農業用ハウスで使用している銅線ケーブルが盗まれた
金属窃盗を防ぐ手立ては?

私は農業用ハウスを利用して桃やイチゴを栽培しています。昨年、農業ハウス内の暖房器具や電球に使用している銅線ケーブル約20メートルが切断されて盗まれてしまいました。その犯人はまだ捕まっていません。この事件のあと、自分なりに防犯対策はしていますが、いつまた同じような盗難にあうか不安があります。法律で何かできることはないのでしょうか。
A.盗難被害の発生を防ぐ、新たな法が施行された
今年6月、新しく成立した「金属盗対策法」によって、大きく下記2つの規定が制定されました。同法がどのように被害の抑制に資するかについて、詳しく解説していきます。
①金属の買い取り業者の届出の義務化
②ケーブルカッターなど、金属の切断などに使用できる特定の工具を正当な理由なく所持することの禁止
金属窃盗の増加を受け施行された「金属盗対策法」
銅などの金属価格の高騰を受けて、ここ数年、全国的に銅線ケーブルが盗まれる金属窃盗が増加しています。2024年における金属窃盗の被害額は約140億円にも上り、同年の認知件数は、2020年の約4倍にも達しました。
2026年になってもこの傾向は続いており、例えば静岡県では、県内の金属窃盗の件数が8月末の段階で前年の発生件数をすでに超えています。また、2025年における金属窃盗の認知件数が1118件でワーストであった愛知県でも、9月までの認知件数が去年の同時期と比べて248件増加しています。
このような情勢を受けて2025年6月、金属盗対策法(正式名称:盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律)が成立・公布され、2026年6月1日よりその内容が全面的に施行されています。
金属盗対策法は、後述するように金属の買受業者の届出義務などを定めることで、盗品の流通の適正化を図り、被害の発生を抑えるという仕組みを採用しています。
金属盗対策法の内容
①買受業者の届出義務など
銅などの特定の金属を買い受ける業者は、氏名や住所など一定の事項を都道府県公安委員会に届ける義務が課されており、当該義務に違反した場合には、6月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金が科されることになります。
また、買受業者には特定の金属を買い受ける場合、マイナンバーなどの提示を受けてその相手方の氏名などの本人確認を行う義務があり、本人確認に関する情報を取引の内容とともに記録し、これを保存する義務が課されています。
このほか、もちこまれた特定の金属が盗品であると疑われる場合は、警察に申告する義務があります。加えて、都道府県公安委員会は、上記の義務が適正に履行されているかを調査するなど、一定の場合には、必要な限度で、買受業者に立入検査や資料の提出を求めることができるものとされています。
上記のような義務を買受業者が適切に履行すれば、盗品が持ち込まれることが防止され、ひいては金属窃盗の発生が防止されるものと言えます。金属盗対策法は、そのような効果を狙って、買受業者に上記のような義務を課しています。
②特定の工具の所持の禁止

金属盗対策法では、ケーブルカッターなど、金属の切断などに使用できる特定の工具を正当な理由なく所持することが禁止されており、これに違反した場合、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金が科されることになります。
金属窃盗に必要な特定の道具の所持を一定程度制限することにより、金属窃盗の発生を未然に防ぐことにつながります。また、実際に窃盗の被害が発生する前に犯人を逮捕することも可能となるため、この点からも、被害発生の防止に役立つものと考えられます。
まとめ
金属盗対策法では、主に買受業者に対する規制を強化することで、盗品が流通ルートに入ってこないようにし、間接的に金属窃盗の被害の防止を図っています。従って、同法による対策が実効性を持つためには、買受業者が自己に課された義務を適切に履行することが必要であり、そのためにも都道府県公安委員会による立入検査などの調査がきちんと行われる必要があります。
先ほど例に挙げた愛知県では2026年9月に入って、買受業者に対する立入検査が複数回行われており、盗品の流通を防止するため、今後も引き続き立入検査を継続していくとの報道がなされています。
このように、現在も増加し続けている金属窃盗の被害を防止するためには、生産者である農家、地元の行政、警察などの関係者が一丸となって被害防止に取り組む必要があるでしょう。
弁護士プロフィール
杉本隼与
2003年早稲田大学法学部卒業。2006年に旧司法試験合格(第61期)
2016年東京理科大学イノベーション研究科知的財産戦略専攻卒業 知的財産修士(MIP)
同年に銀座パートナーズ法律事務所を開設し、現在に至る。
銀座パートナーズ法律事務所

















