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伝統ある“気仙椿”で地域に産業を 陸前高田市の椿油製油工房「椿のみち」

伝統ある“気仙椿”で地域に産業を 陸前高田市の椿油製油工房「椿のみち」

2017年09月22日

ネパールでハンディクラフトや食品の企画開発を行い、適正な価格で継続的に輸入するフェアトレード(※)を行ってきた有限会社ネパリ・バザーロ。今、経済的に成長しつつあるネパールで、物理的な支援のみならず継続して取り組む仕事を作ることで、現地の女性たちの自立をサポートしてきました。東日本大震災の被災地、岩手県陸前高田市で、復興支援として始まった「椿油プロジェクト」、北限地帯に咲く「気仙椿」の椿油を使った産業作りに取り組んでいます。今回は、ネパリ・バザーロの高橋百合香(たかはしゆりか)さんに、「椿油プロジェクト」でどのようにして地域の産業を育てているのか、お話をうかがいました。

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(※)フェアトレード(Fair Trade):発展途上国で作られた作物や製品を適正な価格で継続的に取引することによって、生産者の持続的な生活向上を支える公平貿易の仕組み。

地域の伝統食でもあった椿油 伝統を守りつつ資源として残したい

椿の産地といえば伊豆大島が有名ですが、陸前高田市のある広田半島は温暖な気候で、昔から椿の木が多く自生していました。椿は根がしっかり張るので、植えれば防風・防潮にも役立ち、花が咲けば美しく観光資源としても活用できます。

そこで「地域の伝統を守りつつ、将来世代へ資源を残したい」という地元の人々の願いを受けて、北限の椿「気仙椿油」で産業を起こすことになりました。

ところが、十分な椿油を得るには、気仙地域の椿の実だけでは足りません。まずは、利島など伊豆諸島の産地から原料を仕入れて事業をはじめました。同時に、「ゆくゆくは地域の椿の実の割合を増やしていきたい」と椿の植樹も進めたといいます。

「植樹体験ツアーを企画し、全国から参加者を募りました。のべ100人の方が参加され、2回の開催で計150本の椿の木を植えました」(高橋さん)。

世界に誇れる高品質を実現 すべて手作業で作られる「椿油」

2012年10月中旬には、「製油工房 椿のみち」が完成し、同年11月より製造販売がスタート。この地域では椿油はけんちん汁に使ったりと、伝統食として常食されていたことから、食用の生しぼり椿油の製造を目指しました。製油工程は全て手作業で行われます。

まずは、椿の実を手で1つずつ選別し、その実を洗って乾燥させて粉砕し、手作業で殻を取り除きます。さらに実を再選別して、高品質の実だけが残るようにします。それを圧搾、ろ過し、低温殺菌後に瓶詰めしてラベルを貼って完成になります。

手作業のため工程数は多くなりますが、じっくりと丁寧に作られているため、最高品質の出来栄えになったといいます。

レシピ提案で“食べる”椿油の魅力をアピール

椿油といえば、髪や肌につけるイメージがありますが、食用のイメージはほとんどありません。そのため、ネパリ・バザーロでは、まず食用椿油の魅力を伝えることからはじめました。

「椿油は、けんちん汁や炒め物に加えることで、やさしくまろやかな風味になります。和食だけでなく、サラダやカルパッチョなどのドレッシングオイルにもおすすめです」。

国産100%の原料で作られた安全・安心な油であり、悪玉コレステロールを減少させる効果が期待されると言われるオレイン酸が豊富なことなど、いかに体に良いかということも伝えました。すると、次第に椿油に興味を持ってくださる方が増えていき、販売数が伸びていったといいます。

売れれば売れるだけ赤字に 化粧品開発の着手で赤字を脱出

障がいがある方でも働ける場所にしたい、という思いから手作業の工程を増やしたため、原価が高くなってしまい、売り上げが増えれば増えるほど赤字になる、という困った事態に陥ってしまいました。
この状況を打破し、椿油プロジェクトとして経営的に自立するため、ネパリ・バザーロでは食用椿油以外の製品を作ることを考えました。そこで椿油が美容油として有名であることに着目し、2013年1月に椿油を原料にした化粧品開発へ乗り出すことになったのです。

まずは、製品を生産してくれる工場を探すことから始めました。同時に、化粧品の効能を上げるために、被災地の特産品から役立ちそうな素材を選んでいきました。

「宮古市の三陸わかめと、大船渡市の北限のゆずのエキス、野田村の海水塩、そしてアルコールには奥州市の米からつくられる天然エタノールを選びました。ネパールのハチミツも加えています。こうして、天然成分が豊富で保湿作用も期待できるコスメラインが誕生しました」。

2013年11月に製品が完成。ブランドネームをネパリ・バザーロが目指す「共に生きる社会」からとって、中立公平で学びやすい国際共通語として知られるエスペラント語で「共に」という意味の「クーネ」と名付けました。

2016年1月に、日本最大の化粧品専門展「国際化粧品展」に出展したところ、コンセプト、デザイン、品質ともに高い評価を得たそうです。「ソーシャルプロダクツ・アワード2017」では、特別賞「東北」を受賞しています。

顔が見える関係を大切に売上向上を目指す

「クーネ」は製造コストが高いため、大手流通にのせて販路を拡大することはできません。しかし、大手生協や共同購入会、協力企業との連携や、インターネットを使っての直販などで徐々に売り上げを伸ばしていっています。

お客様からも、「敏感肌で化粧品探しに苦労していたけれど、やっと自分に合った化粧品に出合えた」「ローションを使ったら肌がしっとり、モチモチになった」「しっかり保湿ができて、潤っている感じがする」など、喜びの声が多く寄せられているそうです。

「これからも食べて体に良く、肌につけて美容に良い、日本伝統の素晴らしい椿油の魅力を伝えていきたいですね」と高橋さんは笑顔で語ってくれました。

「椿のみち」は、地域に開かれた事業所として、障がいがある方など様々な事情で仕事を得にくい方でも、地域の伝統である「気仙椿油」を守り育て、世界に通用する品質の椿油を製造することに誇りに、いきいきと働く場になることを目指しています。持続可能な産業を起こす「椿のみち」の活動は、様々な地域にとっての気づきとなることでしょう。

有限会社ネパリ・バザーロ

http://kune.jp
写真提供:ネパリ・バザーロ

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