ビールの“中身”を見せてください vol.2:【準備編】国産ホップの基礎知識【前編】 – マイナビ農業

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ビールの“中身”を見せてください vol.2:【準備編】国産ホップの基礎知識【前編】

ビールの“中身”を見せてください vol.2:【準備編】国産ホップの基礎知識【前編】

2017年09月05日

コンビニやスーパーで手軽に購入できるビールですが、その1本1本が手塩にかけて育てられた原料をもとにできています。この企画では、ビールの“中身”を探っていきます。
第二回は話題の「ホップ」についての基本を学びながら、日本国内でのホップ栽培や品種などの動向に注目して紹介していきます。
前編ではポップの基本と品種をご紹介いたします。

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ホップは、ビールの香りや苦みの主な元となっています。最近では「◯◯ホップを使用」とパッケージなどで謳うビールもさまざまに登場し、品種による違いを飲み比べて楽しめるようになってきました。

ホップとはどんな植物?

ホップはアサ科のつる性多年草の植物で、学名はHumulus Lupulus、和名はセイヨウカラハナソウ(西洋唐花草)です。ホップは雌雄異株植物で雌株と雄株に分かれていますが、ビールの原料となるのは雌株のみのため、肩身の狭い雄株を思ってなのか、その花言葉は「不公平」です。

蔓の高さは7メートルから12メートルほどに伸び、蔓性の植物の中では珍しくS巻き(左巻き)に巻き上がります。多年性植物なので、一度植えたホップの根株は10年から30年そのまま使用することができます。

醸造に使う毱花(まりなな 球花(きゅうか)ともいう)は毛花の後にできる実の一種で、それを割るとルプリンというビールの香りや苦みの元となる黄色い粒があります。

(左)ホップの根 (右)昭和28年頃のホップ栽培者(北杜市郷土資料館『北杜忽布物語~幻の“かいこがね”~』より転載

【関連記事はこちら!】ビールの“中身”を見せてください

ホップとビールの歴史

いまでこそビールになくてはならないホップですが、古代から作られていたビールにはホップではなく、ヤチヤナギやアニス、フェンネルやコリアンダーなどの薬草(グルート)が使われていました。ホップも古代ローマの時代から薬草として知られていましたが、ビールに使われるようになったのは8世紀頃のドイツ・バイエルン地方からといわれています。ホップには優れた腐敗防止効果があったため、15世紀にはホップのビールが主流となりました。

日本でのホップの歴史は、1871年から始まります。北海道開拓のため、黒田清隆に雇われたトーマス・アンチセルが、道内の調査に訪れた際、西部の岩内で野生のホップを発見します。1872年、アンチセルは北海道がホップ栽培の最適地であり、かつビール醸造の適地であると報告したこともあり、のちに1876年、日本人による最初のビール工場「開拓使麦酒醸造所」が札幌に開業しました。これが現サッポロビール株式会社の原点となります。

「ホップ栽培発祥の地」記念碑(山梨県北杜市)

世界のホップ生産地

2016年現在の世界のホップ生産量(※1)は、第1位がアメリカの41,500トン、第2位がドイツの35,670トン、第3位がチェコの6,000トン、第4位がポーランドの2,557トン、第5位がスロベニアの2,550トン、第6位がイギリスの1,450トン、そしてスペインの1,115トン、ニュージーランド794トン、フランス740トンなどが続いています。

※1 INTERNATIONAL HOP CONVENTION – ECONOMIC COMISSION SUMMARY REPORTS 2016より

国内の生産地とホップの種類

日本でも明治時代から札幌開拓使がホップ栽培をスタートしましたが、戦争などを挟んで栽培面積や生産量は年々減少を続け、2011年の国内生産量実績(※2)は335トンとなっています。

「ホップに関する資料 2011年組合別生産実績」(全国ホップ農業協同組合連合会)※2

世界には現在80品種以上のホップが栽培され、新しい品種も増え続けています。日本で開発・栽培されたホップには例えば以下のような品種があります。

信州早生(しんしゅうわせ)

日本で作付けされるホップで一番多く栽培されている信州早生は、1910年に大日本麦酒(サッポロビールの前身)札幌工場で、チェコのザーツ種の雌株とイギリスのホワイトバインの雄株を交配し、優良な選抜育成させたものとされています。当初は「ドイツ種」と呼ばれ、その後長野の気候に適していることがわかり名前を「信州忽布」と変更、1919年に「信州早生」改名しました。2018年に100周年を迎える国産ホップの礎です。

キリン2号

信州早生の品種改良で、1953 〜から1954年にキリンビールが開発した品種です。実際は、1号から12号までありました。その中から優良品種として選ばれ、キリンビールの主力ホップとして現在も使われ続けています。

かいこがね

1957年、北杜市長坂町の圃場で突然変異のホップを一株発見します。このホップは生育途中で葉の色が黄色に変化します。「甲斐」で見つかった「黄金」色のホップということで「かいこがね」と名付けられました。蔓の伸びが短くて栽培収穫しやすく収穫量も多いことから、一時は北杜市や山形などで多く栽培されていました。現在は幻のホップとも呼ばれていますが、この品種を復活させようという活動も一部で始まっています。

リトルスター

テトナングの自然交雑種子から育成された品種。小さくてやや長い卵型の毱花がたくさん実ることから、リトルスターと名付けられました。アロマホップならではの香りが特長で、栽培するにも優れた生産農家期待のホップです。

ソラチエース

北海道・上富良野で1970年にホップの品種開発をスタートしたサッポロビールが、ブリュワーズ・ゴールドやザーツなどの品種を交配して初登録となったホップ。その後国内では栽培品種として普及しませんでしたが、アメリカにホップの遺伝資源として持ち込んだことからその特長ある香りや成分が世界中で人気となりました。

ホクトエース

ソラチエースにザーツを交配して育成された品種です。出願時の名称は「サッポロ1号」でしたが、登録品種名は「フラノ18号」となり、「ホクトエース」の呼称で岩手県と青森県で栽培されています。

MURAKAMI SEVEN

旧名称は「江刺7号」。岩手県奥州市江刺区の育種圃場で、7番目の畝に植えられていた品種です。1991(平成3)年にキリン2号、ハースブルッカー、ハラタウを交配し保存していましたが、2011(平成23)年に増殖・普及に移行しました。名前のMURAKAMIはキリンで長年ホップの研究に携わっており、開発者である村上敦司氏の名前に因んでいます。

MURAKAMI SEVENのホップ

国産ホップと輸入ホップのメリット・デメリット

ホップに限らず、島国かつ土地の狭い日本では大規模農業がしにくいため、国産ホップは割高になってしまうのが難点です。その反面、畑が狭い分、目が行き届くので品質が非常に安定しているというメリットがあります。産地が近いので、バラエティ豊かなホップの使い方が可能になります。通常、ホップは乾燥後にペレットなどに加工しますが、乾燥させずにフレッシュなままタンクに投入したり、最近では収穫後の生ホップを凍結・粉砕してフレッシュな香りや苦みを最大限に保たせるなど、ペレットのホップでは表現できないビールの香りを実現する工夫もできるようになりました。

もちろん、輸入ホップにも世界のその土地ならではの特長のある品種が多数あり、それらを使うことでビールの幅がさらに広がります。

ホップの真ん中にビールの香りや苦みの元となるルプリンがある(黄色の粒状のもの)

本稿ではポップの歴史・品種についてご紹介しました。次回はポップの栽培・新品種についてご紹介いたします。

 

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