作る上で重要な技術の一つになり得る。

筆者が普段栽培しているアボカドも、特に排水性を意識したい果樹の一つである。アボカドでは、排水不良や過湿条件によって根腐病が問題になりやすい。病原菌である Phytophthora cinnamomi の遊走子は水中を移動できるため、過湿条件は根そのものを弱らせるだけでなく、病原菌が広がりやすい環境まで作ってしまう。

筆者も大雨のあとに、多くの植物を枯らした経験があるが、このように過湿によって根が弱るだけでなく、根腐れ性病害が発生しやすくなるという問題は、アボカド以外の多くの作物でも注意したい。

そのため果樹栽培では、できる限り早く水を排出できるような対策が必要である。

大雨は「土」そのものを畑から奪っていく

大雨による被害は、植物の根だけに起こるわけではない。もう一つ大きな問題となるのが、土壌流亡である。
裸地になった土へ強い雨粒が直接ぶつかると、土壌団粒が壊され、細かくなった土粒子が移動する。さらに細かな土粒子が土壌表面の孔隙をふさぐと、水が地中へ浸透しにくくなり、地表面を流れる水が増える。これによって、さらに土が流されるという悪循環が生まれる。

果樹を育てている場合、傾斜地が多いと思うが、そういったところでは、特に注意が必要である。表土には植物が利用する養分や有機物、土壌生物などが多く存在しているため、表土が流されることは単に「土の量が減る」というだけの問題ではない。何年もかけて育ててきた畑の肥沃な部分そのものを失うことにつながる。

「豪雨+強風」で倒木の危険も

ある台風の日のバナナ園

ある台風の日のバナナ園

さらに、台風のように大雨と強風が同時に発生する場合には、別の問題も起こる。土壌が大量の水を含むと地盤が軟らかくなり、根が樹体を支える力が低下する。大きな樹冠が強風を受けることで、樹体が傾いたり、根元から倒れたりする可能性が高まる。

根こそぎ倒れたグァバの木

根こそぎ倒れたグァバの木

特に、樹冠が大きい木、樹高が高い木、結実量が多い木、若木、根張りが浅い木、以前から傾いている木などは注意したい。果樹を育てる上では、倒伏のおそれがある果樹への支柱設置や、着果した太枝の補強、幼木・若木の固定などは必須である。

このように、大雨による被害は「畑が水浸しになる」だけではない。根の酸欠、根腐れ、土壌流亡、そして強風と組み合わさることによる倒木など、複数の被害が連鎖して起こるのである。

大雨が来る前にやっておくべき対策

1.最優先は「水の出口」を作ること!

排水溝は定期的に清掃する

排水溝は定期的に清掃する

豪雨対策で筆者が最も重要だと考えているのが排水である。
どれだけ土作りにこだわっても、畑の出口にある排水溝が落ち葉や刈草で詰まっていれば、大量の雨が降ったとき水は逃げてくれない。

台風や大雨の予報が出たら、排水溝に土砂がたまっていないか、刈草や落ち葉で出口がふさがれていないか、畑の低い場所に水がたまりやすくなっていないか、畑の外へ水が流れる経路が確保されているかを確認しておきたい。
筆者らの地区では、農家が集まって、農地周辺の排水路や排水溝の清掃を年間2回ほど実施している。排水路の整備は、畑の排水性に関わり、多くの農業者に関わる重要なことなので、このような清掃が定期的に行われていると思うが、こういったところには積極的に参加しよう。

もし、そういったことが実施されていない場合には、勇気を出して周囲の農家さんに声をかけ、清掃などの仕組みを取り入れよう。排水設備は「雨が降る前」に整備するのが鉄則である。

2.水がたまりやすい場所では高畝・高植えを考える

高畝を作って果樹(アボカド)を植える

高畝を作って果樹(アボカド)を植える

毎回同じ場所に水がたまるのであれば、その場所だけ応急処置を繰り返すのではなく、園地そのものの構造を見直した方がよい。

果樹であれば、高畝、高植え、暗渠排水、明渠排水、園地に適切な勾配をつける、縦穴を掘るといった方法が選択肢になる。平地に果樹を植える場合、基本的には緩やかでも畝を設けて、水がたまらないようにする。

