ヘッドマウントディスプレイを装着すると、現実かと見間違うような、臨場感あふれる世界が目の前に広がるVR(バーチャルリアリティ)。ゲームで使われるだけでなく、スポーツやツーリズムなど、さまざまな分野で活用され始めています。
そんなVRを農業と結びつけたのが、居酒屋「塚田農場」を運営する、株式会社エー・ピーカンパニーです。同社は、農場を疑似体験できるVRを、2017年7月より、アルバイト従業員の研修プログラムに採用しました。
6次産業のビジネスモデルと食材への理解を深める
「生産者とお客様をつなぐ居酒屋」塚田農場は、全国各地に自社養鶏場を所有し、生産から販売までを行う6次産業の企業です。周辺の農家と直接提携しており、“生産者の思いがつまった食材を届ける”ということを大切にしています。食材のバックグラウンドを来店したお客さんに伝える役目が、店舗の従業員で、その多くがアルバイト従業員です。
そこで同社は、アルバイト従業員に対して、ビジネスモデルの理解を深め、食材や生産者のことをよく知るために、VRによる研修を行うことを決定したのです。
養鶏場の様子から加工される現場もVRで擬似体験
これまでにも社員向けに、宮崎県や鹿児島県などの現地で養鶏業や加工業を見学する研修を行ってきたという同社。その現地研修をベースに、VR研修でも地鶏農家の鶏舎や、ひよこがいる“ひなセンター”の様子などを、リアリティあふれる動画と音声で擬似体験できるそうです。VR研修の中には、加工センターで鶏に血抜きの処理を行う、“放血”の工程も、担当職員の目線カメラでおさめられていて、“生き物から食べ物になる瞬間”についても、疑似体験しながら知ることができるといいます。
記憶に刻まれる研修に
現地研修を行うことは、会社のビジネスの方針や、現場のことを社員が理解するためには欠かせないことですが、時間も費用もかかります。そのような研修をアルバイト従業員に行うことは、企業にとって簡単なことではありません。
しかし、VRを利用すれば、場所を選ばずに研修を行うことができます。しかも、自分がその現場にいるような臨場感を感じられるVRによる研修であれば、ビデオ研修よりも、より実体験に近い感覚で、研修を受けた人の記憶に刻まれると考えられます。
このVR研修を行う対象者は、全国に約200の店舗を持つ、塚田農場のアルバイト従業員約5,000人。消費者に“素材の価値”を伝える役割を担っていることを、アルバイト従業員に認識してもらうことを狙いとしているそうです。
株式会社エー・ピーカンパニー
http://www.apcompany.jp/