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「農家の心意気」を料理で伝えたい 野菜レストランのシェフが抱く熱き思い

「農家の心意気」を料理で伝えたい 野菜レストランのシェフが抱く熱き思い

2017年11月29日

神奈川県横浜市で「野菜レストランさいとう」を運営するオーナーシェフの斉藤良治(さいとうよしはる)さんは、キュウリのおいしさに衝撃を受け、脱サラして料理の世界へ飛び込んだ人物です。週に何度も近隣の農家の畑へ出向いて新鮮な野菜を仕入れ、料理を作る斉藤さんからは、野菜への尊敬の念と深い愛情があふれています。「野菜は生き物」と話す斉藤さんに、野菜に対する考え方や思いについてうかがいました。

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野菜にストレスをかけず、おいしい状態で仕入れる

野菜
サラリーマンだった斉藤さんが料理の世界へ入ったのは、衝撃を受けるほどおいしい野菜の味に感動した体験があったからです。多忙により体調を崩した際に、野菜を食べる機会がありどんどん味覚が研ぎ澄まされていきました。その時に、「野菜ってこんなにおいしいんだ」と素材そのものが持つ味わいに気付き、「このおいしさをみんなにも知ってほしい」と、シェフになる決意をしました。

フレンチレストランでの就業経験を経て、自分の店をオープンしました。そのなかで、野菜を中心とした料理を作るということは自然の流れでした。野菜選びには人一倍こだわり、週に3日ほどは近隣の農家をまわって、自分で野菜を仕入れています。

「野菜は生き物だと思っているんです。市場に出荷される野菜は段ボールにぎゅうぎゅう詰めにされ、乱雑に積み重ねられてしまいます。それが野菜にストレスをかけることになり、野菜の味も落ちてしまう理由です。一つ一つの野菜に表情があって、おいしい野菜は葉っぱがぴんと伸びていたり、色がいきいきしています」と斉藤さんはいいます。

「野菜に対して敬意を表したい」と言うように、畑でのびのびと育てられた野菜をおいしく有難くいただけること、そして作り手である農家に対する感謝の気持ちを、いつも持っています。

作り手の思いも、お皿にのせて

野菜
斉藤さんが経営するレストランのコンセプトは、「野菜のおいしさを発見してもらうこと」です。自身が野菜のおいしさに感動したように、食材の組み合わせや調理法を変えることで、野菜の新たな魅力を発見してもらい、驚きを感じてほしいと考えています。

「現在、ナスを6種類の調理法で提供しています。生、ピクルス、マリネ、蒸し煮、焼きびたしと、それぞれ適した品種を選び、ババロアにもナスを使いました。お客さんに食べていただくと『ナスってこんな味になるんだ』と新しい発見をしてもらえるんです」。

また、農家とのコミュニケーションを通して、栽培にはどのような工夫をしているのか、どのような思いで野菜作りを行っているのかを知ることができます。斉藤さんはそんな作り手の思いを汲み取って、お皿の中の料理で表現したいと思っています。「野菜ってこんなにおいしいんだ」という反応がお客さんからあると、大きな喜びを感じるそうです。

【関連記事】野菜の味にシビれた 脱サラシェフが「野菜が主役の店」を作った理由

和風ダシで引き出す、野菜そのもののおいしさ

野菜
「野菜レストラン」という名前をつけているように、斉藤さんが作る料理は野菜が重要な役割を担っています。しかし、野菜のおいしさを引き出すことはとても難しいです。様々な調理法や味付けを試してみて、ダシをあまり使わない方がいいことが分かりました。

斉藤さんが使う野菜はどれも味が濃く、野菜だけで十分な旨味を持っているものばかりです。そのため鶏のダシなどを使うより、塩を少し加えるだけのシンプルな調理法の方が、野菜のおいしさが引き立つのだそうです。

「色々と試して行き着いたのが、和風ダシでした。昆布と鰹節でとったダシをあわせると、野菜のおいしさがとても際立ってきます。日本の気候風土で育った野菜には、やはり日本ならではのダシが合うのでしょう」。

野菜のおいしさを広めるため、食育活動やマルシェも開催

野菜
「野菜のおいしさを知ってほしい」という思いは、自身のレストランだけにとどまりません。地元での食育活動に参加し、子どもむけ料理教室の講師も務めています。

「料理教室では、必ず子どもに生のまま野菜をかじってもらうようにしているんです。朝採れのナスは、とても甘くてみんな驚きます。子どもの味覚は小学生頃に最も成長すると言われているので、その時期に野菜の味を確かめてほしいのです」。

料理教室には農家の方を呼ぶこともあります。普段は消費者との接点が少ない農家にとって、子どもたちの素直な反応を目にすることができ、野菜作りのモチベーションにもつながっています。

また、月に2回レストランの店頭でマルシェを開いてます。レストランの取引先である近隣農家から、野菜を仕入れて販売しています。

マルシェ
「『こんなにおいしい野菜なら、また買いに来たい』と言ってくださる方も多いです。マルシェで儲けようと思っているわけではなく、地元にこんなにおいしい野菜を作っている人がいることを、地域の方に知ってほしい」。

また、日ごろ農家の仕事を間近で目にしているからこそ、野菜の価値について危機感も覚えています。

「肥料や設備などの値段が上がっている中、農家が苦労して作っていますが、野菜の値段は昔からあまり変わっていません。お客さんの中には、選ぶ時は『安い野菜でいい』と考える方もいます。もちろんお財布事情もあると思いますが、農産物の影には農家が苦労して育てているということを、私たち消費者はもっと理解する必要があります」。

日々何気なく口にしている野菜ですが、本当のおいしさに気付いている方は少ないのかもしれません。斉藤さんが行っている活動を通して、今後はもっと多くの方が野菜の魅力を再発見できるでしょう。そして農産物や農家に対する人たちの価値観も変わり、農業にもっと明るい光があたっていくのではないでしょうか。

レストラン さいとう

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