水はけの悪い場所に、スポット的に果樹を植える場合は、このようにマウントを作っても良い

水はけの悪い場所に、スポット的に果樹を植える場合は、このようにマウントを作っても良い

縦穴を掘る用のスパイラルボーラー

縦穴を掘る用のスパイラルボーラー

果樹の場合は、時間をかけて根が広い範囲に張るので、きちんと暗渠・明渠排水を入れ、水が畑から抜けるようにして根が水に長時間浸からないような園地にする必要がある。

筆者も苗木を植える際には、その土地で水がたまらないかを意識している。
晴れた日に畑を見るだけでは水の流れはなかなかわからないので、ある程度、雨が降ったあとに「どこから水が来て、どこにたまり、どこへ抜けているのか」を観察する。植え付け前にその畑の状態を調査し、必要な改良を行う。

3.裸地を減らす

土壌流亡対策として非常に有効なのが、土を裸にしないことである。敷草、植物残渣、草生栽培、カバークロップ、もしくはマルチ資材などによって土壌表面を覆うことで、雨粒が直接土へ衝突する力を弱めることができる。

植物の根には土を保持する作用もあり、カバークロップは土壌侵食や表面流出を抑え、長期的には土壌構造や水の浸透性改善にも役立つ。

近年は、大雨による被害も多くなっているため、除草剤を使わずに、草生栽培を積極的に取り入れるところも増えたように感じる。意外と草を生やして農業をすることが利点になるような場合もある。

台湾のパパイア園地では、高畝+マルチ資材を活用していた

台湾のパパイア園地では、高畝+マルチ資材を活用していた

4.若木や着果枝を補強する

若木を植え付ける場合はしっかりと固定する

若木を植え付ける場合はしっかりと固定する

幼木や若木は、まだ根が十分に張っておらず、大雨や強風によって簡単に傾くことがある。
支柱がある場合も、支柱を立てているから大丈夫、と安心せず、支柱そのものがぐらついていないか、結束部分が外れていないか、樹皮へ食い込んでいないかなどを確認したい。

また、果実が多く付いている太枝については、果実の重さと強風が重なることで折れることがある。必要に応じて枝を支柱などで補強しておきたい。

収穫可能な果実については、大きな台風などが来る前に収穫しておくことも重要な対策である。

【注意】大雨が降っている最中は、畑を見に行かない

台風でサトウキビが薙ぎ倒されている様子

台風でサトウキビが薙ぎ倒されている様子

農家であれば、大雨や台風が来たとき、「排水溝が詰まっていないだろうか」「ハウスは大丈夫だろうか」「果樹が倒れていないだろうか」と、どうしても畑のことが気になってしまう。
筆者も沖縄で果樹を栽培しているため、その気持ちはよくわかる。

実際にこれまで、大雨や台風が来た際、畑が心配になり、雨風が少し弱まったタイミングを見て様子を確認しに行ったことが何度かある。しかし、今振り返ると、これは本当に危険な行動だったと感じている。

あるときは、畑へ向かった時点では通ることができた道路が、帰る頃には大雨によって冠水しており、その道を通って帰ることができなくなっていたこともある。結局、大きく迂回して帰宅することになったのだが、雨は降り続いており、「この迂回路まで冠水したらどうしよう」と非常に不安だったことを覚えている。

また別の台風では、「少し風が弱くなったから大丈夫だろう」と畑へ向かったものの、途中から急に雨風が強くなったこともある。車を運転していても前が見えにくく、周囲では木々が大きく揺れ、枝や物が飛んでくる可能性もある。正直なところ、生きた心地がしなかった。

台風や豪雨では、今いる場所の雨風が少し弱まったからといって、安全になったとは限らない。短時間で雨量が増えて道路が冠水したり、水路が増水したり、再び突風が吹いたりする可能性がある。果樹や農業施設はもちろん大切である。しかし、どれだけ大切に育ててきた作物であっても、自分の命より優先するものではない。筆者自身の経験からも、「少し弱まったから見に行こう」という判断はおすすめできない。

心配だからこそ、台風や大雨が来る前に排水路を確認し、支柱を補強し、飛ばされそうなものを片付けておく。そして雨風が強くなったら、あとは安全な場所で待つ。

大雨・台風対策で最も大切なのは、畑を守ること以前に、まず自分自身が無事でいることである。

畑や作物をリカバリー。大雨・水害のあとにやるべきこと

1.まず排水する

冠水している場合、最優先したいのが排水である。

水が自然に抜けない場合は、安全を確保した上で排水ポンプなどを使用することも検討する。根の酸欠によるダメージは湛水時間が長くなるほど大きくなる傾向があるため、可能な範囲で早期排水を目指したい。

