小規模な養豚農家が集まって養豚の6次産業化を実現
群馬県渋川市を本拠地とするグローバルピッグファームは、主に家族経営の養豚農家が集まって、国内トップレベルの技術革新を行うことを目的にスタートした企業です。育種(品種改良)、飼料設計、生産管理、出荷、販売までを一貫して行い、自社ブランド「和豚もちぶた」の6次産業化(※)を実現しています。
※6次産業化とは、1次産業である農林水産業、2次産業である製造業、3次産業である販売業・サービス業すべてに取り組むこと。
現在、畜産業において、AI(人工知能)を用いたウシの出荷予測などが行われています。一方、養豚業はウシに比べて商品単価が安く、コストをかけてシステムを構築することは困難でした。そのため飼育担当者が過去の経験をベースに出荷日を決め、運送の手配や頭数の調整を行っていました。しかし、それでは経験とノウハウを特定の人物に依存してしまい、経営拡大を目指す上では問題があります。
クラウド型のAIサービスを活用
AIシステム導入におけるコストの問題を解決し、属人的な出荷予測業務を標準化するためにグローバルピッグファーム社が選んだのが、マイクロソフトのクラウド型AIサービス「Azure Machine Learning」です。
このサービスは、AIシステムをクラウドで提供することで、自前で構築する場合に比べて、低コストでの導入を実現しています。また様々なアルゴリズム(問題や課題を解決へ導く計算や処理するための方法)があらかじめ用意されているため、導入が短期間で可能です。さらに大手マイクロソフトの強力なAIシステムを、インターネットを経由して利用するクラウド型のサービスなので、必要な分だけ、必要な時に利用することができ、コストも抑えることができます。
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10年分の出荷データで検証
AIシステムの導入にあたって、クラウドAIを活用したビジネス支援を行っているナレッジコミュニケーション社が、まず過去10年分の出荷データを用いて導入前検証(PoC)を実施しました。
ナレッジコミュニケーション社は、実際の出荷データと、気象データなどブタの出荷に影響を及ぼすと考えられる外部データを組み合わせ、AIシステムを用いて出荷予測のモデルを構築しました。その結果、下記のような成果を得ることができました。
・AIシステムにより、最短1週間の誤差で予測が可能。
・経験的に、出荷時期と関連があると考えられていたデータについて、実際の関連性を立証。
・ばらつきのあるデータから精度の良いモデルを構築する手法(データクレンジング手法)の確立。
・既存システムとの連携の仕組みは、およそ1ヵ月半で構築完了。
・導入前検証は、およそ3ヵ月で完了。
今後はさらに、養豚場の温度データをリアルタイムに収集して空調管理を行うなど、出荷予測と連携した養豚のIoT化、AI化の推進を行っていきます。
これまで担当者の経験に頼っていたブタの出荷時期が、最新のAI技術を活用することで、誰でも、より正確に行えるようになっていくことでしょう。AI、IoTなどの活用は、農業の可能性を大きく広げてくれそうです。
参考