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生産者の試み

東日本大震災から6年。震災前後で福島の桃農家はどう変わったのか?

東日本大震災から6年。震災前後で福島の桃農家はどう変わったのか?

2017年08月30日

福島県でモモを生産している菱沼農園(ひしぬまのうえん)。2011年震災の後、福島県の桃農家を取り巻く環境は一変しました。この農園でも、周囲で桃農家の廃業が相次ぎ、廃業した桃農家の土地を引き継いで規模拡大を進めてきたといいます。福島県の桃農家が感じる課題とは何なのか。菱沼農園で働く方々にお話をうかがいました。

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福島県福島市飯坂町にある菱沼農園。9ヘクタールにも及ぶ巨大な農園で、サクランボ・モモ・リンゴなどの果物を栽培し、ゼリーやジュース、コンポートなど様々な加工品の開発にも取り組んでいます。

菱沼農園は、代表菱沼健一(ひしぬまけんいち)さんの父の代から本格的に始まりました。当初は何もない山の畑を開梱してモモとリンゴを育てていましたが、サルによる被害により山の農地での展開を断念しました。その後、平地の農地を求めて作付面積を広げていき、現在の規模に至ります。

健一さんは、菱沼農園のこだわりを「健康な木を育てること」だと話します。「果実を作り上げているのは、私たち人間ではありません。おいしい福島県のサクランボ・モモ・リンゴを育てているのは木と葉、そして土なのです。私たちは木と葉が最大限力を発揮できるようにお手伝いしているだけ。それが栽培というものなのです」。

木は自然のサイクルの一部として存在しているので、育てるための肥料も有機のものが中心です。そうやって農園の健全さを保っているそうです。

菱沼農園の1年は慌ただしく過ぎます。6月にはサクランボ、7から9月はモモ、10から11月はリンゴの収穫に追われています。それ以外の時期も木や土の手入れを定期的に行なっています。特に、夏の時期はモモの収穫と出荷が大変です。忙しさの背景には、東日本大震災後、廃業した農地を委託され、モモの生産を拡大させたということがあります。大規模化した農地を管理するため、多くのスタッフが働いています。

東日本大震災後に桃農家を取り巻く状況

2011年の東日本大震災・原発事故により、福島県の農家を取り巻く状況は一変しました。日本全国に売っていた果物や野菜のほとんどは一時出荷停止となり、安全の確認がとれて出荷を再開した後も風評被害に悩まされました。

桃農家もまた、震災直後はモモの出荷が停止され、生産していたすべてのモモを廃棄せざるを得なかったといいます。その後も、検査結果に問題がないにも関わらず、売れない状況が続きました。風評被害が落ち着き始めるまで、3年程は要したと言います。

次第に、福島県の桃農家は減少し、空いた土地が増えていきました。そんな状況を見て、菱沼農園は周囲の桃農園の管理を引き受け、委託される形で農園を拡大することにしました。現在は、20種類以上のモモを育てています。

生産量が上がり規模が拡大する一方で、課題もあると言います。菱沼農園の跡継ぎとしてモモを作り始めて10年になる菱沼健司(ひしぬまたけし)さんは、次のように語っています。「元々違う所有者の土地だったため、小規模な農園が点在しており、管理しにくい状況になっているのです。まとめて手入れや収穫をすることができず、効率化するのが難しい。また、駐車場がある場所だけではないので、農園の近くに車が止められないなどの問題もあり、改善の余地があります」。

労働環境を整えて売り先を作る

菱沼農園では規模の拡大に伴い、スタッフの受け入れ体制を強化しています。家族経営を脱却するためには、昔のように「農家は毎日休みなく働いている」という状況は払拭する必要があります。農家は自然相手の商売であり、天災などの影響によって収入が大きく乱高下します。忙しい時期には家族で何とか協力して乗り切るという文化がありますが、それはスタッフを雇う場合には通用しません。

現在では、シフト制を組んで従業員にきちんと休みを確保しています。今後はさらに労働環境を整えて、若い従業員を増やそうと考えています。今後の展望として、作った加工品を販売する場所を作ろうと考えていると、健司さんは「これからは、どんどん若い人の雇用を増やしていきたいです。山梨などでは若い女性に企画をまかせてカフェを開き、成功している事例がある。うちの農園には原材料となる良い果物はたくさんあるので、それを直接お客さんに提供できる場所を作りたいんです。」

作った果物を「おいしい」と喜んでもらうことがやりがいだという健司さん。大変なことも多い中、やりがいを感じ続けられる労働環境をどう作っていくか。震災により苦境に立たされた福島県の桃農家の工夫はこれからも続いていきます。

 

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