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生産者の試み

食べもの付き情報誌「神奈川食べる通信」が考える農の未来とは

食べもの付き情報誌「神奈川食べる通信」が考える農の未来とは

2017年08月30日

雑誌と食べものが一緒に届く「食べる通信」。読者になると、一人の作り手を取り上げた雑誌と、その方が作った食材と加工品を受け取ることができます。全国4番目の食べる通信として創刊した「神奈川食べる通信」のCSA(Community Supported Agriculture、地域社会で支える農業)普及への取り組みなどについてご紹介します。

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世界初の食べもの付き情報誌「食べる通信」をご存知でしょうか。食の作り手を特集した雑誌と、実際にその方が作った食べ物と加工品がセットで届くという画期的な定期購読誌です。2013年に創刊された「東北食べる通信」を皮切りに、現在では全国で38誌が創刊。中でも、地域の特長を生かしたユニークなサービスを展開しているのが「神奈川食べる通信」です。

作り手と消費者が近い“都市型”ならではの「食べる通信」とは。神奈川食べる通信フードコーディネーターの菅千明(すがちあき)さんにお話をうかがいました。

関連記事:食育は大人こそ必要「食の未来を創る食育コーディネーター」菅千明さんの取り組み

地域の特色を色濃く反映する「食べる通信」

定期購読誌である「食べる通信」は、読者になると定期的に雑誌が自宅に届きます。セットの内容は、一人の作り手を取り上げた雑誌1冊と、その方が作った食材と加工品。食材は海のもの、山のもの、畑のものなど特集によってさまざまです。

「神奈川食べる通信」は2015年、全国4番目の食べる通信として創刊しました。全国で唯一、作り手から直接、食材を受け取れるサービスを行っています。

「東北や北海道の食べる通信は、読者は地元より都心の方が多いのですが、神奈川食べる通信の読者さんは圧倒的に地元神奈川在住の方が多いんです。読者が同じ県内にいるなら、直接生産物を受け取れた方が、読者と作り手の距離はより近づきますよね」。

食べる通信をきっかけに作り手を知り、その後直売所へ足を運んで顧客になっている読者も多いと言います。

消費者と生産者をつなぐ橋渡し役

雑誌の刊行と同時に、生産者と読者をつなぐ参加型のイベントも開催しています。「前回は、横浜市旭区の農家さんのところで収穫した野菜で作った豚汁や、伝統料理を釜炊きのごはんと一緒に食べるイベントを開催しました。普段はシャイな農家の方も、消費者の方から質問されると、畑への思いを饒舌に語ってくれるんです。そんな光景を見ると、やってよかったなと思いますね」

食べる通信のコンセプトは、食べものの裏側にあるストーリーを届けることで、消費者と生産者のつながりを作ること。神奈川食べる通信の取り組みは、地域の特長を生かしながら、そのコンセプトを、より強化している好例と言えるでしょう。

新たな取り組み、神奈川版CSAへの挑戦

神奈川食べる通信フードコーディネーターの菅千明さん

菅さんたちが新たに力を入れているのが、CSA(Community Supported Agriculture、地域社会で支える農業)普及への取り組みです。CSAとは、農家が年間定額で消費者と契約し、決まった頻度で作物を届ける仕組みのこと。一定期間に収穫される作物を、参加者全員でシェアする、というのが基本的な考え方です。消費者は、旬の新鮮な野菜を受け取れ、農家は販売先の確保ができます。何より双方の顔が見えることが、お互いにとって大きなメリットです。一方で、受け取ることのできる分量や作物の内容が一定しないこと、配送負担の問題もあり、日本ではまだあまり普及していません。

しかし、神奈川食べる通信は、このCSAに可能性を感じていると言います。「CSAの基本は、生産者と消費者が良い関係を築いて、互いにメリットを享受していこう、ということ。食べる通信のコンセプトと近いこともあり、実現方法を模索しています」

ちがさき牛ハチマルちゃんのCSA

その試みの一つが、「ちがさき牛ハチマルちゃんのCSA」。神奈川食べる通信がオーガナイザーとなって、ちがさき牛への投資を募った試みです。茅ヶ崎市の齋藤牧場と提携し、1頭の子牛が肉牛になるまでを皆で見守ろうというこのプロジェクトは、2016年にスタート。一口500円から出資でき、肉牛として成長した暁には、投資口数に応じて肉を受け取ることができます。

ハチマルちゃんCSAでは、ただ出資を募るだけではなく、実際に牧場や農園に参加者を集めて、イベントを開催しています。ハチマルちゃんCSAバーベキューは、3カ月に一回程度行うこのイベントでは、出資をした方がバーベキューを楽しみながら、子牛に触れあったり、肥育農家さん、繁殖農家さんから、生産の現場についての話を聞いたりすることができます。子牛の名前「ハチマルちゃん」も、参加者が話し合って決めたそう。2018年3月には、ハチマルちゃんが牛肉となって、参加者の元に届く予定です。

究極の食育とも言える、ハチマルちゃんCSAですが、参加者の方の反応はどうなのでしょうか。「かわいい子牛だったハチマルちゃんも、今では500キロを越す立派な成牛になりました。参加者の方の反応は、『牛肉にされてしまうのが、かわいそう』というものから『食べるのが楽しみ』までさまざまですが、食と生産の関わりを考えるきっかけになってもらえたらいいですね」。

意外だったのは、作り手側にも変化が見られたこと。「繁殖農家の方が参加してくださったのですが、子牛に注射を打つ時、これまでモモに打っていたのを、このイベントをきっかけに首に変えたとおっしゃっていました」。モモへ注射すると、牛肉となったときに万が一体内に注射液が残っていると、それを消費者が牛肉を介して口にしやすくなります。これを首に変えたということは、消費者の安全を配慮したということです。消費者の顔を実際に見たことで生まれた変化でした。

「最初は、消費者の意識が変わるといいな、と思って始めたことでしたが、作り手側にも変化をもたらせたことが、うれしかったです」。CSAは、消費者と農家の信頼関係なしには成り立たないシステムです。神奈川で今、少しずつその可能性が芽吹き始めています。

作り手を知れば、食べものはもっとおいしくなる

「農家さんのファンになると、食べものはずっとおいしくなります。それを知ったら、神奈川に住む方の生活はもっと豊かになるんじゃないかなと思います」。読者の代表として、作り手と読者の橋渡しをしていきたい、という菅さん。神奈川の地の利点を生かした、新しい食と農の取り組みによって、神奈川の食文化が、楽しく豊かなものに変わり始めています。

食べる通信は現在、全国各地に38誌あります。お住いの地域や、好きな街の食べる通信で、各地方の「食の今」を感じてみてはいかがでしょうか。

 

関連記事:食育は大人こそ必要!「食の未来を創る食育コーディネーター」菅千明さんの取り組み

神奈川食べる通信

http://taberukanagawa.tumblr.com/

食べる通信

http://taberu.me/

写真提供:神奈川食べる通信、菅千明さん

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