約30年の歴史に幕。コメ価格下落などを背景に
離農するに当たって気をつけなければならないことは?

私は30年近く、妻とともに個人事業主として稲作を続けていました。近年、猛暑などによって収穫量の減少や等級落ちが発生しやすくなっており、今年は米価の急落もあって、安定した収入を得られないのではないかという不安をここ数年で強く感じるようになりました。加えて、トラクターや田植え機など、老朽化した農機具も整備が必要ですが、そのためには多額の費用がかかります。
そして何より、年齢的に農家を続けていくことは難しいと感じています。子供たちはみな独立しており、後継者もいないことから、今年で離農することにしました。廃業するにあたって、気を付けなければならないことがありましたらご教示いただきたいです。
A.廃業届の提出のほか、農地や農機具の処分の検討を
借入れやローンなどの債務が多い場合、破産手続を申し立てる必要があるため、まずは、現在の財産の状況を確認する必要があります。また、農地や農機具をそのまま放置していると、固定資産税の支払いが増えるなどのデメリットがあるため、農地や農機具の処分などを検討した方が良いと考えられます。
そのほか廃業届の提出など、一定の手続きを行う必要があるため、各市町村にある行政機関である農業委員会に相談した方が良いと考えられます。
離農の手続きと注意点
法律的には前提として、離農のために必ず行わなければならないとされている手続きは存在しません。そのため、端的に言えば、「農業をしなくなれば離農した」といえます。
もっとも、借り入れやローンなどの債務(=支払わなければならないもの)が残っている場合には、離農してもこれらの支払いを継続して行わなければなりません。これらの支払いは、離農してしまった農家には大きな負担となると考えられます。このような負担をさけるためには、破産手続を申し立て、残りの債務の支払いを免除してもらうという方法があります。

注意すべき点として、債務があれば必ず破産手続を申し立てることができるというわけではありません。また、破産手続を申し立てても、必ず債務の支払いが免除されるというわけでもありません。それぞれが認められるためには、法律で一定の条件が課されています。
しかしながら、残っている債務の全額の支払いが困難であるといえる多くの場合では、破産手続の申立てが認められ、かつ、支払いの免除も認められています。そこで、離農を考える際には、残っている債務の金額や預貯金の金額など、現状の財産状況を確認して、破産手続を申し立てる必要があるかどうかを検討した方が良いでしょう。
農地や農機具を処分するべき理由
破産手続の申立てが不要の場合でも、農地や農機具をそのまま保有していると、固定資産税の支払額が増額してしまう可能性があります。通常、農地は宅地などと比べて固定資産税が低く算定されています。
しかし、離農して農地が「遊休農地」に該当してしまうと、固定資産税が約1.8倍となる可能性があります。農機具は保管場所の確保が必要となるうえ、一部には保有し続けると固定資産税が課されるものがあります。
このように、離農後に農地や農機具を保有し続けることは金銭的にマイナスとなる可能性があるため、売却したり、他人に賃貸したり、農機具については破棄するなどの対応を行う必要があります。
なお、農地については、原則として勝手に売却したり転用したりすることができません。農業委員会などの許可が必要となるため、売却などを行うために一定の時間が必要となります。もっとも、現在では、農地中間管理機構(農地バンク)を介した手続きが利用できるため、ある程度短い期間で農地を処分することができます(但し、この方法によると、売買価格が市場価格より低くなる可能性があり、一定の手数料が発生するというデメリットがあります)。
廃業届を提出する必要がある

個人事業主が廃業する場合、税務署に対して廃業届を提出する必要があります。これを提出しないと、税務署から事業を続けていると判断され、税務署から一定の調査を受ける可能性があるからです。また、農業協同組合における組合員の資格の取り消しなど、農業従事者として登録している各種の登録を解除する必要があります。そのため、離農をする際には、まずは、各市町村にある行政機関である農業委員会に相談するとよいでしょう。
本件のポイントを整理
✅離農した後、借り入れやローンなどの債務の残額が多い場合は、破産手続の申立てを検討する。
✅農地と農機具は単に保有しているだけだと、固定資産税の支払いが発生するなどのデメリットが発生するため、その処遇についてきちんと検討する。
✅廃業届の提出など、一定の手続きを行う必要があるため、各市町村にある行政機関である農業委員会に相談する。
弁護士プロフィール
杉本隼与
2003年早稲田大学法学部卒業。2006年に旧司法試験合格(第61期)
2016年東京理科大学イノベーション研究科知的財産戦略専攻卒業 知的財産修士(MIP)
同年に銀座パートナーズ法律事務所を開設し、現在に至る。
銀座パートナーズ法律事務所
















