フローロン・オードランさん略歴
・フランス・ブルターニュ出身
・フランスの高校、高等技術専門学校で自然環境マネジメントを学ぶ
・ニュージーランドで出会った日本人女性と結婚し、山梨に移住
・自宅の庭で持続可能な農業に取り組む
小さな畑で自分のできる範囲で
山梨県で、自宅の庭と山の上に借りている小さな畑で、30種類ほどの野菜を作っています。作っているのは、キュウリ、ゴーヤ、ピーマン、唐辛子、ハーブなど。販売は行っていませんが、採れた野菜を友人や同僚に配ったりしています。
こだわっている点は、できるだけ「在来種」の種を使うことです。種には、形や色のばらつき、
持続可能な共生への興味
農業に興味を持ったのは、高校時代です。元々、乗馬を専攻していたのですが、生物や自然科学の授業が楽しくて、乗馬から自然環境マネジメントへ専攻を変えることにしました。そこで、植物や動物、自然環境と人間の共生を研究している先生と出会い、持続可能な共生を目的とした農業に惹かれていきました。
卒業後も、専門学校で継続して、自然環境マネジメントを学び、特に土壌に関しての知識を深めました。その後、160ヘクタールの畑で2年間働きました。その中で、自分の理想に近い、持続可能な農業に関わりたいという気持ちが強くなり、WWOOF(ウーフ)というプログラムを使って世界中の有機農家を回ることにしました。WWOOFは、有機農家で作業を手伝いながらホームステイをするプログラムです。世界各国の有機農業を体験する中で、ニュージーランドで日本人女性と出会い結婚。日本に移住しました。
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自分たちが食べる野菜は自分で作ろう
日本の好きなことの一つに、家庭菜園が多いことがあります。世界中で様々なスタイルの農業を体験する中で、私は持続可能な野菜作りをしていきたいと考えていたので、日本の家庭菜園は理想的でした。
特に印象的だったのが、妻の実家です。妻の祖母は、身内が食べる分の米や野菜を、80年以上作り続けています。妻は野菜と米は一度も買ったことがありません。自分で作った野菜を食べて、畑で採れた種をまいて、次の年にまた収穫している。妻の祖母にとっては当たり前の風景ですが、その姿に憧れました。自分もこんな風に生きたいと思いました。
加えて、持続可能な農業、いわゆるパーマカルチャーの分野でも日本に惹かれていました。特に興味深いのが、江戸時代の農村のエコシステムです。排泄物まで肥料に加工して、商品として売るような、「徹底的にゴミを出さない暮らし」は、今の時代にこそ注目されるべきだと思います。
最近になって、世界中で「持続可能な農業」という言葉が流行り始めましたが、江戸時代の日本はその先駆けだったわけです。自然農法の第一人者である福岡正信(ふくおかまさのぶ)も日本人です。フランスを始め、パーマカルチャーに興味がある人で彼の名を知らない人はいません。
天国みたいな果樹園を作りたい
実際に日本で野菜作りをして、毎日が楽しいです。スイカがどんどん大きくなるのを見るだけでも、幸せな気持ちになります。
気をつけているのは、完璧な野菜を作ろうとしないことです。自然の中で、傷一つないものを作るのはほぼ不可能ですから。野菜そのものが持つ力を放出できるよう、必要な手入れだけを取捨選択しています。
例えば、土作りは野菜にとってすごく重要なので、力を入れています。今は実験的に籾殻を土に混ぜて、地中の微生物を増やそうとしています。雑誌やネット、WWOOFでお手伝いをした農家さんの情報から、自分が良いと思ったものだけを選んでいます。
これからは、果物の樹も植えたいですね。お手伝いしているぶどう園に、ユズやザクロの樹が沢山あるんです。働きながら、小腹が空いたときに少しつまんだりすると、天国にいるような幸せな気分になります。私も、そんな自分のパラダイスを作りたい。
畑の規模をもう少し大きくできたら、WWOOFのホストにもなりたいですね。私も沢山お世話になったので、恩返しがしたい。パーマカルチャーを知るきっかけを提供できたらいいですね。