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子育てしながら畑はできる。無農薬のおいしい野菜にかける想い。

子育てしながら畑はできる。無農薬のおいしい野菜にかける想い。

奈良県で子育てをしながら無農薬にこだわった野菜づくりに取り組む下川麻紀(しもかわまき)さん。無農薬野菜にこだわるきっかけになったわが子の一言とは。未経験にもかかわらず、子育てをしながら農業を始めた先輩のストーリーをお届けします。

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奈良県で子育てをしながら無農薬にこだわった野菜づくりに取り組む下川麻紀(しもかわまき)さん。無農薬野菜にこだわるきっかけになったわが子の一言とは。未経験にもかかわらず、子育てをしながら農業を始めた先輩のストーリーをお届けします。

白ニンジンを間引く下川さん

下川麻紀さん略歴

・愛媛出身

・大阪・奈良でWEB関連の事務仕事をする

・結婚相手の実家にて2009年から農業を始める

無農薬と減化学肥料にこだわった野菜

奈良県山辺郡山添村の大和高原で、農薬を使わない野菜を作っています。イタリアン野菜や大和野菜などを中心に約25品種を育て、冬にはレンコン堀り体験も実施しています。

私の農場は、子どもから大人まで安心して食べられる無農薬野菜にこだわっています。子育てをしながら家族で運営しているため、規模は大きくありませんが、母親目線で安心・安全な野菜づくりをこころがけています。

家庭菜園の手伝いからスタート

私が農業を始めたきっかけは、嫁ぎ先の両親が家庭菜園をやっていたことです。義理の両親は高齢で、畑を引退することを考え始めていました。そこで私が畑を手伝うようになり、自家消費を目的に野菜を育てはじめました。それまでは一切農業経験がありませんでした。やっていたことと言えば、植木鉢に花を植えたりする程度でした。

それでも、野菜を作り始めて少しした頃、私が育てた野菜をわが子が食べて「ママの野菜は世界一おいしいね」と言ってくれました。それがとてもうれしくて、野菜づくりにのめり込みました。

一方で、私が作ったトマトを子どもが手にしたとき「自然に子どもが口にする野菜に、農薬がかかってていいの?」かと疑問を持ちました。農薬を撒いてから数日経てば問題なくなるとはいえ、撒きたてのときに子どもが間違って食べてしまうかもしれません。せめて、家族には自分が育てた安心なものを食べてほしい。そんな思いから、無農薬農法にこだわるようになりました。

子どもや義理の両親の世話をしながら働ける仕事を探しているときだったので、せっかくなら野菜づくりを商売にしようと思い、自家消費だけでなく出荷もすることに決めました。まずは、青年就農給付金という制度を使って2年間農業大学校に通い、種の植え方など農業の基礎を教わりました。農作業自体は一人ですることが多かったのですが、家族や夫が手助けしてくれたから、色々と挑戦することができました。

商売として成り立たせるために

農園を本格的にスタートし、1年目はインゲンを農協に出荷しました。しかし、私の育て方があまり良くなかったのか、思っていた以上に売上になりませんでした。いくら出荷しても週に2,000円程度にしかならず、商売になりません。私が住む山辺村は、気候的に他の地域と微妙に旬がずれることや、一般的に売られている野菜では他の農家の野菜と差別化ができず、売れにくいというのもありました。「作って売ったら商売になるだろう」と甘く考えていたことを反省しました。

きちんと収入につながる野菜を作りたいと思い、育てる野菜の種類を見直しました。何を作ればいいか調査をする中で、農業大学校時代の仲間の畑を見に行くことがありました。そこで、カルチャーショックを受けました。冬にもかかわらず、まるで夏のように畑中に野菜が実っていたんです。しかも、見たこともないような赤いレタスやチコリーなどの西洋野菜が一面に広がっていて、その色合いもすごく綺麗でした。私の畑には雪が積もっていて、玉ねぎくらいしかない寂しい光景だったのに。見ているだけで楽しくなる農園で「これだ」と確信し、西洋野菜を作ることに決めました。本格的に農業を始めて3年目になった時期です。

天の慶事を受けたようにはりきって西洋野菜の種をまきましたが、農薬を使わないと虫に食べられてしまうという事実は変わらず、市場に出せるクオリティのものを安定して生産するまでには至りませんでした。そこで、ナス、トマト、ししとう、ピーマンなど、虫に強い野菜に生産を絞りました。また、冬に収穫できるのであれば1年を通して生産・出荷できるという発想で、冬野菜のレンコンを育てはじめました。レンコンは比較的高値で売れるので、収入に繋がりやすい点も魅力でした。

今では、レンコンが私の農園の顔になっています。畑には鶏糞や油かすなどの有機肥料を使用しており、農薬だけでなく、化学肥料の完全不使用を目指して日々奮闘中です。

野菜作りを通して描く夢

農協だけでなく、市場にも自分の野菜を出荷するようになってからは、お客さんの生の声に勇気づけられるようになりました。以前は、自分の作っている野菜の味に自信がなかったのですが、お客様に直接「おいしかった」と言われて、自分のやり方は間違っていなかったのだと小さな確信を得られました。

私の農園は小規模で、大手の農園のような知名度もありません。スーパーに出荷するほど大規模には作りません。だからこそ、お客さんに直接販売して、自分の思いを届けることができるのはうれしいですね。収入がすごく多いわけではないけれど、やりがいを感じる瞬間がいくつもあります。

これからは、新たにアボカド作りにも挑戦しようと考えています。さらに、農園の顔であるレンコンの生産はもっと増やしていきたいですね。山添村といえばお茶が特産品ですが、レンコンの産地としても有名にしていきたいです。また、農業を通して人と密な繋がりを築いていきたいと思っているので、様々な野菜の収穫体験イベントを開催していくつもりです。小規模な農園にしかできない温かな雰囲気でやっていければと思います。

今後は活動を通して、特に子どもがいる女性に新しく農業を始める楽しさを伝えたいです。私自身最初は2歳の子どもをおぶって畑を耕しました。子育てをしながらで大変でしたが、それでも農業をやりたかったので苦ではありませんでした。新しいことを始めることは楽しいので、最初から「これはしちゃだめ」「無理だ」と枠を作らずにやってほしいと思います。私の場合、夫の手助けもあり、これまで頑張ることができました。

将来的には、得意なお菓子作りを生かして、自分の野菜を使ったスイーツを提供するカフェを開きたいという夢があるので、これからも頑張っていきたいと思います。

 

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