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生産者の試み

フランス料理が教えてくれた地産地消と食育、食材への熱き思い

フランス料理が教えてくれた地産地消と食育、食材への熱き思い

2017年10月02日

横浜市でフレンチレストラン「ペタルドゥサクラ」のオーナーシェフをつとめる難波秀行(なんばひでゆき)さんは、毎日のように農家のもとを訪れ新鮮な野菜を仕入れています。メニューには生産者の名前や生産地が記載され、料理の主役は食材であることのこだわりや、農家と食材に対する深い愛情にあふれています。地産地消を実践し続けている難波さんの食への思いや、地元の子どもたちへの食育活動についてうかがいました。

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フランス料理の基本は地産地消

難波さんが地産池消を実践するきっかっけは何だったのでしょうか

私は岡山県出身で、子どもの頃から近所で採れた野菜や果物などのおすそわけをいただくことが多く、「食材は住んでいる近くで作られ、わけてもらうもの」という環境で育ちました。ですので、「近くの畑で作られた食材を新鮮なうちに食べる」という考え方が、今も基本的にあると思います。

フランス料理の修行のため2度渡仏、3 年間暮らしたフランスには、「キュイジーヌ・テロワール」という言葉があります。直訳すると「大地の料理」といい、「その土地で採れた作物を使った料理を、その土地で食べる」という意味なんです。フランスは郷土色が強く、それぞれの地方がその土地で作る作物に誇りをもっていて、地産地消の考え方が古くから浸透しています。

レストランのシェフも、その土地で作られた食材をメーンに使い、足りないものだけを業者から仕入れるというスタイルが主流です。だから、私もそれと同じように行っています。

農家の方のもとに出向くと、野菜作りへの思いを聞くことができたり、彼らがどんな風に野菜と向き合っているかを肌で感じることができます。私は、自分の料理を通して野菜の良さを引き出し、農家の方の思いを伝えていくことを第一に考えています。

料理を食べたお客様から「この野菜はどこで買えるの?」とお問い合わせをいただくことも多く、地元の農家を知ってもらうきっかけになればいいと思っています。先日は、横浜市内の農家が育てた野菜を、レストランの店頭で直売するイベントも行いました。

難波さんの食材に向き合う姿勢は、他のシェフと共通するものでしょうか

フランスでの修行を終えてから、三國清三(みくにきよみ)シェフのレストランの一つ「ミクニヨコハマ」を任されました。三國シェフといえば日本のフランス料理界の第一人者で、食材から直感的に料理のイメージを広げる一方で、農家さんのもとへも度々訪れています。

業者から仕入れた食材を使って料理を作る、というのが一般的なレストランのやり方だと思いますが、私も「ミクニヨコハマ」の時代から、地元の畑へ出向いて農家の方と付き合いをするようになったんです。

「作りたいと思う料理」があってそれに合う食材を探すのではなく、その時々で生産者から届く旬の食材がまず主役であるということ。その食材のおいしさを最大限に引き出した料理を作るという姿勢が、三國シェフと似ていると感じます。

フランス料理の考え方を子どもの食育活動に活かす

難波さんが行っている食育活動も、フランス料理から学ぶことがあったそうですね

1990年にフランスではじまった味覚教育イベント「味覚の一週間」が、2011年より日本でも開始されました。第一回目のゲストには、私がフランスで修行していた三ツ星レストランのシェフ、クリスチャン・ルスケール氏が呼ばれました。そこに通訳として協力させてもらったことが、食育に携わるようになったきっかけです。

彼がイベントの中で、フランス料理でホタテ貝とアーティチョーク(チョウセンアザミ)の相性が良いとされる理由は、「アーティチョークの肥料としてホタテ貝の貝殻を粉にしたものが使われているから」と説明しました。双方の食材が持つ味の調和だけではなく、生育の過程から関りがあるため、ホタテ貝とアーティチョークが良く合うのは当然のことなのです。

そのような食文化を多くの子どもたちに伝えたいと考え、自分でも食育活動を開始しました。

地元食材を使った食育活動への思い

具体的な食育活動の内容について教えてください

地元農家の食材を使い、小学校の給食のメニューを企画する「スーパー給食」や、5つの味覚(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)を体感する「味覚の授業」、フランス料理のテーブルセッティングを小学校の教室に再現して、クイズ形式でフランス料理のマナーを学ぶ授業などを行っています。

そのほか、親子で収穫体験や乳搾り体験に参加して食材について勉強するイベントも当店主宰で開催し、「もっと機会を増やしてほしい」と好評をいただいてます。

また授業ではありませんが、今のお店の厨房を近所の小学生の通学路に面したところに作り、出窓からフランス料理の調理風景が見えるようにしています。

人の「味覚」は、幼少期に形成され、10歳から12歳で完成という説もあります。そのため、小さな頃から食材の味や食事の場を楽しみ、感じる力を養ってほしいと思っています。また個食(家族に属する個人が、個人で食事をすること)が進んでいるなか、同じ料理を家族で囲んで一緒に食べ、コミュニケーションをとることの価値も伝えたいです。

フランス料理で古くから根付いている地産地消を自ら実践し、食材に敬意をはらい、その価値を評価できる次世代の育成にも「食育」という形で携わっている難波さん。自身の店でミシュランの星を取るという目標を掲げながら、食への熱い情熱は尽きることがありません。

関連記事:農家の畑を毎日訪れる フレンチシェフに聞く「信頼できる農家」とは

ペタルドゥサクラ

横浜市泉区弥生台5-2
045-443-5876
http://petaledesakura.com/

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