とちおとめとはどんなイチゴ?由来や特徴など
「とちおとめ」は、栃木県農業試験場で育成され、1996年に品種登録されたイチゴです。イチゴの新品種は、異なる品種のイチゴ同士を交配して作られます。「とちおとめ」は、色鮮やかで形の良い「久留米49号」と大粒で甘い「栃の峰」から生まれました。「久留米49号」は「女峰」と「とよのか」を交配した品種です。
「とちおとめ」の特徴は、それまで栃木県で主流だった「女峰」よりも実が大きく、大きいもので30〜40gで平均は15g程度です。形は均整のとれた円錐形で、果色は鮮やかな赤色で光沢があり、果肉も薄紅色に染まります。糖度は9~10度と高く、酸度が0.7度と低いため、甘さが強くほどよい酸味が感じられます。果汁が豊富で、果実はしっかりしているため、食味に優れ、比較的日持ちがすることからも人気が高く、品種登録から25年以上経った今も東日本の主要品種となっています。
主な産地は栃木県!約80%のシェアを誇る
「とちおとめ」は、主に東日本のイチゴ産地で栽培され、東京都中央市場の取扱量では栃木県産が最も多く全体の約80%を占めています。栃木県のほかにも、茨城県、千葉県、埼玉県などで栽培され、全国のいちご作付面積の3割を占めています(2021年11月時点)。栃木県では、近年、新品種が誕生していますが、県内のイチゴ栽培面積の8割以上が「とちおとめ」です。ちなみに 、栃木県は、イチゴの作付面積、収穫量、出荷量で全国1位(2021年産)を誇っています。
旬の時期は1月〜4月!スーパーでも手軽に買える
「とちおとめ」は、産地が関東から東北地方まで広く、生産者も多いため、比較的長い期間にわたり市場に出回ります。旬は冬から春で1〜4月が最盛期ですが、クリスマスや年末年始の需要に合わせて11月から店頭に並び、翌年6月頃まで楽しむことができます。本来、露地栽培のイチゴの旬は初夏ですが、「とちおとめ」は促成栽培に適した多収量品種で、ハウス栽培によって、通常より早い時期に出荷することが可能です。特に東日本では流通量も多く、スーパーマーケットで手軽に買うことができます。
値段は1パック300円〜600円が相場!イチゴの中ではお手頃
「とちおとめ」のスーパーなどでの小売価格は、時期や収量に応じて300〜600円が相場となっています。市場価格では例年5月または6月が最安値です。2022~21年シーズンの東京・大田市場の「とちおとめ」の月別平均価格(円/㎏)は、11月1917円、5月925円となっています。「あまおう」が、11月2741円、5月969円、「紅ほっぺ」が、11月2100円、5月1105円であることから、首都圏で流通しているイチゴの中では手頃な価格と言えます。
美味しいとちおとめの選び方! 見分けるポイント3つ
美味しいイチゴの見分け方のポイントは3つ。「色」「大きさと形」「鮮度」です。それぞれのポイントを詳しく解説します。
1.ヘタの周りやつぶつぶまで真っ赤
色は赤く光沢のあるものを選びましょう。完熟したイチゴはヘタの付近まで真っ赤に色づいています。表面のつぶつぶは、もともとは黄色っぽい色ですが、完熟すると赤くなります。ヘタの付近に白っぽい部分が残っているものは、まだ完全には熟していません。白い部分が多い未熟なイチゴは、水っぽく味が薄いことが多いので注意しましょう。
2.サイズが大きく先端が平ら
イチゴは糖度が高いほど大きくなると言われています。大きく形が整っているものを選びましょう。イチゴは年間5回ほど花を咲かせますが、最初に実ったもの(1番花)が最も大きく、さらに寒い時期は糖分を貯め込む性質があり、シーズン初めのほうが味が良い傾向があります。また、イチゴは実の先端のほうが甘いため、先端が平らなものがより甘い可能性があります。
3.ヘタが上に反り返っている
鮮度を見分けるには、まずヘタをチェックしましょう。ヘタの色は緑で濃いものが新鮮です。摘みたてのイチゴは、ヘタが大きくピンと反り返っています。収穫から日にちが経つと、ヘタは小さく下向きになってきます。イチゴは収穫後に追熟することはないので、摘みたての新鮮なものが最も美味しい食べ頃と言えるでしょう。
洗わない方がいい? とちおとめを長持ちさせる保存方法
できれば平たい容器にヘタを下にして重ならないように並べ、乾燥を防ぐためにラップやポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存します。この時、洗わないことがポイントです。イチゴは水洗いをすると傷むため、食べる直前に洗います。また、水につけたままにしておくとビタミンCが流れてしまうため、ヘタをつけたまま軽く洗う程度にとどめておくことを心がけて。とちおとめの果肉は比較的しっかりしているとはいえ、熟したものは日持ちがしないので、購入後2〜3日以内に食べきりましょう。
とちおとめの美味しい食べ方おすすめ3選
「とちおとめ」は甘味と酸味のバランスがよい品種です。そのまま食べてももちろんおいしく、チョコレートやミルクとも相性がよく、ジャムやソースにも活用できます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.軽く水洗いしてそのまま食べる
新鮮な「とちおとめ」は、そのままの生食がおいしく、豊富に含まれるビタミンCを効率よく摂取することもできます。軽く水洗いしてヘタ側から食べ進めるとより甘さが感じられます。
2.練乳や溶かしたチョコをつけて甘さをプラス
もう少し甘さがほしい場合は、好みに応じて、「とちおとめ」と相性のいい練乳、溶かしチョコレートやチョコレートソース、ハチミツなど加えると、デザート感覚で楽しめます。ざく切りにして砂糖とレモン汁をなじませてもいいでしょう。
3.ジャムやソースなどトッピングとして活用
熟れすぎたり潰れてしまった実は、適量の砂糖を加えて鍋で煮詰めて、ジャムやソースにしてもいいでしょう。パンに塗ったり、ヨーグルトやバニラアイスのトッピングとして活用できます。
イチゴといえば「あまおう」もお馴染み!とちおとめとの違いは?
