スプーン1杯(約1g)の土の中には、数百万以上、多ければ数億もの微生物が存在しています。大量に捨てられている生ゴミなどの食品廃棄物を堆肥にするシステムが注目を集めていますが、これは土の中にいる微生物の力を利用したものです。
無限の可能性を秘めた微生物に着目し、農業資材として商品化したのが「エコバイオグリーン」です。農薬や化学肥料の使用を抑えながら、農作物を健康に育てられるという微生物の利用について、株式会社エコバイオグリーン代表取締役の鈴木照夫(すずきてるお)さんにお話をうかがいました。
農薬は3割から5割、化学肥料は2割から3割減 農業で大活躍の微生物
――「エコバイオグリーン」とはどのようなものでしょうか。
鈴木さん エコバイオグリーンは、植物の生育に働きかける微生物群を利用し、農作物を健康に育て、収穫量の増加や品質向上を実現する商品です。開発から35年、改良を続けた結果、現在は培養時間が短縮されるなど進化を続けています。顧客には30年以上愛用されているイチゴ農家もいるんですよ。
エコバイオグリーンを使うと微生物が病原菌を抑えたり、発酵を促進し土を作ったりします。そのため、化学肥料の使用量が2割から3割減らせます。農薬に関しては天候や生育環境に左右されますが、上手に活用すれば予防のみの使用となり、3割から5割減らせます。
オーガニックや低農薬の作物が好まれる現代で、農家の負担を増やすことなく農薬量を抑え、おいしい農作物を作ることができます。
写真提供:株式会社エコバイオグリーン
――どんな微生物が農業に有用なのでしょうか。
鈴木さん 当社のエコバイオグリーンは、放線菌、光合成細菌、乳酸菌という3種類の菌をメインに、さまざまな微生物を配合して作っています。
カビなどの病原菌を抑えて病原菌由来の連作障害を予防するためには、放線菌を主に配合。糖度や品質の向上を目指すなら、土壌中の有益な微生物を増殖させる光合成細菌を使います。田畑にすき込んだ緑肥や植物残渣など土壌中の有機物を早期に発酵分解するには、乳酸菌と酵母菌の混合が効果的です。
その他、微生物の配合の仕方によって、農薬や肥料を減らしたり、収穫率や品質を上げたりすることもできます。
農業に有効な微生物として、有機物を最初に分解するのに必要なこうじ菌類や、こうじ菌で分解された有機物をさらに分解する納豆菌、枯草菌、分解された有機物を良質なアミノ酸やホルモン、ビタミンなどに再合成する酵母菌などがあります。
――農業用微生物資材はどのようにして使うのですか。
鈴木さん 例えば、イチゴの育苗時を例にご説明しましょう。まずは培土を整えるため、植え付けの1週間前に、乳酸菌と酵母菌配合の「エコバイオグリーン4号」を潅水し有機物の分解を促進します。
育苗中には生育・発根促進及び病害予防のため、放線菌配合の「エコバイオグリーン2号」と、「エコバイオグリーン4号」を10日置きに潅水します。そして、追肥の打切り時期になったら、花芽分化の促進のため、光合成細菌の入った「エコバイオグリーン3号」を10日おきに潅水します。
イチゴを例にご説明しましたが、他にもキュウリ、トマト、ナス、それからミカンなど常緑果樹、米や花卉類、さらにレタスやブロッコリーなど軟弱野菜まであらゆる農作物に活用可能です。
30年以上の愛用者も「エコバイオグリーン」はイチゴ農家に大人気
──農業用微生物資材はどのような農家で使われていますか?
鈴木さん 一般的に堆肥や有機液肥などは微生物が関与しているので、それを踏まえると多くの農家が微生物を利用した農業資材を活用していることになります。
当社の「エコバイオグリーン」は、施設園芸農家を中心に導入されていて、イチゴ農家が利用者の9割を占めています。
イチゴは食味が命です。特に個人販売の農家であれは「食味の安定」は売り上げを大きく左右します。「エコバイオグリーン」を使えば肥料や農薬が削減できるうえ、食味も良くなるので、“安心”“安全”“おいしさ”を兼ね添えたイチゴを作りたいという農家に人気です。
そのほか、「エコバイオグリーン4号」を使って、ぼかし肥料をつくる農家もいます。ぼかし肥料とは、有機肥料に土やもみ殻を混ぜて発酵させて作る肥料のことです。「エコバイオグリーン」が発酵促進に効果的なんです。
――イチゴ農家からはどんな声が寄せられていますか?
鈴木さん ほとんどの農家が、「作物がおいしくなった」と言ってくださいます。あるイチゴ農家からは、「毎年初物のイチゴしか食べなかった孫が、エコバイオグリーンを使うようになってから、初物以降も『おいしい』と言いながら食べるようになった」という喜びの声をいただきました。
今注目されているのは、有機農法でも使える“微生物農薬”
──今後、どのような微生物資材が注目されると思いますか。
鈴木さん 今注目を集めているのは、病害虫を防除する有用微生物を用いた「微生物農薬」ですね。すでに、微生物が直接関与する農薬と、微生物が生産した副産物を利用した農薬が一部で商品化されています。自然由来のものですから、有機農法でも使えます。
当社の製品と「微生物農薬」を混用することで、相乗効果が得られる資材の開発をしたいと考えています。
微生物農業資材を使うことで、病気になりにくい健康な作物が育つため、農薬の使用量が減らせるといいます。微生物が有機物を分解し肥料化してくれるので、肥料も軽減できます。農薬や肥料を抑えることで、コスト削減につながるのも魅力です。
農薬使用制限により“安心”“安全”が当たり前に求められるようになった今、これに加えて、安定した食味とおいしさ、機能性成分の上昇を実現できる微生物資材に可能性を感じずにいられません。
株式会社エコバイオグリーン
住所:福岡県福岡市中央区小笹1-11-26-305
http://ecobiogreen.main.jp/wp/