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能登F-Fネットワーク「料理人と生産者が行き交う」コミュニティ Third Kitchen Tourの取り組み

能登F-Fネットワーク「料理人と生産者が行き交う」コミュニティ Third Kitchen Tourの取り組み

能登半島の付け根にある石川県七尾市。ここは、世界農業遺産にも認定され、豊かな地域資源を持ちながらも、過疎化や一次産業の後継者不足が深刻化しています。それらの地域課題を何とかしようと、能登の若手漁師・農家・シェフが立ち上がり、「能登F-Fネットワーク」を結成し、「能登で農業・漁業に携わって働き、暮らす人を増やすことで『能登の里山里海』を次世代に継承する」ことを目的としたプロジェクトを展開しています。行政のみならず、飲料メーカーのキリン株式会社も同社のCSV活動(※1)の一環としてサポートしています。今回は、プロジェクトの一つである「Third Kitchen Project」の料理人ツアーに密着しました!

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Third Kitchen Projectとは?

七尾の若手生産者をシェフが訪ね、特色ある野菜や魚などの能登食材を軸として、交流し、学び合うことによって互いの「食」に関するステップアップをするというプログラムが「Third Kitchen Project」です。
お店でもない。自宅でもない。シェフにとっての3つ目のキッチンを能登七尾に用意し、飲食店と生産者との継続的な繋がりを深めることで能登・七尾の交流人口増加、食材のブランド化、さらには地域コミュニティの活性化、担い手づくりを目指しています。
その具体的な活動のひとつが「Third Kitchen Tour」。シェフが地元の生産者を定期的に訪ねるイベントを開催しています。

農・水加工の組合せによる食のブランド化により収益性を高め、持続可能な産業や地域の誇りを創出していく意欲的な取り組み。収穫の季節を迎えた9月初旬、4回目のツアーが実施されました。今回は漁業と農業の2ヶ所の現場を見学し、とれたての食材を囲んだ交流と、稲刈り体験が行われました。

■当日の行程■
10:00 七尾駅に集合⇒全員でマイクロバス移動。
~車内で簡単なオリエンテーション~
10:30 【漁業見学】鹿渡島定置(漁業)着
①神経締め見学 ②定置網の仕組みについての説明
11:30 鹿渡島定置を出発
12:20 【農業見学】中島アグリサービス 畑着
12:30 キッチンカーを使って調理スタート!※1
13:00 ランチを食べながら交流タイム@畑
14:00 田んぼへ
①米の収穫体験 ②米の乾燥作業場見学
15:30 中島アグリサービス発
16:00 七尾駅で解散

■当日のレポート■
10:00 七尾駅に集合
この日は金沢市内の有名ホテルの和食シェフや、創作料理のシェフなど、専門分野・経験が異なる
7人が集まりました。漁港に着くまでは車内で簡単なオリエンテーションが行われました。
10:30 【漁業見学】鹿渡島定置 着

能登

はじめに、能登F-Fネットワーク代表 順毛弘英(ジュンケ ヒロフサ)さんが所属する株式会社 鹿渡島定置へ。まずは、模型を使って順毛さんから定置網の仕組みについてのお話を聞きました。
魚の価格は網をあげる時期や、他の船の獲れた量によって決まるなど、定置網の構造から、魚の値段のつけ方の仕組みまで、裏話を交えた話に参加者は興味津々。
そのあと、参加者は、実際に獲れたばかりの生きた魚の神経締めを体験しました。神経締めは、普段の調理の場では行わない作業だけに、参加者は緊張した様子。漁師の方の指導に耳を傾け、質問しながら包丁を動かず姿は真剣そのものでした。ここで神経締めした魚は昼食での食材になりました。

能登
大量の魚を積み込んで、バスは次の場所へ移動します。
11:30 鹿渡島定置を出発
漁業
次の目的地は田んぼのど真ん中。
12:30 キッチンカーを使ってその場で調理スタート!
田んぼ
平田さん,川嶋さん
能登 F-F ネットワークのイタリアンシェフ平田さんと 和食料理人の川嶋さんの出番です。平田さんは能登の食材に魅せられて、移住してきたという経歴の持ち主。川嶋さんはUターンで七尾に戻ってきました。漁港でいただいた新鮮な魚と採れたての野菜で昼食を作っていきます。

