土壌医検定とは?
土壌医検定は、土壌診断と施肥改善、作物育成改善などについての知識を持つ人材の育成を目的に、農林水産省等の後援のもと、一般財団法人日本土壌協会が実施している資格試験制度です。
試験は1級から3級まで設けられており、1級に合格し土壌協会に資格登録の申請を行うと「土壌医」、2級は「土づくりマスター」、3級は「土づくりアドバイザー」の資格が与えられます。
土壌医検定の試験内容と合格ライン
試験内容
土壌医検定2級と3級の資格試験は、マークシート方式の筆記試験のみ。1級については、マークシート方式の筆記試験に加えて、記述形式の試験や業績レポートの提出があります。1級から3級まで、同日同時刻に試験が実施されるため、1級と2級、2級と3級の併願受験はできません。
出題範囲と合格ライン
3級(土づくりアドバイザー)
作物の健全な生育と土壌環境、土壌管理や施肥管理、土壌診断の内容と進め方等。マークシートは3者択一。合格ラインは、50問中30問以上の正解。
2級(土づくりマスター)
3級レベルの知識に加え、施肥改善の処方箋が作成できる知識。マークシートは4者択一。合格ラインは、60問中40問以上の正解。
1級(土壌医)
2級レベルの知識に加え、作物生育との関係での土壌診断と対策の指導ができる知識、実績。4者択一のマークシート方式問題が50問(配点50点)、記述式問題(配点25点)、業績レポート(配点25点)の合計100点の試験です。合格ラインは100点中70点以上。ただし、業績レポートが20点に満たない場合は、全体で70点以上でも不合格となります。
土壌医検定の合格率や受講料
受験資格
2級と3級については、特に受験資格は問いません。1級は5年以上土づくりの指導実績、または就農実績がある方が対象です。どの級から受験することも可能で、1級でも土づくり指導、または就農実績5年以上の実績を申告できれば受験可能です。
合格率
日本土壌協会が発表している、2021年度の受験データによると、各級の受験者数や合格率は次の通りです。3級については受験した人の半分以上が合格していますが、2級、1級は合格率がぐっと下がり、決して容易に取得できる資格ではないことがわかります。
3級 受験者1,438人 合格者847人 合格率58.9%
2級 受験者1,000人 合格者333人 合格率33.3%
1級 受験者95名 合格者19人 合格率20.0%
受験料
受験料は、以下のとおりです。
1級 10,500円 2級 6,300 円 3級 5,250 円(すべて消費税込み)
試験日程・会場
3級から1級まで、試験は年に1回の実施です。2022年度の試験は、2023年2月12日(日)に行われ、申込みは2022年11月1日(火)から12月15日(木)でした。2022年度の試験会場は全国22カ所が設けられました。
受験申込み方法
受験の申込みはインターネット、または郵送で受け付けます。土壌協会のウェブサイトに詳しい申込み手順が発表されます。
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土壌医検定の過去問題や資格登録料など
過去問題
土壌医検定資格試験の過去問題集は「土壌医検定試験既出問題集 ~出題傾向とポイント解説~」として、日本土壌協会より発刊されています。
またこれ以外についても、協会がすすめる参考書が土壌医検定の公式ウェブサイトで掲載されており、試験問題は基本的にそれらの参考書から出題されます。
また協会主催の研修会なども開催されます。
資格登録・登録料
資格試験に合格すると、土壌医資格登録を行うことができます。登録については、日本土壌協会に申請する必要があります。登録申請を行うと、協会から登録証が交付され、登録の有効期間は3年間です。
新規に資格登録する場合の登録料は、6,300円です。資格証カードを発行する場合は別途2,100円かかります。
登録更新
土壌医として適切なアドバイスや指導を行っていくためには、資格取得後も知識・技術レベルを維持・向上していくための努力が必要です。
そのため、資格登録者は登録有効期間の3年の間に、所定のCPD単位(Continuing Professional Development)の取得を行います。
CPD単位を取得するには、協会が主催する研修会や講習会、「土壌医の会」講習会への参加などが必要になります。
土壌医検定を取得するメリットは?
