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農家と二人三脚で取り組む 「農業デザイナー」のブランディング術

農家と二人三脚で取り組む 「農業デザイナー」のブランディング術

2017年10月11日

デザインを通して農業をサポートする“農業デザイナー”として、東京都西部を中心に活動をしている、株式会社コトリコの代表取締役、江藤梢(えとうこずえ)さん。デザイナーと聞くと、ロゴやパッケージのデザインをするというイメージが大きいですが、江藤さんは農家と二人三脚で農園や商品のブランディングを行っています。どのようにして農家をサポートしているのか、お話をうかがいました。

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ブランディングは農作物の栽培に似ている

  江藤さんは、農業デザイナーとして農業法人や個人農家、行政や農協等の農業支援組織などを対象に、農業分野のブランド作りサービス「トリコbranding」を提供しています。

「トリコbranding」とは、売上と価値の向上を目指し、お客様を“虜”にするブランドやデザインを作るサービスで、広報からPR業務までサポートします。実践的なデザインセミナーやワークショップも開催しているそうです。

「ロゴやパッケージを作っただけではブランドとは呼べません。ブランドとは育てるもの」と、江藤さんは言います。

「ブランディングは、農家さんの畑仕事に似ているかもしれません。インタビューなど、情報収集や分析は『土壌調査』、経営戦略やブランド作りのプランニングは『土作り』、商品や事業の開発は『品種の選定と植え付』。販促計画の進行管理は『栽培管理』、商品や事業、販促品の完成は『収穫 、商品やサービスの公開は『出荷』といった具合です。

出荷して、そこで終わりではありません。 出荷が終わったら土壌調査に戻るように、ブランディングにおいても、ブランドの育成のために同じサイクルを繰り返します」。

「トリコbranding」のデザイン手法は緻密な情報収集から始まる

コトリコのデザインは、農作業でいえば土壌調査や土作りに重きをおき、緻密な情報収集から始まります。商品はもちろん、農園や農家ついて働く環境や販売環境をじっくり聞き出し、インタビュー時の空気感を感じ取ります。その情報を元にして、理論的にデザインを設計していくそうです。

江藤さんが目指すのは、消費者がひと目でクライアントの“虜”になってしまうデザイン。それは、商品の分かりやすさであり、満足感であり、結果として売上げにつながるデザインだといいます。

「私は以前、都内のデザイン事務所でテレビ番組や商業ビルのキャンペーンポスターなどを作成していました。制作物を大量に作って、大量に消費される日々に違和感を覚えて退職したという経験があります。

なので、クライアントと一定期間じっくり向き合って丁寧に取材した上で、農園や商品の魅力をじっくり引き出しながらデザインできることは本当に幸せです」。

  東京新規就農ブランド「東京NEO-FARMERS!」を手掛ける

江藤さんが携わった事例として、「東京NEO-FARMERS!(ネオファーマーズ)」のブランディングについてご紹介しましょう。

「東京NEO-FARMERS!」は、東京都内で就農した人や新規就農を目指す人、就農者を応援する人などが集まるというプロジェクトです。月1回の定例会で情報交換を行うほか、地域活動や共同販売、マルシェ出店などを行っています。

2009年頃、東京都農業会議の松澤龍人(まつざわりゅうと)さんから始まったプロジェクトで、これまでに35組の新規就農者が誕生しました。江藤さんは初期の頃から、このプロジェクトに参加していたそうです。

“東京で新規就農”ということは、実現不可能と思われがちです。当初は理解者や協力者が少なかったといいます。そこで、認知度を上げるためにも江藤さんはプロジェクトに名前を付けることを提案しました。その名前が、「東京NEO-FARMERS!」です。

「メンバーの一人がFacebook(フェイスブック)で『俺たちはNEO-FARMERだ』と投稿していたのを見つけ、その方に許可をもらって松澤さんに提案しました」。

提案は採用され、江藤さんがロゴ、パンフレット、販促物、イベントディスプレイなどを作ることになりました。ホームページも立ち上げ、構築は元IT技術者のメンバーが手掛け、運営は江藤さんの担当となりました。

こうして「東京NEO-FARMERS!」という名を掲げて地道な活動を続け、やがてプロジェクトが広く知られるようになりました。プロジェクトの内容だけでなく、メンバーにも注目が集まり、テレビや雑誌などメディアにも数多く取り上げられ、講演や視察の依頼も増えたそうです。

「松澤さんのプロジェクトに、ブランディングやデザインという形で参加できて、とても嬉しいです。私はかつて就農を目指していました。その夢を、東京NEO-FARMERS!の方々が叶えてくれているようで、皆さんとご一緒できることが本当に幸せです」。

  顧客ひとりひとりと向き合う姿勢で個人農家からの依頼も

商品を販売していくうえで、パッケージは不可欠です。プロのデザイナーに依頼すれば経費がかかり、個人農家にとってはハードルが高いといえるでしょう。しかし、コトリコの顧客には、個人農家のお客さんも多いそうです。

「新商品が出来た時にどう売り出そうか、など単発のお仕事としてのご相談も、長い目で見て売り上げを伸ばしていきたいなど中長期的なご相談も、柔軟にお受けできるということが喜ばれています」。

型にはまったサービスではなく、じっくりとお客さんと向き合うスタイル、そして江藤さんの人柄が農家の支持を集めているのかもしれません。

「売上げをどのくらいの期間で伸ばしていきたいのか、方法論は農家さんにより様々です。そこを理解して、農家さんと足並みを揃えて、合意のもとに進めています。いきなり、外科手術をするのではなく、内科的な治療や処方から始めるイメージです。

時にはデザインに取り掛かるまで半年や1年、稀なことですが5年、10年と待っていたこともあります。

たとえ仕事が発生しなくても、関係が続いていることはありがたいですね。近況の情報交換や圃場の様子、話題の農産物や各地域の流行などを直接聞けるだけで嬉しいし楽しいんです」。

江藤さんは、一人ひとりの農家の思いに寄りそい、農産物のアピールという枠を越えて、作り手の情熱もデザインで表現しているのでしょう。農業デザイナーという仕事は、農業が好きで人が好きという江藤さんにとって、天職といえるのではないでしょうか。

株式会社コトリコ

https://www.cotoricozue.com

画像提供:株式会社コトリコ

 

 

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