地元交通機関と連携した収穫体験「すい~とポテトタクシー」発足の理由
「すい~とポテトタクシー」は、神戸電鉄グループと北神急行電鉄が2011年に発足した北神・神鉄連携活性化協議会とJA兵庫六甲山田支店、みのたにグリーンスポーツホテル「銀河の湯」によって考案されました。現在、5つのサツマイモ農園と提携し、ツアーを行っています。
「スタートした当時は、収穫体験ツアーに注目が集まりだした時期でした。そこで、北神・神鉄連携活性化協議会でも、神戸市北区山田町にあるサツマイモ農園に着目。神鉄タクシーで農園まで送迎するサービスを行うことにしました」(青木さん)。
すい~とポテトタクシーの料金は、大人2,600円(4名乗車の場合)です。谷上駅―芋農園の往復タクシー代、サツマイモ収穫体験料金(3株まで)、温泉施設利用料金がすべて含まれています。
サツマイモ農園へ直行する観光タクシー「すい~とポテトタクシー」
すい~とポテトタクシーは事前予約制で、利用日の1週間前までに北神急行電鉄へ電話で申し込みます。当日は、北神急行電鉄・神戸電鉄「谷上駅」の駅長室で手続きをし、神鉄タクシーでサツマイモ農園へ。タクシーは昔ながらの田園風景が広がる「丹生山田の里」を走るので、車窓から眺める景色も楽しめます。
農園に到着したら、サツマイモ掘りを行います。軍手など必要なアイテムは用意されているので、気軽に収穫体験ができます。収穫したサツマイモは3株まで持ち帰りできます。
※サツマイモの収穫状況によって、終了日が早くなる場合もあります。
収穫体験で汗をかいた後は、天然温泉「銀河の湯」でゆっくり疲れを癒やし、タクシーで駅まで送り届けてもらえます。参加者からは、「サツマイモの根っこが広がっていて収穫に苦労したけれど、かえってそれが楽しかった」「山田町の空気がおいしかった」「こんなに大きなサツマイモ、どうやって持って帰ろう?」など、嬉しいお声をたくさんいただいているそうです。
観光タクシー事業がもたらした地域と農家への好影響
すい~とポテトタクシーの運行により、地域や農家にも追い風が吹いているようです。ツアーの参加者により、売上げが上がったことはもちろん、山田町でサツマイモの収穫体験ができることを広く知っていただくだけではなく、各農園の認知にもつながっているといいます。
過疎化が進む地域にあって、鉄道会社が地域活性化につなげるために、ポスターを掲出したり、チラシを関係先に配布したりすることは、地域住民の間でとても喜ばれているそうです。
ポスターは北神急行電鉄だけでなく、神戸電鉄や神戸市営地下鉄をはじめ、阪急電鉄や阪神電車、山陽電車など周辺エリアの鉄道会社の駅にも掲示しています。
また、北神急行電鉄では若者にこの取り組みを知ってもらい、農園に関心を持ってもらうために、公式Facebook(フェイスブック)などSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を使った宣伝も行っているそうです。このような宣伝活動が功を奏し、効果を実感した地域の農家から「毎年開催して欲しい」「すい~とポテトタクシーのポスターやチラシによる宣伝効果がありがたい」と言う声が寄せられているそうです。
「すい~とポテトタクシー」をきっかけに地域活性化に貢献
今後の展望を青木さんにうかがうと、「実現はまだ難しいかもしれませんが、すい~とポテトタクシーの他にも神戸の地域活性化に貢献できる事業を考え、チャレンジしてみたい気持ちはあります」といいます。
過去には、北神・神鉄連携活性化協議会では神戸市区北区大沢町で沿線の駅から、いちご農園までをタクシーで結ぶ「いちごタクシー」を運行したことがありました。神戸市では果物の海外輸出にも力を入れているそうです。「こうした動きにも積極的に連携していきたい」と青木さんは語ってくれました。
最近、農業体験ツアーやアグリツーリズムへの取り組みを始める地域が増えていますが、課題としてよく持ち上がるのが交通網の整備です。交通機関と地域との連携で誕生した「すい~とポテトタクシー」には、農業体験と交通手段の整備を同時に行うという点で学ぶことがありそうです。
写真提供:北神急行電鉄株式会社
2017年の運行は9月4日(月)~11月5日(日)