この日のメニューは
■冬瓜厚揚げ
■冬瓜唐揚げ
■オクラ冬瓜ゴマ醤油漬け
■能登豚肩ロースの藁焼き
■藁で炙ったシイラのタタキ
■白ネギオクラ味噌汁
■冬瓜レモンシロップ煮柚子風味
■白米
などなど。豊富な食材で様々な料理がテーブルに並びます。

キッチンカー
今回から導入されたキッチンカーはこのツアーのために、メンバーの一人が中古車を購入して改造したそうです。キッチンカーに搭載する機材・調理器具は、シェフが選んだこだわりの品ばかりです。
青空の厨房でいよいよ調理が始まります。参加者と平田さん、川嶋さんが協力し、自慢の腕をふるいます。魚は当日何が入荷するか分からなかったのでその場で作る料理を決定しました。
即興で作る料理が決まるのも、もてなす側も、参加者も料理人だらけというツアーの醍醐味です。
 
【関連記事はこちら!】
>海と山の循環をいかして島で米をつくる、平均年齢65歳 7人の農家がつくる「本氣米」の挑戦

採れたてのオクラ・冬瓜・ビーマン

シイラ

この地方ではよく採れるシイラ

能登豚

藁で炙った能登豚

普段神経締めをしたばかりの魚を扱うことのないシェフからは、包丁を入れたときの感覚が違い、切りにくいとの声もありました。
文字通りとれたて新鮮な魚を調理できるのもこのツアーならではの光景です。
プロの料理人が集まってできる一皿一皿は、どれも絶品。できた側から、つまみ食いをしながら調理は進んでいきました。

13:00 ランチ食べながら交流タイム@畑

調理がひと段落したところで、できあがった料理をみんなで「いただきます」。そこから交流タイムがスタートです。テーブルを囲みながら、シイラは地元では貴重ではなく安価であること、能登豚は流通が確立されていないので、地元でしか食べられないことなどの食材の話から、これまでのツアーの話。「食」を中心に様々な会話が弾みました。

シイラ

藁で炙ったシイラのタタキ

お刺身

とれたてのお刺身

冬瓜

冬瓜のてんぷら

米

左側がモミを残したまま1年寝かした米・右は新米

冬瓜

冬瓜厚揚げ

オクラ冬瓜ゴマ醤油漬け

味噌汁

白ネギオクラ味噌汁

能登豚

能登豚肩ロースの藁焼き

参加者は能登の食材を使った料理の数々に満足した様子でした。料理人らしく、食材に対する鋭い質問など、関心の強さも印象的でした。参加者の一人は「生産地でしか食べられない新米と、古米の食べ比べも、改めてその食味の違いを実感する良い機会になった」と話してくれました。貴重な能登豚など、ここでしか食べられないものをおいしく食べられるのは、このツアーの参加者特典と言えるのではないでしょうか。新たな食材との出会いは、参加者にとって良い刺激にもなるようで、過去3回のツアーでは、食材を見ているうちに自分の創作料理メニューを作ってしまうシェフもいたそうです。
能登の食材を使った新しい料理が生まれるのもこのツアーならではです。
おなか一杯になった後はツアーの最後の行程へ。

12:20 中島アグリサービス 畑着

中島アグリサービス

14:00 田んぼ見学へ
実際の農業の現場、中島アグリサービスの松田さんの田んぼへ。
中島アグリサービス
最新鋭の機械で収穫を行う現場で、収穫体験をしました。
機械をまっすぐ進ませるには技術が必要ですが、初めて機械に触れる参加者は直進できずに悪戦苦闘。少しだけ曲がりながらも、なんとか苗を刈り取ることができました。刈り取りの後は乾燥業場を見学。収穫の最盛期まっただ中のこの日は、大きな乾燥機4台がフル活動をしていました。

