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競りがこだわりの野菜を支える【市場に行こう!鎌倉青果地方卸売市場】

競りがこだわりの野菜を支える【市場に行こう!鎌倉青果地方卸売市場】

鎌倉青果市場では毎朝、農家がその日の朝に収穫したばかりの野菜を競り(せり)で取り引きしています。「すべての青果を競りで取引する市場は、今ではうちぐらいではないでしょうか」と鎌倉青果株式会社代表の高橋さんは言います。なぜ競りを続けるのか、その理由を聞きました。

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競りがこだわりの野菜を支える【市場に行こう!鎌倉青果地方卸売市場】

神奈川県鎌倉市梶原にある鎌倉青果地方卸売市場(以下、鎌倉青果市場)は、近隣農家の青果をメーンとして扱っています。この市場の特徴は、青果が「競り(せり)」で取り引きされていること。昨今の青果市場の中でも、入荷した野菜をすべて競売している市場はここくらいだとか。なぜ競りを続けるのか。そこには鎌倉という土地柄と、こだわりの農家の存在が関係しているようです。市場を運営する鎌倉青果株式会社代表、高橋伸行(たかはし のぶゆき)さんにお話をうかがいました。

関連記事:市場が取り組む野菜のブランド化【市場に行こう!鎌倉青果地方卸売市場】

鎌倉青果市場での活気ある競りの現場

鎌倉青果市場では毎朝7時30分になると、近隣農家や八百屋が参加する競りが行われています。競りを仕切る「競り人」は、前日の店頭での売値はもちろん、その日の野菜のでき具合や入荷量、天気(その日、店頭で売れるかどうか)などを総合的に判断し、競りを進めていきます。八百屋で前日によく売れた野菜ほど、競りで高値がつくそうです。

「競りは、符丁(ふちょう)と言う専門用語でやり取りしています。100円、50円、とは言いにくいですし、聞き間違いも起きます。100円は『あたり』と言うのですが、わかりやすいし、早く伝わります」と高橋さん。

鎌倉青果市場での活気ある競りの現場

「売れ筋の野菜だからといって、どんどん値を高く釣り上げていけばよいというわけではありません。タイミングを見計らって競りを区切って、程よい値をつけることも大切です。農家とも、八百屋とも長い付き合いですから、信頼関係が何よりも大事なのです」

鎌倉青果市場での活気ある競りの現場

鎌倉青果市場で競りを行う理由

鎌倉青果市場の歴史は、明治後期にまでさかのぼります。青果を扱う人たちが共同の荷捌所を作ったことがその始まり。以来、鎌倉の地で青果の流通を担ってきましたが、状況は大きく変化してきました。

「昔は、野菜は八百屋で買っていましたが、今はスーパーで買うことが一般的になりました。スーパーは毎日大量の野菜を扱いますから、万一、競りに負けて仕入れが上手くいかなかったら大変です。だから競りで野菜を仕入れるのではなく、相対取引(その日の相場で価格を決めた取引)が主流です」

しかし、鎌倉青果市場では毎朝、農家がその日の朝に収穫したばかりの野菜を競りで取り引きしています。「競りをやっている市場は、今ではうちぐらいではないでしょうか」と高橋さん。ここに野菜を持ち込む農家は、自分の野菜にいくらの値がつくのかを確認しています。そのため、味や鮮度にこだわり、常にいい野菜を作ろうと取り組んでいるのです。

こだわりの新鮮な野菜が市場に集まる

こだわりの新鮮な野菜が市場に集まる

「鎌倉青果市場に野菜を持ちこむ農家は個人経営で、規模は大きくないのですが旬の露地野菜づくりにこだわっている農家ばかりです。しかも車で30分程度の距離にある農家で作られたものがほとんどです。例えばトウモロコシは、鮮度を維持するために枝につけたまま市場まで運ばれます。しかし、枝付きのまま遠くから大量に運ぶとなると、輸送コストがかかってしまいますから、スーパーではそうはいきません。近隣農家の持ち込みだからこそ、新鮮な朝採り野菜を提供できるのです」

「我々が扱う野菜は、トマト、ホウレン草、ナスなど、どれも一般的な野菜ばかりです。京野菜のように珍しい野菜があるわけではありません。それに、朝採りや有機栽培といっても、見た目だけでは区別が付きにくいのです。普通の野菜だけど、この農家はこう育てている、こんな工夫をしているなど、一つ一つの野菜にストーリーがあります。それを目の肥えたプロたちが選び抜いて、消費者に提供していく。本来、市場にはそんな役割があるのです」

鎌倉の住民に求められる高品質な野菜、それを作る農家

鎌倉の住民に求められる高品質な野菜、それを作る農家

高橋さんは、「鎌倉だからこそ、こだわりの野菜の価値が理解される」といいます。

鎌倉は、古くから作家や文化人などが好んで住む町として知られています。彼らはこだわりを持って作られたものには敬意を払い、たとえ価格が高くとも、その価値を評価して購入します。野菜も例外ではありません。ですから、農家は高品質な野菜作りにこだわり、八百屋も良い野菜を仕入れ、店頭に並べることにこだわりました。『鎌倉相場』と呼ばれる、一般的な相場よりも高い価格で野菜が取り引きされることも珍しくなかったそうです。

「ここに野菜を持ってくる農家は、一人で何種類もの野菜を作るのではなく、野菜作りの名人がこだわって、一つの野菜を丁寧に育てています。例えば枝豆は、農家ごとに味が違います。有機栽培で手間をかけて栽培している農家の枝豆は、一番の高値で取り引きされていますよ」

こだわりの野菜を求める人に相応しい価格で提供する。この文化が、高品質な野菜を作る鎌倉の農家を育んだとも言えます。

「鎌倉には、良い物にはきちんと対価を支払う人たちがいます。ということは、八百屋も良いものを提供すれば、きちんと利益を上げることができるわけです。私は八百屋の2代目でした。仕事は朝早くて冬は寒いので、『八百屋なんて嫌だ』と思っていたのですが、そうした状況も変わってきています。八百屋だけでなく、農家にとっても同じこと。農業は後継者不足が叫ばれていますが、鎌倉で、は30代、40代の農家がしっかり後継ぎとして育ってきています」

競りに参加している八百屋には、女性の姿もあります。高橋さんによると今日、女性が八百屋の跡継ぎになるケースも出てきているそうです。

市場の役割は、農家と八百屋を結び、野菜を消費者に届けること。そして、良い野菜作りにこだわることで、みんなが豊かになる好循環が生まれます。

市場の役割は、農家と八百屋を結び、野菜を消費者に届けること。そして、良い野菜作りにこだわることで、みんなが豊かになる好循環が生まれます。

また、鎌倉青果市場では、扱う野菜の中でも厳しい基準をクリアした高品質なものを『鎌倉いちばブランド』として認定し、『鎌倉いちば野菜』としてブランド化する取り組みを進めています。

また、鎌倉青果市場では、扱う野菜の中でも厳しい基準をクリアした高品質なものを『鎌倉いちばブランド』として認定し、『鎌倉いちば野菜』としてブランド化する取り組みを進めています。

市場が取り組む野菜のブランド化【市場に行こう!鎌倉青果地方卸売市場】」では、高橋社長にブランド化の取り組みについてお聞きします。

鎌倉青果地方卸売市場
鎌倉市梶原360番地
http://kamakuraichiba.com

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