2.濡れた畑にすぐトラクターを入れない

水が引くと、すぐに畑を直したくなる。しかし土がまだ過湿状態のときに大型機械を入れると、土壌を踏み固めてしまう。踏圧によって土壌の孔隙が失われれば、せっかく水が引いたにもかかわらず、今度は排水性や通気性の悪い土を作ることになる。

水害後は焦らず、機械が入れる程度まで土壌が乾くのを待つことも重要である。

3.流された土と、堆積した土の両方を見る

洪水では、土が流される場所もあれば、逆に上流から泥や土砂が堆積する場所もある。根が露出している場合には、乾燥や物理的損傷を防ぐため、元の地表面程度まで土を戻す。

一方、幹の周囲や根の上へ大量の泥が堆積した場合は、そのまま厚く残すと根への酸素供給をさらに妨げる可能性があるため、元の地表面を目安に除去する。

4.折れた枝は正しい位置で切り戻す

強風で裂けたり折れたりした枝をそのままにしておくと、傷口が大きくなったり病原菌の侵入口になったりする可能性がある。完全に折れてしまった枝については、枝の付け根にある「ブランチカラー」を傷つけない位置で剪定する。

一方で、「根が傷んだから、地上部も全部小さくしよう」と必要以上の強剪定を行うのも避けたい。まずは折れた枝、裂けた枝、明らかに枯死した枝を整理し、その後の樹勢を観察しながら回復させていく。

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5.水害直後に肥料を大量投入しない

大雨で肥料が流れてしまったと考え、肥料を入れなければと思うかもしれない。しかし、水害直後の根は弱っている可能性が高い。根の量や吸収能力が落ちている状態で通常通り、あるいは通常以上に施肥すると、植物にとってさらに大きな負担になる場合がある。

洪水直後の施肥は急がず、根の回復や土壌・葉の状態を確認してから判断しよう。特に大きな被害を受けた園地では土壌分析を行い、実際の状態を確認した上で肥培管理を組み直したい。

6.水が引いた後こそ「乾燥」に注意する

水害を受けた果樹が、その後の晴天で水切れを起こすことがある。冠水によって細根が傷み、吸水能力が低下しているためだ。

大雨が続いた後だからといって、「しばらく水はいらないだろう」と決めつけてはいけない。土壌が十分に排水された後は、葉の萎れや土壌水分を確認しながら必要に応じてかん水する。とても難しい判断になるかもしれないが、とにかく大雨の後や水害を受けた後などは、日頃よりも注意深くケアをしよう。

海の近くでは「水害+塩害」にも注意

海岸に近い地域では、大雨や強風だけでなく、高潮や潮風による塩害が加わる場合がある。筆者が暮らす沖縄でも、台風通過後の塩害は非常に大きな問題である。

海水を含んだ風雨にさらされた場合、できるだけ早く樹体に付着した塩分を洗い流すことが必須である。

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まとめ

筆者も天気予報を見ていつも手を合わせているが、大雨や台風を止めることはできない。しかし、水の出口を確保する、土を裸地にしない、果樹を支柱で補強する、防風設備を整える、樹高を適切に管理するといった事前の準備によって被害を小さくすることはできる。

筆者自身、台風の多い沖縄で果樹を栽培していると、災害対策とは「台風が来る前日に慌てて行うもの」ではないと強く感じる。排水路の整備や草生管理、防風ネットの設置、風を受けにくい樹形づくりなど、その多くは普段の栽培管理の延長線上にある。災害に強い畑は「災害が来ていない日に作る」ものなのである。

また、災害後の畑には、次の対策につながる多くのヒントが残っている。水がどこから流れ込み、どこにたまったのか、どこで土が流れ、どの方向からの風で被害が出たのかを観察し、次の改善につなげたい。

そして何より大切なのは、人の安全である。どれだけ畑や作物が心配でも、暴風雨の最中には無理に見回りへ行かないこと。作物や施設を守ること以上に、まず自分自身の命を守ることを忘れないでほしい。

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