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ビールの“中身”を見せてください vol.1:【準備編】国産麦の基礎知識

ビールの“中身”を見せてください  vol.1:【準備編】国産麦の基礎知識

コンビニやスーパーで手軽に購入できるビールですが、その1本1本が手塩にかけて育てられた原料をもとにできています。この企画では、ビールの“中身”を探っていきたいと思います。第一回は、まず準備編としてビールに欠かせない「麦」について学んでみたいと思います。今回はその中でも貴重な存在である「国産麦」を中心に掘り下げます。

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コンビニやスーパーで手軽に購入できるビールですが、その1本1本が手塩にかけて育てられた原料をもとにできています。では、ビールの原料はどこでどのように生まれ育っているのでしょうか。この企画では、ビールの“中身”を探っていきたいと思います。第一回は、まず準備編としてビールに欠かせない「麦」について学んでみたいと思います。今回はその中でも貴重な存在である「国産麦」を中心に掘り下げます。

ビールに使う「麦」の種類とは

ビールの原料となる麦の多くは「大麦」です。その他に「小麦」、「ライ麦」、変わったところでは「古代麦(スペルト小麦など)」を使うものもあります。また、副原料として「大麦」などの他に「オーツ麦」などを使う場合もあります。

「大麦」には「六条大麦」と「二条大麦」の2種類があります。このうち、ビールに使われているのは主に二条大麦です。これは麦粒が二列に実り、大粒ででんぷんが多く、たんぱく質が少なくて殻皮が薄いのが特長です。別名「ビール麦」とも呼ばれています。ちなみに、六条大麦は麦茶によく使われています。

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麦とビールの歴史

麦の歴史は、紀元前7000年頃に定住農耕として北メソポタミア(現在のイラク周辺)で栽培が始まったといわれています。遺跡からも当時の二条大麦が発見されています。

そして、紀元前3000年頃の粘土板「モニュマン・ブルー(醸造の記念碑)」には、シュメール人によってビール醸造の記録が残されています。そこには、『麦を発芽させて麦芽を作り、それを乾燥させて粉にしたものでバッピル(ビールブレッド)を焼き、そのパンを砕いて水を加えて液体にする。その液体に野生酵母を加えて自然に発酵させる』という製法が刻まれています。

こうして太古から麦は人類の糧として存在し、その麦からビールが造られていたのです。現在はビールを造るためにパンを焼くことはありませんが、原料となる大麦を水につけて麦芽を作り、それを乾燥・焙燥してビールの仕込みに使うという方法は変わっていません。

ビールに使われる国産麦の割合

1960年代までは、日本のビールは国産大麦100%で賄っていました。しかし、その後ビールの消費量が増えたり、麦芽輸入の自由化が始まったりしたことによって、現在のビールに使われている麦のほとんどは輸入されるようになりました。現状、国産大麦の使用は日本のビール生産量全体の1割程度まで下がっていますが、ここ数年、国産原料にこだわるビールが続々と登場し、新たな注目を集めています。

左側:PolarStar、右側:はるな二条といういずれも国産麦の品種

ビールに使用される国産麦の生産地

2016年産の二条大麦収穫量10万5,400トンを生産地別に順位づけると、第1位は栃木県の3万3,500トン(32%)、第2位は佐賀県の2万4,500トン(23%)、第3位は福岡県で1万4,000トン(13%)でした。さらに、北海道が6,680トン(6%)、岡山県が5,930トン(6%)と続きます。

農林水産省HP 作物統計「平成28年産4麦の収穫量」 ※醸造用以外も含む ※北海道は全域ではなく、一部のエリアで収穫されている

国産麦の栽培スケジュール

北海道は春まき、本州以西は秋まきで栽培します。

秋まきの場合は、11月に種まきが行われ、発芽後2ヶ月ほどで麦踏(むぎふみ)が行われます。この麦踏は、春先まで2〜3回ほど実施されます。その後、4月に穂が出始めたら、およそ1ヶ月半程度で収穫となります。

