出荷から販売まで1日 農産物がスーパーの「農家の直売所」に陳列されるまで
従来、生産者は自分が作った野菜や果物がどの売り場に並ぶのか、知ることができませんでした。しかし、「農家の直売所」の販路を使えば、生産者自身が店舗の特長や売り場情報を参考に、どこのスーパーに出荷するのか選ぶことができ、価格や販売数量の設定まで生産者自身が決めることができます。
農産物がスーパーの「農家の直売所」に陳列されるまでのフローを詳しくご紹介していきましょう。
1:集荷場に野菜を持ちこむ
全国70ヵ所(2017年9月27日現在)に農業総合研究所の集荷場があります。生産者はこの集荷場へ個包装した状態で農産物を持ち込み、そこでバーコードを発券、貼付し、出荷するお店へ振り分けます。
2:農業総合研究所のトラックでスーパーの物流センターへ
振り分けられた農産物は、農業総合研究所が契約している物流会社のトラックで、各スーパーの物流センターに運ばれます。
3:各スーパーの物流センターから各店舗へ
各スーパーの物流センターに届けられた農産物は、各店舗へ配送されます。翌早朝には到着し、開店までに青果担当者が農産物を陳列します。
原則として、出荷から1日で店舗に並ぶので、より新鮮な農産物を消費者に届けることができる仕組みになっています。
「農家の直売所」に出荷するには、どうすればいいのでしょうか。
「まずは、当社にお問い合わせください。農作物の生産者であればどなたでも出荷いただけるという間口の広さが『農家の直売所』の特長です。出荷品目については、野菜や果物、花卉、農産加工物が中心ですが、今後は米も扱う予定です」。(農業総合研究所)
中間マージンを大幅カット 生産者が「農家の直売所」を利用するメリットとは
「農家の直売所」の流通システムは非常にシンプルです。一般的な流通経路を利用すると、農産物が生産者から消費者の元に届くまでに、様々な中間業者が介在するそうです。そして、その都度マージンが発生するので、最終的に生産者の手取りは販売価格の30%程度だと言われています。
一方「農家の直売所」を利用した場合、自分で設定した販売価格の約65%が生産者の手取りとなります。「農家の直売所」へ出荷し、収入が増えたという生産者もいて、「作付面積を拡大することができた」「新たなハウスが設置でき、さらに出荷量が増えた」という声も寄せられているそうです。
「農家の直売所」の良さは収入面だけではありません。
「商品のバーコードに生産者名が書いてあるので、おいしい野菜を見つけたら、次も同じ人の作った野菜を買おうと探して買ってくださる方も多いんですよ。中には、生産者への手紙を持ってきてくれた方もいました」(農業総合研究所)。
「農家の直売所」を利用して売上げを上げるコツとは
「農家の直売所」では、生産者自身が出荷先と価格を設定することができます。つまり、やり方次第で売上げアップにつながるということです。農業総合研究所でも、サポート体制を整えています。
「自身で育てた野菜や果物が、どのエリアのどのお店で、どのくらい売れたか分かるよう、当社より売上データを毎日メールで送っています。
生産者専用ポータルサイトを通じて、月間の売上や店舗、相場に関する情報などを提供しています。これらの情報を通じて出荷先の選択、出荷量の調整ができ、出荷価格についても相場価格を参考に値付けをすることができます」。
売上げを上げるコツはあるのでしょうか。
「こだわりのポイントをいかに消費者に伝えられるか、そのこだわりを値段とどのように折り合いをつけるかが重要です。
たとえば、生産者自身でシール等を用意してPRしたり、袋の詰め方や野菜の向きなど荷姿を整えたり、より良く見せる工夫をするということも必要です。
出荷先はたくさんあるので、生産者自身が売れ行きの動向を見ながら、いかに効率的に出荷できるかデータをもとに分析することが大切です」。
「農家の直売所」は、生産者と消費者をつなげる独自の物流網と、生産者が売上データを管理できるITプラットフォームを持っており、青果物を多く消費するスーパーとも強いコネクションがあります。
今後の農業総合研究所の目標は、「農家の直売所」を生産者が当たり前に利用するような“農産物流通プラットフォーム”にすることだといいます。そのために、集荷場や販売先を増やし、協力してくれる生産者も増やしていきたいと考えているそうです。
生産者が選べる販路が多様化した今、選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。
株式会社農業総合研究所
画像提供:株式会社農業総合研究所