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マイナススタートを乗り越えるために。

弘前の未来を担うリンゴ農園に。
マイナススタートを乗り越えるために。

弘前の未来を担うリンゴ農園に。<br/>マイナススタートを乗り越えるために。

森山さんが考える、リンゴ農家の未来について、全3回お送りします。第3回では、剪定枝(せんていし)を利用した取り組みに加えて、森山さんがリンゴ農園にこだわる思いをお届けします。

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日本のリンゴ生産方法発祥の地で知られる青森県弘前市。その地で先祖代々続くリンゴ農園を経営する森山聡彦(もりやまとしひこ)さん。リンゴの生産プロセスを可視化するためのツール「ADAM(アダム)」の開発や、加工専売品の生産に取り組んでいます。森山さんが考える、リンゴ農家の未来について、全3回お送りします。第3回では、剪定枝(せんていし)を利用した取り組みに加えて、森山さんがリンゴ農園にこだわる思いをお届けします。

販路・出口が肝となる

生産プロセスを省力化すると共に大切なのが、販路の開拓です。通販で直接お客様と取り引きしながら、展示会や見本市に積極的に出ています。自分たちの思いやこだわりを伝えたり、実際に食べてもらえる機会はどんどん増やしています。もりやま園はなんか面白そうだということを伝えていきたいです。

消費者とも積極的にコミュニケーションをとって、リンゴ農園の実情をしっかりと伝えたいです。世の中には価格がとても安いリンゴジュースなども出回っています。ほとんどの場合、そのリンゴジュースを買うことが、農家の売上につながるわけではありません。農家が赤字を背負って仕方なく売っているから、安く買えるのです。そんな状態が続いたら、日本のリンゴづくりはいつか終わりが来てしまいます。

おいしいリンゴを作るのは当然のことですが、それだけでなく環境にやさしい作り方をしている、おいしいリンゴができる仕組みがある、持続可能な方法で生産しているとか、そういう点でも価値を認めてもらえるように、これからも努力を続けていきたいです。

剪定枝を使ったきのこの取り組み

加工品を作るのとはまた違った取り組みとして、剪定枝(せんていし)を使ったキノコ栽培の実証実験を始めました。剪定枝は、毎年1月頃から行う余分な枝を切る作業です。もりやま園では、切った枝は37トンほどの膨大な量になるので放置はできません。ひたすら燃やすのですが、その作業が無駄なコストにしかならないことに虚しさを感じたスタッフが剪定枝を有効に使う方法がないかを考え、キノコ栽培が適しているという結論に至りました。

剪定枝を使ったキノコ栽培自体は目新しいものではありませんが、菌床にもりやま園のシードル工場から出るリンゴの搾りかすを混ぜることで、より栄養価の高いキノコを栽培できます。さらに、うま味成分たっぷりの廃菌床を堆肥として畑に戻すことで、リンゴの味にも還元できると考えています。無駄を減らし、価値が循環する良い取り組みになると考えています。

キノコがうまくいけば、剪定枝の段階である程度の利益が見込めます。自社のリンゴ酒「テキカカシードル」の開発と販売が順調にいけば、摘果の段階でも、ある程度の利益が見込めます。リンゴを出荷する以外にもお金が生まれる仕組みを作ることで、経営を安定させたいと考えています。

リンゴ畑が弘前の未来を拓く

私がリンゴの生産を効率化して、しっかりと利益がえられるものにしたいと考える根底には「弘前市を、都会の人がうらやましいと思うようないい場所にしたい」という気持ちがあります。

弘前市は雪国です。冬に雪が積もると会社に出社しても、すぐに事務所に入れません。30分、1時間と時間をかけて除雪をしてから1日の仕事が始まります。言ってしまえば、都会の人と比べたらマイナスからスタートする場所なんです。

私が学生時代から10年以上打ち込んだ自転車のレースでは、トップ選手は最初からスタートできますが、下位選手は遅れてのスタートになります。その状況が弘前市と似ていると感じます。マイナススタートは悔しい。いつか弘前市を都会にしたい。そんな思いがあります。

しかし、現実は厳しく、弘前市の人口はどんどん減っています。それを防ぐために、リンゴ農家は大きな役割を背負っています。弘前市の面積の16%以上はリンゴ畑で、弘前大学の研究によると、1つのリンゴ農家が廃業すると8名の人口流出につながるそうです。逆に、リンゴ農家の経営が安定すれば、人が集まってくると考えています。だからこそ、私はこれまでのリンゴの生産プロセスを見直し、しっかりと儲かる仕組みを作りたいのです。

弘前が盛り上がり、子どもの世代にまでしっかりと続いていくように、今できることをしっかりとやりたいと考えています。

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