秋まきのメリットは梅雨前に収穫が完了できることです。麦は濡れてしまうと使いものにならなくなるため、新たな品種改良をするときも、収穫時期をなるべく早くすることも重要となっています。

上富良野の麦畑

国産麦と輸入麦の違い

では、国産麦と輸入麦ではどのような違いがあるのでしょう。

ビールメーカー各社にアンケートを行ったところ、国産大麦のメリットとしては、外国産に比べると高タンパクで、アミノ酸が豊富なため、麦の旨みがより豊かに感じられるとのことです。しかし、輸入麦芽と比較すると価格が割高なのが残念な点であるとの意見が多くありました。

サッポロビール株式会社の保木健宏(ほうきたけひろ)さんは「国産大麦のメリットは、特にエキス含量が高く、品質は輸入麦芽と比較しても良好なところです。また、産地とより緊密な連携を取れる点も良いところですね」とおっしゃっています。

もっと原料に向き合う、畑に密接なビールも

最近では、原料として麦を仕入れるだけではなく、もっと原料と向きあってビール造りをするブルワリーがいくつも存在しています。

例えば、大手メーカーの中ではサッポロビール株式会社。小規模ブルワリーの中では、埼玉にある麦雑穀工房マイクロブルワリーです。

サッポロビールは、社内に“フィールドマン”と呼ばれる国内外の農家と直接コミュニケーションをとるメンバーを揃え、現場に何度も足を運びながら、共により良い原料を育成する「協働契約栽培」を実施しています。同社は、麦の品種開発も行う国内唯一のビールメーカーでもあります。

麦雑穀工房マイクロブルワリーは、自給自足で原料を育てる畑をブルワリー周辺に持ち、有機農法による大麦、小麦、ライ麦などの栽培やアワやキビなどの雑穀、副原料となるヤマモモなどを育てています。

麦雑穀工房の馬場さんと焙燥機 (麦芽を作る際、発芽した時点で進行を止めるために加熱して乾燥させるために作ったお手製の機械)

こんなにある!国産大麦が使われる主な大手ビール

サッポロビールは、北海道限定発売の『サッポロ生ビール黒ラベルThe 北海道』に北海道産(オホーツクエリアと富良野)の大麦麦芽と富良野産ホップを使用するほか、こちらも北海道限定発売となりますが『北海道生搾り』にも北海道産大麦麦芽と富良野産ホップ一部使用しています。北海道を訪れた際には、ぜひ味わいたいものです。また、セブンプレミアム限定の『和の逸品』にも国産原料を100%使用しています。

キリンビールは、『グランドキリンJPL』に国産大麦麦芽が使用されています。また、各地のビールとして話題の『47都道府県一番搾り』のうち、『栃木づくり』、『群馬づくり』、『京都づくり』、『滋賀づくり』、『島根づくり』、『鳥取づくり』、『山口づくり』、『佐賀づくり』、『福岡づくり』、『大分づくり』で、各県産大麦麦芽を味覚に合わせた比率で使用しています。特に『福岡づくり』は福岡県産大麦麦芽を100%使用しています。それぞれの味わいの違いを比較してみるのも面白いですね。

アサヒビールは、『クリアアサヒ プライムリッチ』に国産ゴールデン麦芽を一部使用しています。また、ギフト限定醸造の『スーパードライ ジャパンスペシャル』は、麦芽、希少ホップ、高級米いずれも国産原料が100%使用されているそうです。特別な方へのプレゼントとして選びたくなる内容です。

国産麦を使用したビールはますます話題を集めていく

今回は大手メーカーを中心に国産麦を使用したビールを紹介しましたが。まだまだ全体から見れば希少な国産麦使用のビールですが、麦はもちろん、それ以外でも国産原料への期待は高まりつつあります。この記事をきっかけに、普段飲んでいるビールの原料に興味を持っていただけたら幸いです。

取材協力:(敬称略・アイウエオ順)

アサヒビール株式会社、キリンビール株式会社、サッポロビール株式会社、麦雑穀工房マイクロブルワリー

編集:ビール女子編集部

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