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100%沖縄産のチョコレートを作りたい 6次産業化を目指すカカオ生産者の取り組み

100%沖縄産のチョコレートを作りたい 6次産業化を目指すカカオ生産者の取り組み

沖縄県北部大宜味村(おおぎみそん)に、日本では珍しいカカオ豆栽培に取り組む川合径(かわいけい)さんの畑があります。川合さんは「オキナワカカオ」というブランドを掲げ、カカオ栽培からチョコレートの加工・流通までを一貫して行う6次産業化を目指し、2016年から事業を始めました。
「6次産業は手段であり、目的ではない」と語る川合さんに、事業への思いや目指すビジョンについて、お話をうかがいました。

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川合径さん略歴
・明治大学農学部卒業後、半導体商社に入社。7年の営業経験後、起業家育成、地域・業界・組織活性化を行う企業へ転職。8年間全国各地を回る中で、地域に役立つ仕事をしようと決意
・2016年3月に「オキナワカカオを地域連携で世界のブランドへ」を掲げ、起業
・カカオを通して地域と都市のコミュニケーションを増やし、地域発展につながる沖縄カカオ産業を目指す

ひとつの産業から地域の人々をつなぎたい そのとき思いついたのが「カカオ」だった

なぜ沖縄でカカオ栽培を始めたのでしょうか。

大学は農学部を出たこともあり、地域や食との関わりを持った仕事をしたいと常々考えていました。
前職では、沖縄県外で起業家の育成や東日本大震災復興支援に携わる仕事をしており、人生をかけてそれらに取り組む人を見て、私も地域を盛り上げる事業に挑戦したいと思うようになりました。
ちょうどその頃、妻と息子が沖縄に住んでおり、何度も沖縄へ行く中で、世界一のコーヒーを作ろうとしている方に出会ったんです。沖縄にコーヒーブランドを立ち上げる。とても面白い取り組みだと感じました。

そんなとき、カカオ豆の作り手が栽培からチョコレート製造までを手がける「Bean to Bar(ビーントゥバー)」という取り組みのことを思い出しました。「沖縄でコーヒー豆が作れるのであれば、コーヒー豆と近しい栽培条件で生産されるカカオも、同様に育てられるのではないか」と考えたのです。沖縄でカカオの生産が可能になり、チョコレートに加工できれば、地域にとっても有意義な事業になります。

6次産業化を行おうと考えたのはなぜでしょうか。

理由の一つに、日本での生産者の立場や扱われ方に疑問を持っていたことが挙げられます。生産者よりも、加工者や消費者の方が、立場が強いように見受けられたからです。命の源である食べ物を作る人が、軽んじられることがあっていいのだろうか。生産者自らが生産物の価格を設定できるような仕組み作りをしたいと思ったのです。

それに、カカオは単体では商品になりません。砂糖や果物など、他の食材と組み合わせることで初めて商品になります。この特性に、地域の人々をつなぐ可能性を見出しました。カカオを生産してチョコレート作りを行うことで、チョコレートに使用する食材の生産者同士をつなぎ、地域支援ができると考えたのです。そのチョコレートを幅広く販売することで、都会の人にも沖縄を知ってもらう機会になります。

カカオの栽培は日本ではまだ珍しいそうですね。

カカオは現在、国内ではほとんど栽培されていないため、流通や農産物としての価格設定がありません。だからこそ、カカオの価値を自分で作っていこうと考えました。

生産から加工までを一貫して行い、生産者の声を聞きながら地域事業として持続可能な値付けをしていくこと。これが、生産者が価格を決める仕組み作りの一つとして有効だと考えています。

「地域作り」がひとつのキーワード

事業をはじめるにあたって、どのようなところから取り組みましたか。

現在は、ショコラティエの方に依頼して、クーベルチュール(製菓用チョコレート)と沖縄の食材を組み合わせたチョコレートを作り、販売を行っています。カカオの育苗、栽培は2016年4月からはじめていますが、カカオが実り、カカオ豆が収穫できるまで3年から4年はかかります。その間にチョコレート作りについてのノウハウを蓄積しています。チョコレートの製造や、商品販売におけるマーケティングなどについてはまだ素人ですから、カカオ豆が収穫できるまでにプロフェッショナルに成長しておかなければならない、というプレッシャーもあります。

沖縄産の原材料100%のチョコレート 事業成功の鍵はファン作り

6次産業化を目指すために大切なことは何でしょうか。

6次産業化ありきではなく、自分の生産物や取り組みの価値を上げることこそが大切だと考えています。それを踏まえた上で6次化を目指すのであれば、良いことだと思います。

「良い品質のものを直接顧客に届ける努力」が何より重要だと感じます。自ら積極的に戦略的な情報発信をし、ファンをいかに作れるかどうかが、事業成功の鍵だと認識しています。

私自身も努力を重ねている最中ですが、ファン作りの一環として「オキナワカカオ部」を立ち上げました。部員になってくださった方にはカカオの苗を送り、共に育てながら、よりオキナワカカオに深い興味を抱いてもらえるよう活動しています。
活動を支援してくださる方、興味をもってくださる方と直接顔を合わせる機会ができるよう、東京で説明会兼チョコレートの試食販売会を行うなどの活動もしています。

まだ市場に出回っていない農作物を作る。それだけでも大きな挑戦ですが、川合さんには6次産業化というさらに大きなビジョンがありました。カカオという農作物を通して地域活性化を目指す川合さんの事業には、これからの地方産業のヒントが隠されているのではないでしょうか。

オキナワカカオ部

http://okinawacacao.com/

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