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加工・物流も請け負う「農家の家 せんのや」バングラデシュ出身経営者の狙いとは

加工・物流も請け負う「農家の家 せんのや」バングラデシュ出身経営者の狙いとは

2017年08月10日

日本の農家の将来性に目を向け、農業法人を設立したのが、バングラディシュ出身のミヤさんです。農家にとって負担となりかねない、作物の袋詰めや加工から流通までを請け負う、彼の戦略や展望とは何なのでしょうか?

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加工・物流も請け負う「農家の家 せんのや」バングラデシュ出身経営者の狙いとは
株式会社農(みのり)代表取締役 ミヤ・エムディ・マムンさん

農家にとって負担の大きい作物の加工から物流までを請け負い、廃棄野菜を極力減らす努力をしているのが、2016年11月に千葉県旭市にオープンした直売所「農家の家 せんのや(以下、せんのや)」です。規格外の野菜を仕入れ、ハラル認証(ポークエキスやアルコール類を使用していない等、イスラーム法において合法なものであるという認証)にも対応しています。

今回は、せんのやの運営元である株式会社農(みのり)の代表取締役、ミヤ・エムディ・マムンさんにインタビューしました。せんのやでの取り組みの背景と、日本の農家が抱える課題についてお話をうかがいました。

農家が生産した作物を確実に売る会社を作りたかった

「農家の家 せんのや」立ち上げの背景について教えて下さい。

日本の農家が抱える問題に目を向け、最終的に「せんのや」の設立に行き着きました。私たちが一番問題視したのは、後継者不足の問題です。人出が足りず、計画通りに栽培・収穫ができていない農家が全国にたくさんあります。

特に収穫後、作物を洗って袋詰めをして出荷できる状態にしてから市場に卸す作業は、非常に手間と時間がかかります。作物は、収穫が1日から2日伸びただけでも熟れすぎて商品にならないことがあるため、ピーク時には収穫が間に合わず、三分の一は廃棄してしまうという事態が起きています。

私たちはこうした無駄を少しでも減らしたいと考え、「一人ひとりの農家が生産したものを確実に売る」という目標のもと、会社を設立しました。

「農家の家 せんのや」立ち上げの背景について教えて下さい

農家の方には収穫した作物を「せんのや」に持ってきてもらうところまでをお願いし、私たちは作物の袋詰めや出荷など、物流の部分を請け負っています。

農家の方からは「収穫が間に合わず廃棄していた野菜をほぼゼロにすることができた」とおっしゃっていただけるようになりました。梱包などに取られていた時間を別の農作業にあてられるようになったそうです。

千葉県は暑すぎず寒すぎず、天候に恵まれた野菜の産地です。空港や高速道路のインターチェンジも近く、物流の観点から考えてとても良い立地なので、千葉県に拠点を置くことに決めました。

物流・加工の面から農家をサポート、人件費を従来の5分の1に

そもそも、ミヤさんが農業に目を向けた理由は何だったのでしょうか。

私は経営を学ぶため、13年前にバングラデシュから日本に留学しました。大学を卒業後、ある養鶏農家と出会い「人出が足りず困っているので、一年間だけでいいから手伝ってくれないか」と声を掛けられたことが、農業に携わることになったきっかけです。

結果的に三年間ほど、養鶏所の仕事を中心に、同じ組合の方々と交流しながら仕事をしていたのですが、そこで日本の農家は非常に将来性があると考えました。その後独立して「株式会社 農」を立ち上げました。

「せんのや」のオープン後にはどのような反響がありましたか。

予想していた以上の反響をいただいています。「せんのや」では直売所で販売するだけではなく、業務用の卸しも行っています。そのため県外からの取り引きが圧倒的に多く、それまで視野に入れていなかった分野のお客様、例えばホテルや飲食店、航空会社のほか、インドネシアなど海外からの引き合いがとても多いです。日本の農作物を世界に輸出・出荷をするため、ハラル食品の生産にも力をいれています。

私たちが梱包・物流作業を請け負うことで、「これまでかけていた人件費を5分の1まで抑えることができた」という農家の方からのお話も聞いています。こうしてロスを減らしていくことで、農家の収益も上がっているのではないでしょうか。

「せんのや」では新たに約60件の農家と契約し、株式会社 農として、新規の取引先を3年間で約300件に増やすことができました。

「農家の家 せんのや」では野菜だけでなく、 大切に育てられた「平飼い自然養鶏」の卵をつかったスイーツなども販売
「農家の家 せんのや」では野菜だけでなく、
大切に育てられた「平飼い自然養鶏」の卵をつかったスイーツなども販売

日本全国の農家を「企業」に変えていきたい

日本の農業が抱える問題として、どんなことを感じますか。

当初私たちが直面した課題として、「きちんとビジネスができる農家が少ない」という問題がありました。日本の農家は閉鎖的な環境のせいか、気候などを理由に契約を守らないことがあり、「雨が降ったので作物が用意できませんでした」と言う方がいます。良い取り引きができる農家はとても少ないと感じていました。

そこで「せんのや」でお付き合いする農家には、最低限契約を守っていただくことはもちろん、私自身もどうすれば農家の方と仲良くできるか、常に考えるようにしています。私の主な仕事は、畑や作物を自分の目で見て、収穫にも参加すること。そうやってお互いに信用を作っていかなければ、農業のビジネスは成り立たないと感じています。

個人的な思いとして、今後は日本全国の農家一つ一つが「企業」になってほしいと思っています。事業計画書を作り、責任を持って経営していく。天候や人出の問題もあるかもしれませんが、できた作物だけを不定期に持ってくるやり方ではお客さんも困ってしまいますよね。

日本の農業は全世界に紹介できるほど技術力が高く、とても将来性があります。農業をビジネスとして成り立たせるため、私たちも引き続きサポートしていきたいと思います。

株式会社 農では、農家に農作業に専念してもらうよう働きかけるだけでなく、規格外の野菜もすべて買い取って加工品に回し、廃棄される農作物を減らしています

株式会社 農では、農家に農作業に専念してもらうよう働きかけるだけでなく、規格外の野菜もすべて買い取って加工品に回し、廃棄される農作物を減らしています。

また、千葉県多古町に日本初となるハラル食品を中心に加工販売を行なう「多古町セントラルキッチン」を2018年2月にオープン予定です。工場とレストランが併設された同施設は、米の名産地で知られる多古町の町おこしの意図もある大規模なプロジェクトです。

日本の農家における新たなビジネスモデルとして、今後も注目されています。

農家の家 せんのや
住所:289-1727 千葉県旭市川口3390-1
電話:0479-85-8311
https://www.facebook.com/SENNOHA1000/
※写真提供:株式会社 農/嘉手川瑞樹

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