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繁盛店を次々プロデュース 若手起業家が描く生産者とのつながり

繁盛店を次々プロデュース 若手起業家が描く生産者とのつながり

2017年11月02日

東京・中野のマグロ専門店「マグロマート」。定番の赤身から稀少部位まで、マグロをまるごと楽しめる飲食店は、そのこだわりが受けて、今では予約の絶えない人気店に。オーナーの尾坂亮(おさかりょう)さんが、脱サラして友人と居酒屋を始めて7年。2017年6月には、東中野に新しいコンセプトのネオ居酒屋「東灯(とうとう)」をオープンした。大切にするのは「おいしい食材をシンプルに提供することと、地域に溶け込むこと」。経営者として、人として心がける、他者とのネットワークのつくり方、人が集まる空間づくりの秘訣とは。

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マグロマート

素人経営者がたどり着いた「良い食材をシンプルに提供する人気店」

東京・東中野。駅から続く商店街を抜けた先に「東灯(とうとう)」がある。広い間口から漏れる柔らかい光が通りを照らす。灯りに引き寄せられた人々が、にぎやかに集うネオ居酒屋は、オーナー自らが開拓した各地の食材を楽しめる店。「東灯」も「マグロマート」も、今では、押しも押されもせぬ繁盛店。そこに至る経緯を、オーナーの尾坂亮さんにうかがった。
尾坂さんは鳥取県の出身。大学進学を機に上京。卒業後、企業に就職したものの、3年半で退職する。「いつか自分の店を出すこと」を考えていた20代の脱サラ起業家は、高校・大学を共にした友人と、愛着のある中野で15席の小さなバーを始める。「店を気に入ってくれた人たちが気軽に集まれるバー」は、徐々にファンを増やしていく。バーを切り盛りしながらも、次の展開を考える日々の中で、会社員時代から自分たちが通っていた店のマグロを思い出し、仕入先を聞いて、神奈川・三浦半島の三崎のマグロ卸問屋に通うようになる。問屋の方から流通しにくい珍しい部位を食べさせてもらったり、様々な話を聞いたりする中で「マグロっておいしいだけではなく面白い」と感じた。二店舗目は、マグロを中心に据えることに決め、自分たちの感動をそのまま店づくりに活かした「マグロマート」をオープンする。
「自分たちは素人だという自覚があったので、凝った料理は玄人の料理人にお任せし、食材の魅力をダイレクトにスカッと伝えること」をテーマにした。「素材に手を加えず、その代わりに様々な部位を楽しんでもらう」ありそうでなかったスタイルは、話題を呼び、マスメディアに頻繁に取り上げられる人気店に。
手の込んだ料理を提供する。雰囲気作りを重視する。店の在り方、メッセージの伝え方に正解はない。何を重視するかは、オーナーの考え方次第。尾坂さんは「良い食材をシンプルに提供する」スタイルを選んだ。それを「マグロ以外」で展開するのが「東灯」だ。

マグロマート

マグロマート

食材を求める旅 人との出会い

尾坂さんの休日の予定は、食材を求める旅で埋まっている。知人の紹介や、自らインターネットで検索し、新しい食材との出会いのきっかけづくりに余念がない。
宮崎駿監督のアニメ「風立ちぬ」に、作中の登場人物がクレソンを食べるシーンがある。おいしそうに食べるその姿を観たのがきっかけで、「東灯」の看板食材のひとつ「大辻クレソン」との出会いがあった。クレソンについて調べるうちに、山梨県道志村(どうしむら)が一大産地だと知ると、生産者に連絡して、現地に赴く。「出会いのきっかけは様々だけれど、なるべく会いに行くようにする」のが尾坂さん流。「まずは、作っている人と仲良くなりたくて」親戚や友人の家に行くような感覚で足を運ぶ。
道志村で出会った生産者は「気が置けないお母さんお姉さんたち」だった。大手企業に決まった量を出荷し、地元の道の駅や、知り合いに譲る程度の需要に応えるくらいで成り立っていた彼女たちが作るクレソン。それを分けてもらおうと、現地に足を運び、作業を眺めながら話を聞いてわかったのは、出荷に手間がかかるということ。クレソンは、出荷の段階で小さな葉や白い花を摘むプロセスがある。尾坂さんの目には「その作業がなかなか大変そうだ」と映った。「もう、いっそのこと、収穫したままで、どさっと送ってください。不揃いでもかまわないし、花もかわいいから」と依頼。手間を省いたぶん、出荷価格を抑えてくれた生産者の方々との信頼関係が、看板メニューのクレソン料理を生み出した。
「商売としては、値段やロットの話は必要だけれど、それ以前に、生産物の背景にあるストーリーを知りたい」。あの酒蔵は雪が降っているとか、今夜はあの畑の村で祭りだとか。自分自身がその風景が思い描けて、それをお客さんに話せること。食材がよりおいしくなるエピソードは、生産者との交流の中から生まれる。
その土地の人や生産物に愛着を持って、とことん付き合う尾坂さんの姿勢が、新しいメニューをつくり、店の個性をつくる。

マグロマート

地域の活性化に取り組む 人が集まる場所づくり

人とのつながりを大切にする尾坂さん。上京以来住み続ける地域への愛着も強い。「マグロマート」は中野、「東灯」は東中野。中野にこだわって出店するのは「中野独特のローカル感が気に入っているから」。住む人が自分の街を好きになるきっかけになる店。エリア外に住む人もわざわざ足を運びたくなる店。中野という街の風景に馴染んだ店づくりを目指すのは、地域を活性化させたいという思いも込められている。
目下、「地域の活性化」というテーマは自身の中で存在感を増す。その思いは、地元・鳥取にも向いている。尾坂さんがまちのコンテンツづくりに関わってきた経歴を知る知人に誘われ、鳥取市内の遊休不動産の活用方法を考えるリノベーションまちづくり活動に参加。様々な経験を持つ人々がチームを組んでアイデアをまとめ、不動産オーナーにプレゼンテーションを行う活動を通して、自身も浜辺の施設を使ったピザ屋を計画中。その店が目指すのは、友人が鳥取を訪れてくれたら、連れて行きたくなるような「お気に入りの場所」。鳥取に暮らす人々が自分の町のランドマークのように思ってくれる「まちのコンテンツづくり」活動に参加して、生まれ育った街の活性化にチャレンジする。「日本一人口の少ない鳥取だからこそ、土地のファンが一人増えるインパクトは大きいはず」。ここでも、尾坂さんの人と土地に対する愛着が、一人一人の共感の輪を拡げていく。
「中野、鳥取、出会いの多い山梨。妻の出身地の高知。それぞれの場所に自分の拠点を持つことが、夢であり、目標」と話す尾坂さん。今度の休みは「かつぬまぶどうまつり」で神輿を担ぐ。彼のネットワークづくりには、小手先のテクニックはいらない。自分の興味と関心に、とことん向き合う好奇心が、人をひきつける秘訣だ。

マグロマート
■マグロマート 東京都中野区新井1-10-12  TEL03-5942-5594
■東灯     東京都中野区東中野3-16-12 TEL03-6310-4873

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