15:30 中島アグリサービス発
16:00 七尾駅で解散ツアーの全行程が終了して七尾駅へ。

参加者の満足度は高く、このツアーを通じて新しい料理のアイディアが浮かんだようでした。

お店でもない。自宅でもない。シェフにとっての3つ目のキッチン。能登七尾を楽しめるツアーは今後も定期的に開催されます。

良い食材を探しているシェフ、生産者とつながりたい料理人、新しい取り組みをしてみたい方、このツアーに参加してみてはいかがでしょうか。

【次回開催のお知らせ】
Third Kitchen Tour Vol.5~食材と食文化を大切にする料理人のための第3のキッチン~

◆日時:10月17日10:00から(終了未定)
◆集合・解散場所:石川県七尾市 七尾駅
◆費用:5,000円(1人税込価格)
※上記価格に、農場及び漁場への体験訪問(合計2カ所を予定)ランチ料金が含まれています。
※集合解散場所への往復の交通は各自でご手配ください。
◆参加対象:飲食店の料理人またはサービス担当の方

詳細は下記をご覧ください。
https://www.fb.com/1578406715566549/

■能登F-F Networkメンバー■

①鹿渡島定置 順毛弘英氏(定置網漁)
七尾の若き定置網漁師集団を率いる船頭。釣り好きが高じて脱サラして漁師になった。所属する鹿渡島定置は「平成26年度ふるさとづくり大賞」にて内閣総理大臣賞を受賞。
②能登風土 酒井光博氏(農業)
七尾の能登島にて野菜を育てている酒井氏。就農前から和倉温泉でスナック経営もしているという「二足のわらじ系若手農家」。東京のこだわりスーパーなどに販路をもつ。
③中島アグリサービス 松田友也氏(農業)
七尾の中島地区の米農家。伝統野菜中島菜などの野菜も作っている農業法人の次世代。6次産業化が進んでおり、加工品販売や冬の期間には焼き牡蠣レストラン「可(とき)」などを運営。
④平山水産 平山泰之氏(刺網漁
能登島のタコ漁師。メディアにも度々登場する人気っぷりで、自ら東京や大阪のレストランにも直販をしている。「タコの洗濯機」はかなりの見もの。
⑤山田水産 山田慎吾(牡蠣養殖)
中島の牡蠣漁師。牡蠣養殖業は2015年から始めたばかりで、事業継承を経て現在に至る。現在は主に店頭販売が主となっており、夫婦二人三脚で販路拡大を目指している。
・移住イタリアンシェフ 平田 明
能登半島、里山里海の恵みが織りなす色とりどりの料理
Villa della Paceシェフ
・Uターン和食料理人の川嶋 亨
和倉温泉「日本の宿 のと楽」茶寮宵待 料理長
・案内人 森山 明能
株式会社御祓川 ひと育て課 シニアコーディネーター

(※1)
■キリンCSV活動(社会と共有できる価値の創造)
グループの強みを活かして社会課題に取り組み、発想の転換や創意工夫を促し、イノベーションを生み出すことで、企業の組織能力が向上し、消費者とっての価値を持続的に提供できると考え、キリングループは、「健康」「地域社会」「環境」という3つの社会課題に取り組み、消費者と共に幸せな未来をめざすことを目標として活動している。

■キリンの復興支援「絆プロジェクト」
キリングループは、東日本大震災の復興支援にグループをあげて継続的に取り組む「復興応援 キリン絆プロジェクト」を立ち上げ、3年間で60億円を拠出することを決め、活動を進めてきた。
被災地と一緒に復興に取り組みたい、との思いから、今後も「絆を育む」をテーマに、被災地の “地域社会の絆”や”家族の絆”を一層深められるよう、「地域食文化・食産業の復興支援」「子どもの笑顔づくり支援」「心と体の元気サポート」の3つの幹で復興支援活動していく。

キリンは現在、「復興応援 キリン絆プロジェクト」で培った「食」を通じた地域活性の経験を、東北外のエリアでも活かしていきたいと活動の幅を広げている。農業・水産業をベースとした新しい地域産業のカタチを支援していくこのプロジェクトの第1弾が、「石川県七尾市」からスタートした。

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