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生産者の試み

市場が取り組む野菜のブランド化【市場に行こう!鎌倉青果地方卸売市場】

市場が取り組む野菜のブランド化【市場に行こう!鎌倉青果地方卸売市場】

2017年08月04日

鎌倉青果市場の独自ブランド「鎌倉いちばブランド」。厳しい基準を設け、それをクリアした野菜のみ「鎌倉いちば野菜」を名乗ることができます。この取り組みは平成26年、「フード・アクション・ニッポン・アワード」で審査員特別賞を受賞。「鎌倉いちばブランド」の歩みをご紹介します。

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市場が取り組む野菜のブランド化【市場に行こう!鎌倉青果地方卸売市場】

近隣農家の高品質な野菜が集まる、鎌倉青果地方卸売市場(以下、鎌倉青果市場)。運営元の鎌倉青果株式会社は、この市場で取引される野菜を『鎌倉いちばブランド』として広める取り組みを行っています。鎌倉青果市場で扱っているのは、トマト、ホウレン草、枝豆などの一般的な露地野菜です。どうやってこれらの野菜のブランド化を図っているのでしょうか。きっかけや経緯、狙いなどを、鎌倉青果株式会社代表、高橋伸行(たかはし のぶゆき)さんにおうかがいしました。

関連記事:競りがこだわりの野菜を支える!【市場に行こう!鎌倉青果地方卸売市場】

お客さまに怒られて気づいた価値

お客さまに怒られて気づいた価値

高橋さんは、以前、鎌倉市の隣の逗子市で青果商を営んでいました。鎌倉青果市場は元々、鎌倉の青果商が集まって始めた市場。その流れを組み込み、市場に出入りする青果商が兼業で市場の経営を行ってきました。

「社長に就任したのは2012年6月。鎌倉青果市場の前の社長から『次をお願いしたい』と言われました。そのとき、逗子の店と鎌倉青果市場の専務を兼任していたのですが、そろそろ逗子の店を閉めてのんびりしようと思っていたところでしたから、最後のご奉公と思い引き受けることにしました。しかし、当時は市場の業績が芳しくなく、あと2、3年で倒産するような状況でした。『俺がここの幕引きをするのかな』などと思っていました」

そんな厳しい状況で、どうして野菜のブランド化に取り組むようになったのでしょうか。高橋さんは、「あるお客さまの言葉がきっかけ」と教えてくれました。

「逗子の店を閉めてしばらくした頃、街なかでお店に来ていたお客さんとバッタリ出会いました。そして、『お宅で売っていた野菜はとてもおいしかったのに、お店がなくなって残念』、『お宅で野菜が買えなくなって、子どもが野菜を食べなくなった』と言われたのです。その時に改めて自分が売っていた野菜の価値、この近辺で採れる野菜の素晴らしさに気づいたのです」

青果商として毎日扱ってきたため、当たり前の存在になってしまっていた鎌倉の野菜。「井の中の蛙」だったと高橋さんは振り返ります。「どうせやるなら、最後にひと暴れしてやろう!」と、市場で扱っている野菜の価値をもっと積極的にアピールするため、ブランド化にチャレンジすることにしました。

露地野菜だからこそ、安心、安全、新鮮にこだわった

露地野菜だからこそ、安心、安全、新鮮にこだわった

ブランドの名称は、鎌倉青果地方卸売市場にちなんで『鎌倉いちばブランド』としました。実は特許庁にブランド名を商標登録しようとした2012年は、鎌倉が世界遺産への登録にチャレンジした時期と重なりました。それが追い風になるかと思いきや、逆に特許庁から便乗登録と誤解され、登録が完了したのは翌年の2013年になりました。

「ブランドは登録できましたが、普通の露地野菜をブランド化するのですから、『鎌倉』という土地柄の他に、明確なアピールポイントが必要です。そこで安心、安全、新鮮という点を突き詰めていきました。元々、市場近辺で採れる野菜が持っていた価値ですが、それをより明確にしたのです。具体的には、ブランドの認定基準の中に生産履歴の明確化があります。いつ、誰が、どの畑で作ったかはもちろん、いつ、どんな肥料を使ったのか、どんな農薬を使ったのかを記載しています。JAが採用しているものと同じ内容にして、ブランドの認定基準を厳密に設定しました」

