切り方で味が変わるのがわかりやすいキャベツ
キャベツの千切りをする時、どういう向きに切るかで味が変わってきます。というのが、キャベツは繊維の歯ごたえや生の切り口に舌が触れやすいので、味の違いがわかりやすいのです。
一般的にキャベツの千切りは、葉脈に対して横向きに切るように解説されている事が多いです。原因はキャベツの葉の繊維の向きです。包丁で切る場合、葉脈に向かって縦に切ると繊維に沿って切る事になるため、繊維が断たれる事なく残ります。そうすると、葉が柔らかい物であればシャキシャキ程度の歯ごたえで済むのですが、固いキャベツだとより固く、噛みにくいと感じる事があります。そのため、初心者向きの解説などは横向きに切る事をすすめるケースが多いのです。
横向きに繊維を断つようにカットする事で、多少太めにカットしても口当たりがふんわりとします。スライサーを使う場合や、包丁を使っても糸のように細く切れる場合は、縦向きの方が繊維に沿う分、細胞が壊れにくいので苦みが出にくくなるようです。
タマネギは切り方で味も栄養効果も変わってくる
「タマネギは横に切ると縦切りより切り口が大きくなり、空気に触れる事で、有効成分が多くなり血液をさらさらにする効果が出やすい」という話題がテレビなどでも取り上げられていました。
実は、より多く空気に触れさせた方が良いとされる成分は「硫化プロピル」というタマネギの辛味成分です。そのため、横向きにカットしたタマネギを生で食べると、縦に切った物より辛味や苦みを強く感じる事になります。特に子どもは辛味が苦手と感じる事も多いので、サラダに入れる場合などは、縦切りにしたり、みじん切りにして水にさらしたりするなど辛味成分を感じにくく変えてあげるのが良いかもしれません。
逆に、加熱する場合は横に切る方が甘み、旨みが出やすくなります。バーベキューなどでは輪切りのタマネギを焼く事が多いですが、おいしくなるだけでなく火の通りも早いので、理にかなった切り方と言えます。
煮込む場合は、横向きだと繊維が断たれているので煮崩れしやすくなります。煮込みなどで早く煮溶かしたい時は横、形を残したい時は縦に切ります。
ジャガイモは切り方で使える調理法が広がる
ジャガイモを調理する場合、一般的に切り方として使われるのは乱切り、角切り(一口大)、半月切りが多いと思います。乱切りや角切りは煮込みに、半月切りは味噌汁など、短時間で煮たい時などによく使われます。
フライドポテトであれば、くし型切りにする事もあります。ジャガイモは、厚みがある切り方をすると、ほくほく感が強くなり噛んだ時に甘みを感じやすくなります。逆に薄く細く切るとシャキシャキ感が強くなり、コールスローなどのサラダや、きんぴらのようなメニューにも使えます。実はこれは、切り方で加熱時間が変わる事が影響しています。
ジャガイモやサツマイモなどは、デンプンを多く含みますが、加熱するとデンプン分解酵素である「βアミラーゼ」という成分が働き、糖に変化して甘くなります。この酵素は、低温で長く加熱する時が一番よく働きます。大ぶりに切ると全体に火が通るまでに時間がかかりますので、弱火で加熱する事になります。そのため、大きめに切ったジャガイモを蒸したり煮込んだりすると火が通るのに時間がかかるので、より甘くなるのです。逆に細く切ったジャガイモは加熱時間が短くて済むので、あっさりとした味わいになります。
煮込みに入れるニンジンの切り方はどうして乱切りが多い?
ニンジンの切り方について、煮込み料理のレシピの多くで「乱切り」が指定されています。煮込みに「乱切り」が指定されるのは、以下のような理由があります。
■角切りより表面積が大きくなる。
■そのため、早く煮えて柔らかくなる。
■味も染みやすい。
ジャガイモの場合、角切りにする事も少なくありませんが、ニンジンの切り方で角切りの指定はあまり見かけません。これは火の通りの他に、ニンジンが芋類などに比べて繊維も多く、固めの歯ごたえである事が関係しています。角切りの場合、最も厚みがある部分だけを切り出したような形になりがちです。これが乱切りだと細い部分がありますので、食べる時に口に入れやく、噛みやすいのです。
西洋料理の煮込みなどの場合、シャトー切りといって、ニンジンを5㎝~6㎝程度のラグビー形に切る事もあります。この切り方も、細い紡錘形ですので口に入れやすく噛みやすい形状です。
にんじんの細切り・千切りは切る向きによって向いているレシピが違う
ニンジンの歯ごたえについて外せないのが繊維の向きです。繊維は、生えている向きに伸びていますので、縦に3つくらいに割ってから縦に切ると繊維が残り、斜め切りにしてから細く切ると、繊維を断つ事になります。和え物やサラダのような「和える」料理にするとよく分かりますが、繊維を断つ方向で切った物の方が早く柔らかくなり、味の馴染みが良くなります。
縦切りにした物は繊維が残るので、生だと少し固く感じますが、炒めたり揚げ物にしたりする場合は歯ごたえが残って噛み応えが出ておいしくなります。
ピーマンは苦手の理由で切り方を変えてみる
ピーマンも切り方によって味が変わります。やはり繊維を断つ横切りだと苦みが出やすいので、よく「ピーマンが嫌いな人には縦切りにする」という方法がすすめられますが、ピーマン嫌いの理由は苦みではなく「繊維が口に残る感じ」という場合もあります。その場合は横切りにすると、食感が良くなって食べやすくなります。
調理上でのコツとしては油と合わせる事で、切り口から出た苦み成分が油に溶け出してしまうため、どちらの切り方でも苦みがマイルドになります。また逆転の発想ですが、ピーマンを切らずに丸ごと焼いて種ごと食べる方法だと、苦みが出ずに甘みが強くなっておいしく食べられます。
バーベキューなどで人気の食べ方のようですが、フライパンでもグリルでもできます。丁寧に作る場合は、焼いた後に皮をむくとより甘くなります。おばあちゃん世代のやり方だと洗ったピーマンをそのまま、魚の焼き網などを使って焼きますが、油をまぶしてフライパンで焼く方法が手軽でおすすめです。
切り方を工夫して、ぜひ日常に取り入れてみてください。