現在私たちが利用している暦は、グレゴリオ暦(太陽暦)といいます。
これはローマで生まれた暦です。
日本で採用されるようになったのは1873年のこと。
まだ150年ほどしか経っていません。
それ以前には、どのような暦を利用していたのでしょうか。
中国で生まれた暦の利用
グレゴリオ暦を採用する前には、古代中国に起源をもつ二十四節気・七十二候を使っていました。
二十四節気は農業や漁の目安として非常に便利な暦です。
この二十四節気をさらに5日ずつの3つに分けたものが七十二候とされています。
七十二候が日本に伝わったのが6世紀頃といわれています。
長く日本でも親しまれていた七十二候のうち、「涼風至(すずかぜいたる)」をご紹介します。
涼風至の由来
読み方は「すずかぜいたる」もしくは「りょうふういたる」となっています。
時期は8月7日から12日頃の5日間です。
二十四節気では立秋となり、涼風至は、その立秋の初候にあたります。
「涼風」というのは俳句の上では夏の季語です。
涼しい風が吹き始める時期、ということで、暑いからこそ涼しさを感じることができるからといえます。
しかし、暦の上では秋の始まり。
昼間はまだまだ真夏のように感じられる時ですが、朝夕の風に秋の気配が混ざり始める頃です。
この頃から、夜の訪れが少しずつ早くなってきます。
この時期の旬の食材
この時期はまだまだ暑いので、冷たいものが欲しくなる時です。
しかし季節の変わり目のため、夏バテしないように食べ物を切り替えていくと良い頃です。
「涼風至」の時期は目立った旬の食材はありません。
この頃から、カボスやトウガン、モモ、イチジク等のこれから旬をむかえる食べ物が並び始めます。
魚介類ではスズキやコチなどが旬を迎えます。
現在は季節を問わず手に入れることができる「ナス」ですが、本来は夏から初秋にかけてが旬です。
紫色の皮に強い抗酸化作用をもつ成分が含まれているため、できるだけ皮ごとの調理をし、食べることで体調を整えたいものです。
体内の熱を冷ます効果もあるので、まだまだ暑いこの時期の食卓に欠かせない食材ですね。
この他にも、夏が旬の野菜は水分やカリウムを豊富に含んでいます。暦の上で秋になっても、気温に合わせて上手に夏野菜を摂りましょう。
枝豆も夏野菜なのですが、他の野菜と違い植物性タンパクが豊富です。残暑で汗をかいて疲れた体にとてもよい食材の一つです。
最近は冷凍枝豆があり、いつでも手に入る食材ですが、ぜひこの残暑の時期に収穫される生の枝豆を茹でて食べてみてください。
冷凍されたものよりうま味が濃く、甘みもあっておいしいことに気づかれるかと思います。
その後に出てくる秋野菜の中心は、根菜や芋類です。
豊富な栄養から、夏の疲れをとり、体を温める効果が高い食材とされています。
秋は夏から冬への体の状態を調整する季節ともいえます。
1日のうちで気温の差も出てくる時期なので、朝、夜は体を温める食材、昼は体を冷やす食材を取り入れるなど、1日の献立で工夫をしてみるのも良いのではないでしょうか。
この時期の草花
この時期の草花といえば、なでしこ(撫子)、きょうちくとう(夾竹桃)などが有名です。
なでしこは秋の七草なのですが、咲き始めは初夏で、俳句の上でも夏の季語となっています。
在来種は「大和撫子」や「河原撫子」と呼ばれ親しまれています。
きょうちくとうは夏の高校野球大会の開催時に咲き誇っているため、「甲子園の花」というイメージも強いかもしれませんね。
その他、みずひきや睡蓮、ひまわり、グラジオラスなどが季節の草花です。
咲いているのを見かけたら、季節を感じてみてくださいね。
この時期の行事
この時期になると、全国で様々なお祭りが開催されます。
青森県の「青森ねぶた祭り」、宮城県の「仙台七夕まつり」、高知県の「よさこい祭り」、徳島県の「阿波踊り」など、有名なお祭りがたくさんあります。
規模の大きなお祭りはたくさんの人が集まりますので、夏の締めくくりの一大イベントとして、旅行も兼ねて参加してみるのはいかがでしょうか。
全国的に有名なお祭りには地方からもツアーが組まれており、とても参加しやすくなっています。
この時期に休暇が取れたら、ぜひ参加してお祭りの盛り上がりを肌で感じてみるのも、季節を感じる一環となるでしょう
お祭り後は、時間が許せば、その地域を少し散策してみるのもおすすめです。
地域によって食べ物や草花、気温も違いますので、日本の中でもそれぞれの地域の趣を知ることができます。
また、この時期は、県内や町内など地元でのお祭りも多い時期ではないでしょうか。
大きなお祭りに参加しない場合でも、地元の花火大会等のお祭りに参加することで季節を感じることができます。
花火大会には、浴衣を着ることもあるかと思います。
今は季節感を感じさせない柄を使った、新しい趣の浴衣もたくさん登場していますので、自分の好きな柄の浴衣を選んで楽しむことも素敵です。
昔から、着物や浴衣の柄は季節を表すものとされていました。
秋の代表柄といえば「秋の七草」や「トンボ」の柄。
また、柄だけでなく浴衣の色や小物でも秋の気配を演出することができます。
お手持ちの浴衣の柄とは違う柄を探していたり、これから浴衣を選んだりされる方は、ひと足はやく秋の演出を取り入れてみてはいかがでしょうか。
秋の始まりを楽しみながら、体調を整える準備をしよう
次の七十二候である「寒蝉鳴(ひぐらしなく)」の頃になるとお盆の時期で、京都府の「京都五山送り火」、奈良県の「大文字送り火」など、より秋の季節を感じさせる行事がありますね。
その頃からは昼の気温が変わらずとも、グッと夜の涼しさが際立つようになってきます。
鈴虫やコオロギの鳴き声も聞こえるようになってきて、本格的な秋の訪れを楽しむことができます。
「涼風至」の時期は、夏の最後と秋の始まりを楽しむと思って、活動的に過ごしましょう。
また、真夏に疲れた体調を整え始める準備をして、これからの健康にもじゅうぶん配慮していきたいものですね。
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