イチゴといえば「あまおう」を思い浮かべる人もいるでしょう。東の「とちおとめ」、西の「あまおう」と並び称されていますが、両者には大きな違いが2つあります。まず、とちおとめは品種名で、あまおうはブランド名です。さらに、とちおとめは全国どこでも生産できますが、あまおうは福岡県のみでしか作ることができません。価格も違います。これらの違いを詳しく見ていきましょう。
とちおとめは品種名、あまおうはブランド名
「とちおとめ」は品種名ですが、「あまおう」は商標です。農業分野には知的財産を守るための品種登録制度があり、新たに開発された品種は、種苗法に基づいて品種登録をして、独占的にその品種の種苗を生産・譲渡する権利を得ることができます。
「あまおう」の品種は「福岡S6号」です。種苗法に基づいて2005年に品種登録されました。それと同時に「あまおう」として特許庁の商標登録を受けたのです。「あまおう」は商標なので、今後コンセプトが合う品種が開発されれば、「福岡S6号」以外でも「あまおう」のブランド名を使うことができます。一方の「とちおとめ」は、名称を他の品種に使うことはできません。販売・譲渡した種苗は「とちおとめ」の品種名を名乗ることが義務付けられています。
あまおうは福岡県産しか存在しない?
「あまおう」は、福岡県農業総合試験場が育成した福岡県のオリジナル品種です。公募によって、あかい・まるい・おおきい・うまい、の頭文字を取って名づけられました。「あまおう」の栽培ができるのは、福岡県と許諾契約を結んだ福岡県内の生産者および生産団体に限られています。つまり、「あまおう」は福岡県産しか存在しないということになります。福岡県下のJAグループでは「博多あまおう」のブランド名で販売していますが、これも「あまおう」と同じです。 一方の「とちおとめ」は、栃木県以外の地域でも「とちおとめ」として栽培されています。
糖度は同じくらいでも、価格はあまおうの方が高い
「あまおう」の特徴は、果実は短円錐形で、色は濃赤で光沢があります。重さ20gを超える大きな果実の割合が高く、大きいものでは1粒35〜40gになります。糖度は平均9.6度で「とちおとめ」の9〜10度とほぼ同じです。「あまおう」の名前から甘いイメージがありますが、酸味も適度にあってバランスの取れた味わいです。
「とちおとめ」と「あまおう」、特徴では互角と言えそうですが、価格には大きな差があります。「あまおう」は福岡県に産地を限定して全国展開しているため、ブランディングがしやすく、他のイチゴよりも高い値がつく傾向があります。
とちおとめの後継品種「スカイベリー」とは?
品種登録されたイチゴを含む花や野菜は25年間(果樹などは35年間)で保護期間が終了します。1996年に品種登録された「とちおとめ」は、2021年に一般品種となり、使用の制限がなくなっています。栃木県農業試験場では、「とちおとめ」よりも果実が大きく、多収で食味の良さでは「とちおとめ」に遜色のない新品種「栃木i27号」を開発。2014年に品種登録されました。今回は「あまおう」と同じ方法で、同時に商標登録も行い、商標には全国から公募した4388点の中から「スカイベリー」が採用されました。このほかにも、近年、白いちごの「ミルキーベリー」(品種名:栃木iW1号)、早生で多収、病気に強い「とちあいか」(品種名:栃木i37号)を商標登録しています。
他にも知っておきたいイチゴのおすすめ品種
栃木県で生まれた「とちおとめ」や「スカイベリー」、福岡県産の「あまおう」(福岡S6号)のように、日本各地でさまざまなイチゴが開発・栽培されています。色、形、大きさ、食味もそれぞれ異なります。人気の高い大粒イチゴを中心に、おすすめの品種やブランドをご紹介します。
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イチゴの歴史は品種改良の歴史
イチゴは江戸時代末期にオランダ人により長崎に伝えられました。1960年代まで旬は初夏でしたが、市場ニーズに合わせてハウス栽培が行われるようになり、今では冬〜初夏の果物として定着しています。近年は品種開発が進み、東日本では栃木県で開発され1996年に品種登録された「とちおとめ」が、それまでの「女峰」に代わってイチゴの代表品種に。西日本では福岡県産の「あまおう」(福岡S6号)が主流になっています。「あまおう」はイチゴにおける商標登録の先駆けとなり、今後各地でこのようなブランディングが進みそうです。品種開発によって、イチゴは味、色形、大きさなどのバリエーションが増えています。長く親しまれている「とちおとめ」の違いを把握しながら食べ比べてみるのも面白そうです。