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生成AIで栽培マニュアルを作成するのは危険!? 情報漏洩と「営業秘密」の法的リスクを弁護士が解説

連載企画:農業法律相談所

生成AIで栽培マニュアルを作成するのは危険!? 情報漏洩と「営業秘密」の法的リスクを弁護士が解説

近年、事務作業の効率化などを目的に、農業現場でも活用が進む「生成AI」。日報や文書の作成などで効果を実感し、「自分たちの頭にある栽培技術やノウハウを、生成AIを使ってマニュアル化したい」と考える方も増えています。
しかし、独自のノウハウや技術情報を生成AIに入力することには、思わぬ「情報漏洩」や「法的リスク」が潜んでいます。父親から「重要な情報をAIに入力して大丈夫なのか」と反対された相談者の事例をもとに、生成AI利用時の注意点と、リスクを回避した生成AIの活用法について、弁護士が分かりやすく解説します。

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生成AIに農家の栽培ノウハウを入力しても大丈夫?

Q. 生成AIで栽培マニュアルを作りたいが、リスクを案じた父から反対されました

私の実家は、父の代から主に玉ねぎを生産している農家です。高い栽培技術を持つ父の玉ねぎは、化学肥料・農薬の使用規制や生産記録の記帳など、県の厳しい基準をクリアして認証を受けており、消費者からも非常に高く評価されています。

父の後を継いで私が就農すると同時に法人化し、販売量の増加に伴って規模を拡大してきました。現在は正社員1名、パート3〜5名を雇用しています。また最近では、生成AIを活用して日報やメールの作成、記録整理などの事務作業を効率化しています。

生成AIによる効率化が非常にうまくいったため、今度は私と父が持つ高い栽培技術やノウハウをまとめたマニュアルを、生成AIを利用して作成しようと考えています。
ところが、その話を父にしたところ「そんな重要な情報を生成AIに入力して大丈夫なのか」と反対されてしまいました。私は大きな問題はないと思っていましたが、父の疑念は正しいのでしょうか。

A. 生成AIに入力した情報は学習データとして使われ、第三者に漏洩したり、法律上の「営業秘密」として保護されなくなるリスクが!

お父さまの懸念は正しいです。生成AIに自社のノウハウや技術情報を入力した場合、その情報がAIの学習に利用され、第三者に公開されてしまったり、法律上の「営業秘密」として保護を受けられなくなる可能性があります。具体的なリスクと対策について解説します。

今さら聞けない、生成AIの仕組みと入力データの扱い

生成AIとは、テキスト、画像、動画、音楽などの新しいコンテンツを自動で生み出す人工知能技術です。大量のデータを学習し、利用者の指示に応じて学習したデータを組み合わせて回答を作成します。

この生成AIが学習に使用するデータは、インターネット上の情報だけでなく、「利用者が生成AIに入力した情報」も含まれるケースが多いのが現状です。つまり、質問者さまが入力した情報が、AIの学習データとしてそのまま取り込まれてしまうリスクがあるというわけです。これによる、質問者さまへのデメリットとしては、大きく分けて以下の2つが挙げられます。

【リスク1】入力したノウハウが第三者に漏洩する危険性

入力した情報が学習データとして利用されると、「他の第三者が生成AIに質問した際の回答」として自社のノウハウが使われてしまう可能性があります。

今回のケースで言えば、ご相談者さまが保有する高い栽培技術やノウハウを生成AIに入力した場合、競合他社などの第三者からの質問に対し、AIがそのノウハウを回答として提示してしまう恐れがあります。その結果、せっかく蓄積してきた貴重な技術やノウハウが外部へ漏洩してしまうというデメリットが生じます。

【リスク2】法律上の「営業秘密」として保護されなくなる可能性

「不正競争防止法」という法律があります。事業者にとって重要な技術情報などのうち、一定の要件を満たすものを「営業秘密」として保護するもので、営業秘密として保護されている情報を第三者が不正に取得・使用した場合は違法となり、刑事罰が科されることもあります。

しかし、「営業秘密」として認められるためには「その情報が一般に知られていないこと(非公知性)」という要件を満たす必要があります。

生成AIに入力した情報が学習データとして使われ、第三者に閲覧可能な状態になると「一般に知られていない」という要件を満たさなくなってしまいます。つまり、これまで慎重に管理してきた独自の栽培技術やノウハウであっても、生成AIに入力したことで「営業秘密」としての法的保護を受けられなくなってしまうおそれがあるのです。

リスクを回避し、生成AIを活用するためには

上記の2つのリスクを回避するには、入力した情報を学習データとして利用されないようにすることによって解消されます。具体的な方法は個別の生成AIによって異なりますが、有料会員登録時や設定画面などで、入力した情報を学習データとして利用されないようにするオプトアウトなどの設定が求められることがほとんどです。例えばGoogleの「Gemini」では管理画面(マイアクティビティ)でアクティビティ設定を「オフ」に変更することで、AIの応答パーソナライズ機能に反映されなくなります。

生成AIに重要なノウハウを入力する際は、必ず事前にこの設定を行うことが不可欠です。

設定後も「営業秘密」のリスクは残る

ただし、入力した情報を学習データとして利用されない設定にしたとしても、それだけで完全に「営業秘密」として保護されるかというと、必ずしもそうとは言えません。

この点については、まだ実務上の判断や裁判例が確定していない部分でもあります。「学習拒否の設定をしていても、クラウド上の生成AIサービスに入力した時点で営業秘密に該当しなくなるリスクがある」という点は、あらかじめ認識しておく必要があります。
 

本件のポイントを整理

✅生成AIに入力した情報は、学習データとして使用されることがある。
✅生成AIに入力した情報を漏洩させないため、及び、法律上「営業秘密」として保護させるためには、入力した情報を学習データとして使用させないように対応することが必要である。
✅入力した情報を学習データとして使用させないように対応したとしても、生成AIに情報を入力してしまうと、法律上の「営業秘密」に該当しなくなる可能性がある。

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