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契約農家ゼロから70軒へ 農山村の暮らしを守る「ひまわり乳業の青汁」

契約農家ゼロから70軒へ 農山村の暮らしを守る「ひまわり乳業の青汁」

高知県のひまわり乳業の「健康青汁 菜食健美」は、家庭や職場に宅配される人気商品です。青汁の主原料となるケールは高知県長岡郡大豊町で育てられていますが、青汁生産を始めた平成8年はケールを作っている農家は1軒もなかったそうです。しかし今では契約農家は70軒を超え、地域の農家を支える大きな事業の一つとなっています。農山村の暮らしを守る同社の仕組み作りについて、坂井稔幸(さかいとしゆき)さんに話をうかがいました。

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発売から21年 全国に着々とファンをつける

ひまわり乳業の「健康青汁 菜食健美」は、従来の青汁のイメージとは異なる、やさしい口あたりが自慢の健康野菜飲料です。

青汁とは緑の植物を絞って作った飲み物のことで、南ヨーロッパ原産でキャベツの原種の葉である「ケール」という野菜が最も適していると言われています。その理由は、栄養成分が非常に優れており、一年中収穫できて収量も多いからです。「健康青汁 菜食健美」にはケール60%の他、クレソン、チンゲンサイ、三つ葉、青ジソ、セロリなどをバランス良くミックスしており、ビタミンAやB1、B2、ビタミンC、カルシウム、マグネシウムといった栄養素がたっぷりと含まれています。野菜不足による便秘や貧血にはもちろん、中性脂肪やコレステロールが気になる方や、胃腸の調子がよくないと感じている方などにもおすすめです。

発売から21年が経ち、最近では四国のみならず中国地方や近畿、中京、北陸と宅配エリアを広げています。宅配外の地域については冷凍パックでの通販も実施し、着々と全国にファンが増えています。

地場農産物を利用した新しいタイプの青汁

「健康青汁 菜食健美」が誕生したのは平成8年のことです。前年(平成7年)に、開発担当者が地場農産物を利用した健康に役立つ商品として「新しいタイプの青汁を作ろう」と決意したことがきっかけでした。開発にあたっては、健康に良いのは野菜のどの成分か、ケールの優れた部分と欠けている栄養成分は何なのか、従来の青汁の青臭さはどうやったら和らぐのかを徹底的に調査したそうです。

試行錯誤を繰り返しながら、やっと試作品が完成すると、また新たな問題が発生しました。栄養成分にも味にも満足のいく試作品が出来上がったのは良いのですが、原料となる野菜10種類を調達する目途がたっていなかったのです。特にケールは、当時はほとんど市場に出回っていませんでした。

「青汁を飲んで『う〜ん、まずい!』とセリフを言う印象的なテレビCMが流れ、当時、青汁がブームになりつつある頃でした。各社とも青汁の商品開発には興味をもって取り組んでいましたが、青汁に必要なケールが手に入らないという理由で、多くの会社が開発を諦めていきました。弊社の場合、創業以来『自然・健康・地域』というキーワードを大切にもの作りをしてきましたので、3つのキーワードを網羅する『青汁』はどうしても商品化させたいと知恵を絞りました」(坂井さん)。

  高齢化が進む大豊町とケールの契約栽培

そこで考えついたのが、ケールの契約栽培でした。高知県の大豊町の農協に相談し、ケールの契約栽培をしてもらえないかと相談したのです。大豊町は高知県と愛媛県、徳島県の県境、標高200メートル~1,400メートルの急峻にあり、地形の複雑な山岳地帯にあります。平坦地はほとんどなく、山肌にへばりつくように小さな集落が点在しています。当時、人口はわずか4,000人ほどで半分以上が65歳以上と、いずれ農村として立ちゆかなくなる状況にあることは目に見えていました。しかし、ケールの契約栽培によって安定した農業経営が可能となれば、未来は明るいものとなります。

「大豊町は標高が高く、南国の高知県とはいえ冬には積雪があります。一方、標高が高いので夏は涼しく、農薬を使わない野菜栽培には適した土地だったんです。農薬を使わない野菜を契約栽培していただくことで、農山村で働く人々の収入を安定させ、生活できる仕組みを作れるのなら、と考えました」。

【関連記事】ケールもビーツも意外な料理へ変身 珍しい野菜のおいしい食べ方

ひまわり乳業の社員自らがケール栽培を開始 ノウハウを農家へ伝授

しかし、それまで大豊町では、誰一人ケールの栽培を手がけたことがありませんでした。そのため、依頼に行った当初は苗の立て方や栽培方法もわからないという理由で断られてしまったといいます。

そこで、ひまわり乳業の開発担当者自らが実家で畑を借りてケールの種まきをし、栽培することで苗の立て方、栽培方法を確立していきました。ケール栽培のノウハウを携え、再度依頼に行ったところ、なんとか契約が成立したのです。そうして生まれた「菜食健美」は、今や大豊町にとってなくてはならない存在となりました。当初10軒に満たなかった契約農家も現在は70軒を超えています。

「今後の目標として、現在の2倍の販売量を目指しています。販売量が増えると、契約農家さんも増やすことができ、大豊町の雇用促進につながります」。

青汁を通して大豊町の活性化に貢献できると嬉しいと、坂井さんは語ってくれました。この青汁の契約栽培は、地域農業の活性化や問題解決につながる一例として学ぶべき点も多いのではないでしょうか。

ひまわり乳業 

http://www.himawarimilk.co.jp/

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