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家業を継ぐ悩みを分かち合い、帰農を推進 「農家のこせがれネットワーク」

家業を継ぐ悩みを分かち合い、帰農を推進 「農家のこせがれネットワーク」

2017年09月05日

農業を、かっこよくて、感動があって、稼げる「3K産業」にしたいとの思いから、実家の養豚農家を継いだ宮治さん。家業だけでなく農業界全体を盛り上げたいと、農家生まれの「こせがれ」をつなげる「NPO法人農家のこせがれネットワーク」を設立しました。その取り組みに迫ります。

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都会で働く“こせがれ”の帰農で農家の後継者不足の解消を目指す、NPO法人「農家のこせがれネットワーク」。農家で生まれ、家業を継ぐべきか悩む「こせがれ」たちの不安や心配事を共に解消し、事業継承をスムーズにできるようサポートしています。

今回は、代表理事の宮治勇輔(みやじゆうすけ)さんに立ち上げの経緯などについてお話をうかがいました。

都会で働く農家の「こせがれ」が家業に入り、NPO法人を立ち上げるまで

当初は実家を継ぐ気は全くなく、漠然と「30歳までに起業する」という目標を持ちながら、人材派遣会社で会社員をしていた宮治さん。
「知識が夢を広げてくれると思ってさまざまな分野の本を読んでいたのですが、その中には農業の本もありました。でも、どの本も『農業はきつい割には稼げない』など、マイナスなことしか書いてありませんでした。

それで、農業について本気で考えるようになったんです。一次産業を『きつい、汚い、かっこ悪い、くさい、稼げない、かっこわるい』の“6K産業”ではなく『かっこよくて、感動があって、稼げる』“3K産業”にしたいと強く思うようになりました。実家は絶対に継がないと言いながら、どこかで農業への思いがあったのでしょう。気が付くのに時間がかかりました」(宮治さん)。

2005年6月、宮治さんは一念発起し、会社を辞めて家業である湘南の養豚農家に戻りました。生産は父親と弟に任せ、自身は販路の開拓などを担当し、生産から顧客に届けるまでを一貫してプロデュースする「農業プロデューサー」としての活動を始めました。

まず初めにしたことは、自分たちが作った豚肉のおいしさを知ってもらうため、知り合いの果樹園を借りて行ったバーベキューのイベントです。参加者が「肉も脂身もおいしくて、まったく豚臭くない」と喜んで食べる様子を見て、「うちのブタは、自信を持って食べてもらえるブタだ」と確信したという宮地さん。自分たちが作った豚肉に、「みやじ豚」と名付けました。月1、2回のバーベキューイベントの開催を続けているうちに口コミが広まり、メディアで取り上げられるようになり、「みやじ豚」の知名度はみるみるうちに上がっていきます。やがて、「おいしいみやじ豚をもっと食べたい」という声を受け、インターネットを使った直接販売、レストランとの直取引なども実現しました。2006年には法人化し、「株式会社みやじ豚」を設立となりました。

宮治さんの活動は、家業の枠の中に留まりませんでした。“3K産業”の実現のために、共に語り合い、実現に向けて取り組んでくれる仲間が欲しいと考えたのです。2008年、養豚農家のこせがれである宮治さんを中心に「NPO法人 農家のこせがれネットワーク」が設立されました。

「こせがれ」はアドバンテージを持っている。円滑な事業承継で農業界の課題を解決

農家のこせがれネットワークでは、ファミリービジネスの重要性を提起し、事業承継を円滑にする支援をしています。

農業従事者の高齢化が急速に進み、次世代への引継ぎが喫緊の課題とされていますが、「農業界は、次世代への知識やネットワークの引き継ぎが充分にできていない」と宮治さんはいいます。

「ファミリービジネスには理念や技術を継承しやすいというメリットがあり、事業承継が急務である現代農業に合ったビジネススタイルといえます。家族経営と聞くと閉鎖的というイメージで少しネガティブな印象があるかもしれませんが、世界のGDPの70%から90%はファミリービジネスで形成されているとも言われており、決して悪いスタイルではないことがうかがい知れます。

日本の農家の大半は家族経営で、先祖伝来の土地や農業技術、既存の販路を代々継承しています。ゼロスタートの新規就農者と比べると、とても大きなアドバンテージなのですが、こせがれ自身がそのことに気づいていないのが現状です」。

そこで、農家のこせがれネットワークでは、ファミリービジネスや事業承継に対する正しい認識や手法を伝えるべく、「農家のファミリービジネス研究会」を立ち上げました。ここでは、“人、物、お金、情報、顧客”それぞれのテーマに基づいて事業承継について考えているそうです。

「研究会を通じて若い農業者や、都心で働くこせがれが家業に誇りを持ち、農業のさらなる発展と成長を目指そうと考えました」。

事業継承に踏み出せない“こせがれ”の背中を後押し

実家が営む農業の継承を迷っているこせがれの多くは、収入面の心配や、地元のネットワークがないことなどへの不安がネックになるといいます。しかし、宮治さんは「結局は自分の気持ちが一番大切」と語ります。

「モモ農家のこせがれから、実家を継ぎたいけれど、迷っている、と相談を受けたことがありました。まだ両親に話していないと言うので、まずは実家を継ぐことを考えていると両親に伝えることが大切だとアドバイスしました。きちんと両親に伝えておかないと、後継ぎがいないからと事業を縮小させたり、他の兄弟が継いだりする可能性もあるからです」。

モモ農家のこせがれは、後を継ぐ意志を実家の家族や奥さんに伝えたところ、喜んでくれたり、反対意見が合ったり、家族の反応はさまざまだったそうです。

「収入面が不安という家族の意見もあったと聞き、今度は両親が経営している農業の経営規模を聞いてみるように伝えました。こうしたやり取りを繰り返して、こせがれが家業を継ぐ上でネックとなる課題一つ一つの解決をサポートしています。その結果、モモ農家のこせがれの彼は家族全員が納得した上で、半年後に農家を継ぐために実家へ帰ることになりました。

就農を決めるのはあくまで本人ですが、私たちは情報を提供したり、一緒に考えたりすることで少しでも多くのこせがれが実家を継げるように後押ししています」。

一期一会を大切に。広がる「こせがれ」の輪

農家のこせがれネットワークの活動は、こせがれを実家の家業を継ぐように促すことだけではありません。就農後も交流会やセミナー、Facebook(フェイスブック)上のオンラインサロンなど、共に切磋琢磨しながら学び、お互いに情報交換をする場も提供しています。

「農業は一生の仕事なので、一度できたつながりも一生ものです。その土地でずっと農業をやるからこそ横のつながりが重要になるので、交流の場を大切にしています」と宮地さん。

今はSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)などで、簡単に連絡を取り合うことができます。オンラインサロンでもお互いの近況を報告したり、困り事の相談に乗ったりしてるそうです。

「農家のこせがれネットワークでは、こせがれたちに農業経営者を目指してもらっています。畑を耕すだけでは満足できないという人には、私のような農業プロデューサーという道もあります。都会でビジネス感覚を身に付けたこせがれが、実家に帰り就農て新しいビジネスモデルを作ることで “3K産業”が実現できるのではないかと思います」。

「農家に生まれたからこそ、できることがある」。そう感じている後継者の方も多いかもしれません。家業の継承を検討している方は、一度、農家のこせがれネットワークに相談してみてはいかがでしょうか。

農家のこせがれネットワーク

http://kosegarenet.com/
写真提供:農家のこせがれネットワーク

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