自分の農業経営に活かせる
土壌医検定は、土壌の状態を的確に判断し、適切な肥料や農薬の使用方法を提案できる専門家として認定される資格です。自分の農地の土壌改善や肥料の選択を効果的に行うことができ、農業経営の向上につながります。
また、施肥改善の処方箋を作成することも可能です。これにより、作物の生育状況が改善し、農作物の品質向上や環境負荷軽減につながります。
専門家としての道も開ける
土壌医検定を取得することで、土づくりアドバイザー、土づくりマスター、土壌医と名乗ることができます。専門家としての信頼性が高まり、他の農家からの相談や講演などの仕事の機会も増えるでしょう。
また、農業関連企業や行政機関での就職・転職にも有利に働くことが期待できます。
最新の知識が身に付く
土壌医検定では、最新の農業知識を学ぶことができます。試験には、土壌医検定3級(土づくりアドバイザー)、2級(土づくりマスター)、1級(土壌医)の3つの級があり、それぞれのレベルに応じた知識が身に付きます。
土壌医検定の勉強を通じて、最新の土壌管理や肥料技術に関する知識を習得可能です。
これにより、環境に配慮した持続可能な農業を実践することが可能になります。また、新しい農業技術の導入や効果的な農業経営のアイデアを得ることができます。
受験勉強は講座がおすすめ
3級コース
3級コースは、土づくりアドバイザー資格を目指す人向けの講座で、基礎的な知識・技術を学びます。作物の生育に及ぼす栽培環境や土壌環境に関する基本的な内容が学べるため、土壌医検定3級の試験に対応できる力が身につくでしょう。3級テキスト出題範囲を網羅し、効果的な学習が期待できます。
2級コース
2級コースは、土づくりマスター資格を目指す人向けの講座で、やや高度な知識・技術を習得します。化学性診断や土壌物理性診断など、より専門的な内容を学べるため、土壌医検定2級の試験に対応できる力が身につくでしょう。
2級テキスト出題範囲をしっかりとカバーし、実践的な知識を身につけることができます。
3級+2級コース
3級+2級コースは、土づくりアドバイザー資格と土づくりマスター資格の両方を目指す人向けの講座です。初級から中級までの試験対策が一度に学べるため、効率的に資格取得を目指すことができます。3級および2級テキスト出題範囲を網羅し、幅広い知識と技術を習得することができます。
直前対策コース
直前対策コースは、試験直前に集中的に学ぶことを目的とした講座です。直前対策模試と解説講義が含まれており、短期間で効果的な学習法やポイントを押さえた指導が受けられるため、試験に向けて自信を持って臨めるようになります。
このコースで、最後の追い込みをして試験に挑みましょう。直前対策コースを受講することで、苦手な分野の克服や知識の整理ができ、試験本番に備えた確実な対策が可能です。
また、過去問題の傾向や出題ポイントを把握することで、効率的な学習が実現できます。この講座を活用して、試験に自信を持って望むことができるでしょう。
農家におすすめなその他の資格は?
日本農業技術検定
日本農業技術検定は、農業に関する技術や知識を客観的に評価する検定試験です。農業分野の幅広い知識を身につけることができ、農業経営や技術指導に役立ちます。この検定試験は、農業の基礎知識から農業機械操作や施設栽培などの専門的な技術まで、多岐にわたる農業関連の技術を評価します。
農薬管理指導士
農薬管理指導士は、農薬の適切な取り扱いや管理方法に関する専門家として認定される資格です。この資格を取得することで、農薬の安全な使用方法や環境への影響を抑える方法を学ぶことができます。また、農業従事者への指導や研修講師として活動することが可能になります。
産業用マルチローターオペレーター技能認定
産業用マルチローターオペレーター技能認定は、ドローンを農業分野で活用するための資格です。ドローンを使った農業作業やデータ収集が効率的に行えるようになります。
認定された人材は、産業利用を含む幅広い用途でドローンを活用することができます。この資格を取得することで、農地の観測や作物の生育状況のモニタリング、農薬散布などの作業を効果的に行うことができます。
この認定は、日本国内でのドローン活用が進む中で、より安全な産業利用を推進するために導入されたものであり、国内外でのドローン活用においても有益な認定制度と言えます。
農業簿記検定
農業簿記検定は、農業経営に必要な簿記や会計の知識を身につける資格です。
農業においては綿密な経営計画と正確な会計処理が必要不可欠です。農業簿記では、土地や機械・設備、肥料や種子、農薬などの購入費用や、作物の収穫量や販売価格、補助金などの収入について記録し、経営状況を把握することで、経営計画の立案や見直しが可能になります。
農業に特有の問題に対処するための会計処理も必要であり、農業をビジネスとして捉えるためには、農業簿記を理解することが重要です。
野菜ソムリエ
野菜ソムリエは、野菜や果物に関する専門知識を持つ資格です。農産物の品質や栄養価、調理法などを熟知し、消費者への情報提供や販売促進活動に役立てることができます。
また、自家製品の開発やプロモーションにも活用できます。
野菜ソムリエの資格は、初級から上級まで3段階に分かれており、それぞれのレベルで異なる専門知識を学ぶことができます。初級では、野菜や果物の基本的な知識を学び、中級では品種や産地、旬に関する情報を深めます。
上級では、農産物の栽培方法や品種改良、調理法に関する専門的な知識を習得し、農業経営や商品開発に活かすことができます。
作物の栽培において、まず土作りから考えてみようと思っている方は、ぜひこの試験に挑戦してみてはいかがでしょうか。