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平均年齢71歳、山菜採り名人おばあちゃんによる「あきた森の宅配便」

平均年齢71歳、山菜採り名人おばあちゃんによる「あきた森の宅配便」

「山の名人たちがあなたに代わって山菜を探しに行きます」というコンセプトで行っている、天然山菜採りの代行サービスが注目を浴びています。運営元である「あきた森の宅配便」代表の栗山さんに、”山の名人”こと地元の年配の方々について、サービスの運営方法についてうかがいました。

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平均年齢71歳、山菜採り名人おばあちゃんによる「あきた森の宅配便」

秋田県・小坂町の「あきた森の宅配便」が提供する“天然山菜採り代行サービス”。注文に応じて山菜を採って届けるというこのサービスは、自然と共生する取り組みとして注目を集め、2015年には『グッドライフアワード』で環境大臣賞最優秀賞を受賞しました。

「あきた森の宅配便」の代表取締役であり、“山菜ガール”としてメディアなどでも紹介されている栗山奈津子(くりやまなつこ)さんは、県外で進学、就職したものの、故郷である小坂町にUターンして来たそうです。

今回は、栗山さんに「あきた森の宅配便」設立の経緯や取り組みについてお話をうかがいました。

インターネットなどで注文を受け、地元の山菜採り名人が山に入って収穫

インターネットなどで注文を受け、地元の山菜採り名人が山に入って収穫

──「天然山菜採り代行サービス 〜山のめぐみを、おすそ分けっ! 〜」とは、どのようなサービスですか。
栗山さん
 「山の名人たちがあなたに代わってご希望の山菜を探しに行きます」というコンセプトのもとに行っている、天然山菜採りの代行サービスです。“山の名人”とは、山菜採りを長年やっている地元の年配の方々のこと。現在山の名人は30人。ほとんどが山菜採り歴30年以上の方々で、平均年齢は71歳。「これが生きがい」と言う方もいて、やりがいを感じていただいているようです。

インターネットや電話、ファックスで注文を受けてから、山の名人に山菜の収穫を依頼。その山菜の旬の時期に山に入ってもらい、収穫したものをお客様にお届けするという流れで運営しています。

山菜の採れない冬は、保存しておいた山菜を商品化し、「山菜そばセット」などを販売しています。この地域には、昔から山菜を保存食にする文化もあるのです。

活気を失った故郷を元気にしたいとUターンを決意

活気を失った故郷を元気にしたいとUターンを決意

──「あきた森の宅配便」を始めたきっかけや、事業として成り立つまでの経緯を教えてください。
栗山さん
 幼い頃、祖母に畑や田んぼ、山によく連れて行ってもらっていて、楽しい思い出としてそれがずっと残っていたのです。そこで、祖母が得意とする山菜採りを活かして何かできないかと考え、私が高校生だった11年前に、父や親戚と「あきた森の宅配便」を立ち上げました。

まずは、祖母の周りで昔から山菜採りをしている方や、近くの直売所に山菜を出している方々に声をかけました。

「あきた森の宅配便」を始めたきっかけや、事業として成り立つまでの経緯を教えてください

その後、私は地元を離れて農業大学に進学しました。卒業後は食品会社に入社したのですが、休暇で帰省した時に、住民が減って町の活気がなくなっていることに気がついたのです。大好きな町の活気がなくなっていく様子に焦りを感じ、「自分のできることで、地元に元気を取り戻したい」と一念発起。会社を辞め、本格的に山菜採り代行サービスの事業展開に取り組み始めました。

事業を進めるも、まず苦労したのが集客です。SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を活用したり、ブログの更新頻度をあげたりしていたのですが、反応があまりよくありませんでした。広告費にかける予算はほぼなく、多くの方に認知されるにはどうしたらいいか常に悩んでいました。

そんな時、2015年に環境省の『グッドライフアワード』で環境大臣賞最優秀賞をいただきました。メディアから注目されて認知度が上がり、注文数が受賞前の4倍にまで膨らんだのです。同時に、この事業に興味を持ってくれた方とのつながりも増えたので、新商品の開発や販路の拡大などのお話もいただけるようになりました。

“山からいただいてくるという”感謝の気持ちが根底にある

“山からいただいてくるという”感謝の気持ちが根底にある

──山があってのサービスだと思いますが、環境への配慮という点ではどのようにお考えでしょうか。
栗山さん
 人と自然との共存は難しいテーマです。日本の国土は「人里」「里山」「奥山」に区分されてきたといいます。人が暮らしている「人里」、ある程度、人に管理されている「里山」、人があまり入らない「奥山」。人が山に入ってその境界を作ることで、林道が整備されたり、野生の動物たちが人里に下りるのを防いだりする側面もあります。環境への配慮として山の名人たちは翌年以降のことも考え、生態系に気をつけて山菜を採っています。何より私たちは“山からいただいてくるという”感謝の気持ちを大切にしています。

地元をもっと巻き込んでいきたい。今後の展望

地元をもっと巻き込んでいきたい。今後の展望

──どのようなお客様が利用されるのですか。また、どのようなお声をいただいていますか。
栗山さん
 現在は、飲食店も何店か取り引きさせていただいておりますが、個人のお客様がほとんどです。関東にお住まいの50代以降の方が7割、他にも関西や中部地方からも注文をいただいています。多くの方が私たちの山菜を楽しみにしてくださるのは本当に嬉しい限りです。

お客様からいただくうれしい言葉の中には、山の名人たちのことを気遣ってくださる声も多いです。中でも、印象に残っているのは、「このサービスを利用して、山や山菜のことを教えてくれた自分のひいおばあちゃんのことを思い出しました。おいしい山菜とともに、かけがえのない思い出もよみがえりました」というお手紙を受け取ったことですね。

──今後の展望や目標を教えてください。
栗山さん
 山の名人たちを含め、地元の方々をもっと巻き込んで町を元気にしていきたいです。そのためにも通年を通した事業が必要で、今後は常温商品などの加工品にももっと力を入れたいと考えています。秋田の魅力を、よりたくさんの方に知ってもらいたいです。

小坂町の方にとって、採れたての山菜はいつも日常にあるもの。しかし、都会の方たちにとっては贅沢品です。そこに目を付けたのが「あきた森の宅配便」。農業に携わる方々の身近なところにも、町の活性化につながるチャンスがあるかもしれません。

※写真提供:あきた森の宅配便

あきた森の宅配便
住所:秋田県鹿角郡小坂町小坂字中前田36
電話:0186-29-3003

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