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年間売上1位は種子法関連本 農業書センターのランキングで見る2018年の農業界

年間売上1位は種子法関連本 農業書センターのランキングで見る2018年の農業界

本の街、東京・神田神保町に店舗を構える農文協・農業書センターは、日本で唯一の農業書専門書店。ここの年間売上ランキングには、この一年、日本の農業に関わる人たちが何を求め、どんなことに関心を寄せてきたのかが鮮やかに映し出されています。
店長の荒井操(あらい・みさお)さんは、それを「種子法」「検定」「小さな農業」という3つのワードでくくって説明。ベストセラーとなった本から今、人と農業、社会と農業がどんな関係で結ばれているのか、これからどう変化していくのかを読み解きます。

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農文協(農山漁村文化協会)・農業書センターが集計した2018年1~9月期の売上ベスト20(店頭販売分のみ集計、ネット通販分は除く)は、次のようになっています。

1. 種子法廃止でどうなる? 種子と品種の歴史と未来(農文協)
2. JAファクトブック2018(JA全中)
3. 世界と日本の食料・農業・農村に関するファクトブック2018(JA全中)
4. 土づくりと作物生産 収量・品質向上のための土づくりの基礎(日本土壌協会)
5. 新版 土壌診断と作物生育改善(日本土壌協会)
6. ポケット版 田んぼの生きもの図鑑 動物編(改訂版)(岩渕成紀編著/生物多様性農業支援センター)
7. ポケット版 田んぼの生きもの図鑑 植物編(改訂版)(嶺田拓也著/生物多様性農業支援センター)
8. トラクターの機能と基本操作(改訂版)(全国農業機械化研修連絡協議会編/日本農業機械化協会)
9. 改訂 日本農業技術検定<3級>テキスト(全国農業高等学校長協会)
10. まんがでわかる 土と肥料 根っこから見た土の世界(村上敏文著/農文協)
11. 日本農業技術検定 2級テキスト(全国農業高等学校長協会)
12. タネはどうなる?! ─種子法廃止と種苗法運用で─(山田正彦著/サイゾー)
13. 図解でよくわかるタネ・苗のきほん(日本種苗協会監修/誠文堂新光社)
14. 野菜(農業高校用教科書)(池田英男・川城英夫ほか著/農文協)
15. 農業のマーケティング教科書 食と農のおいしいつなぎかた(岩崎邦彦著/日本経済新聞出版社)
16. 日本農業検定 1級テキスト(日本農業検定事務局編/全国農協観光協会)
17. 多品目少量栽培で成功できる!! 小さな農業の稼ぎ方(中村敏樹著/誠文堂新光社)
18. 厳選 日本農業技術検定 傾向と対策(全国農業高等学校長協会)
19. 種子が消えれば あなたも消える 共有か独占か(西川芳昭著/コモンズ)
20. 小さい林業で稼ぐコツ 軽トラとチェンソーがあればできる(農文協)

売上第1位は種子法廃止関連の本

種子法廃止でどうなる? 種子と品種の歴史と未来

売上第1位は「種子法廃止でどうなる? 種子と品種の歴史と未来」(農文協)。
1952(昭和27)年から維持されてきた主要農作物種子法が、今年4月1日をもって廃止されたことが話題になりました。国内外の民間企業の参入による種子開発や品種独占が懸念され、農のグローバリズムや遺伝子組み換え食品の問題も深く関わるとして、危機感を覚える人も少なくありません。

セミナーや議論の場で教科書として活用

「この本は複数の執筆者の解説をコンパクトにまとめたブックレットで、種子法廃止問題に関するセミナーや議論の場で教科書として使われており、まとまった注文もよくいただきます」と荒井さん。
昨年(2017年)12月に刊行されて以降、1万部近い売り上げを記録しています。
他にも関連書籍として元農林水産大臣・山田正彦著「タネはどうなる?!」(サイゾー)や「図解でよくわかるタネ・苗のきほん」(日本種苗協会監修/誠文堂新光社)、「種子が消えれば あなたも消える」(西川芳昭著/コモンズ)などが売り上げ上位に入っています。種子法廃止は、2018年の農業界の最大トピックスと言っていいでしょう。