鎌倉いちばブランド

生産履歴を農家に書いてもらうようにしたものの、中には農薬について“白紙”のまま提出してきた農家がいたとか。「記入が面倒でも、ブランドの認定を受けるために書いてほしい」と伝えたところ、「うちではもう農薬を使っていない。すべて有機栽培している」と言われたそうです。

「農家は、こだわりを持って野菜を作っています。でも、無農薬で有機栽培していても、それを声高にアピールする人はそう多くはありません。ですから、ブランド化を試みて生産履歴を明確にすることで、地元農家の取り組みや工夫について初めて知ったこともありました。毎年、種をまく前に土を検査機関に持ち込んで状態を調べ、土作りから行う人もいれば、2、3年寝かした堆肥を使って土作りをしている人もいます」

市場で初「フード・アクション・アワード」審査員特別賞を受賞

こうした取り組みは徐々に周囲の理解を得ていき、平成26年、国産農林水産物の消費拡大に関する取り組みを評価する、農林水産省主管の「フード・アクション・ニッポン・アワード」で、鎌倉青果市場が審査員特別賞を受賞。この年、神奈川県では唯一の受賞となりました。また、アワードが始まって以来、市場として初めての受賞という快挙も成し遂げました。

「アワードをいただいて、マスコミにも取り上げられて、大手企業からオファーもいただくようになりました。まだまだ野菜の絶対量が少ないので、すべてに対応はできていませんが、渋谷の東急デパートにある青果店をはじめ、百貨店や高級スーパーからも依頼をいただいています。今後は収穫量を増やして、さらにブランド力を確立していきたいと考えています」

次の目標は東京オリンピック。グローバル基準のクリアを目指す

次の目標は東京オリンピック。グローバル基準のクリアを目指す

鎌倉といえば、「鎌倉野菜」という名称も知られていて、「鎌倉野菜を使ったレストラン」などもよくメディアに登場しています。「鎌倉の野菜は、鎌倉市と農協、そして私たちも協力して、生産者の活性化のために立ち上げたブランド野菜です。現在は70%以上を生産者自らが販売しています。広く名前が知られるようになったのは嬉しいことなのですが、生産者による直接販売が主流となったため外部のチェックも働かず、生産者のモラルに頼っているのが現状です。私たちはそのような状況も改善したいと考えています。だからこそ、『鎌倉いちばブランド』では明確な認証基準を設け、市や県の定期検査に野菜を提出しています」

「ブランドがこんなに広がっていくとは思わなかった」と言う高橋さん。次は東京オリンピックに向けて、大きなプランを立てています。

「ブランドがこんなに広がっていくとは思わなかった」と言う高橋さん。次は東京オリンピックに向けて、大きなプランを立てています。

「2020年は江ノ島がオリンピックのセーリング会場になります。近くに選手村もできるようなので、その時にはぜひ、『鎌倉いちばブランド』の野菜を食べてもらいたい。野菜にはグローバルGAP(※)という基準があり、これをクリアしていないと選手村では提供できません。日本の野菜は、元々クオリティがとても高いが故、こうした認証の取得への意識は遅れていました。しかし、このままだと、日本でオリンピックが開催されるのに、選手村では輸入の野菜を使うことになってしまいます。これからはもっと国外にも視野を向けてみたいです」

『鎌倉いちばブランド』はこれからますます広がっていきそうです。東京オリンピックでセーリングの選手たちが、栄養豊富でおいしい『鎌倉いちばブランド』の野菜を食べて、私たちに素晴らしい競技を見せてくれる日が楽しみです。

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鎌倉青果地方卸売市場
鎌倉市梶原360番地
http://kamakuraichiba.com

(※)グローバルGAP:Good Agricultural Practice(農業生産工程管理)の国際基準。農業生産活動を行う上で必要な関係法令等の内容に則して定められる点検項目に沿って、農業生産活動の各工程の正確な実施、記録、点検及び評価を行うことによる持続的な改善活動のこと

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