注目を集める農業資格検定受験用テキスト

土壌医検定の参考書

近年、農業関係の資格取得を志す人が増えており、検定試験の受験用テキストが8タイトルも上位20位以内に入っています。
「土壌医検定」は土づくりの専門家を育成するための資格で、3級用の「土づくりと作物生産」と2級用の「土壌診断と作物生育改善」はともに同検定の主催である一般財団法人日本土壌協会から発行されています。
購買層(=受験者)は、農家をはじめ、農業コンサルタント、普及員、学生、さらに農業機械・農薬・肥料などの生産・販売を手掛ける企業の営業マンなど。
「大手企業では社を挙げてこの資格取得をサポートしているところもありますよ」と荒井さんは話します。
農作物を生産する上で非常に重要な課題である土づくりについて、農家と悩みや問題を共有できる、相談相手になれる、そして有効な提案ができるといったことは、こうした企業にとって大きな強みになるのです。

日本農業技術検定と日本農業検定のテキスト

日本農業技術検定は日本農業技術検定協会(事務局・一般社団法人全国農業会議所)が主催しており、農業技術のレベルアップを図る検定です。おもに高校生・大学生が対象で、全国で年間2万6700人が受験。受験者は毎年1000人くらいずつ増えています。
また、一般社団法人全国農協観光協会(日本農業検定事務局)が主催する日本農業検定は、2011年から3級がスタートし、2017年に最高レベルの1級が創設された新しい検定で、農業の面白さ、農業と関わる暮らし、環境に対する知識・教養を広く社会に普及していくため設けられました。受験者はおもに一般市民で、農産物の販売や、農業・環境問題関連の活動に携わる人たちの中で取得者が増えているようです。

新既就農者向けの本も売れ行き好調

小さな農業・小さい林業

農業書センターには「新規就農」のコーナーが設けられていますが、その書棚を見ると「小さい」「小さな」といったキーワードをタイトルに含む本が数多く並んでいます。
その中で「多品目少量栽培で成功できる!! 小さな農業の稼ぎ方」(中村敏樹著/誠文堂新光社)と「小さい林業で稼ぐコツ」(農文協)が売り上げ上位に入りました。

就農志望への啓発書

「特に若い層には、働き甲斐や自己実現、独自のライフスタイルの確立、それらに裏打ちされた社会的・経済的成功を求めて就農する人、農業ビジネスに挑戦する人が目立ちます」
そう語る荒井さんのもとには、店頭やネット・電話を通して質問・相談がひっきりなしに寄せられているそうです。
就農希望者にとって農業や林業を始める上での心得や具体的な準備、そして生産から販売・加工品づくりまで手掛ける第6次産業のシステムづくりなどについて説いた上記の2冊は、啓発書としても気軽に楽しく読めるように作られています。

たび重なる自然災害を背景に

また2018年は豪雨、台風、地震など、日本全国区で自然災害が多発した年でした。その影響もあって災害対策関連の本も関心を集めました。
中でもよく売れた「農家が教える ハウス・温室 無敵のメンテ術」(農文協)は、ハウスを長く使っていくための補強術や、夏に涼しくするための工夫、保温効果を上げて燃料費を減らす工夫、ビニールをラクに張る方法など、ハウスのメンテナンスに特化した実用書で、ハウス経営に携わる農家には貴重なマニュアル本となっているようです。

2019年に向けて


荒井さんは検定テキストや新規就農者向けの本は来年以降も売り上げ増が続くだろうと予測。また、今年最大のトピックスとなった種子法廃止関連の本は今後も積極的に販売するとともに、種子法の意味・重要性を訴求する活動には支援を続けていきたいと語りました。
ここに挙げた本を読むだけで「農業の今」をつかめるはず。そして読書で得られたものをぜひ自分のビジネスやライフスタイルに活用してみてください。
 

農文協・農業書センター
 

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