「音楽で飯を食う」は実現できるか？
「『音楽で飯を食う』や『絵で飯を食う』と、よく言います。これは音楽を演奏したり、絵を描いたりすることでお金をもらって生計を立てることを意味します。いっそのこと『音楽で飯を食う』の文字通り、音楽を演奏してお金のやりとりはせず直接食べ物をいただけばいいのではないかと、実験のつもりで始めました」と池田社長はいいます。
実際、2010年に初めて「ギブミーベジタブル」を開催してみたところ、池田社長が半月生活できるくらいの野菜を報酬としてもらえたそうです。「実験は成功しましたが、『まぐれかもしれない』と思い、もう一度やってみることにしました。『2回目も偶然かも』と思い続けること7年、現在までに全国各地で50回ほど開催しています」と笑顔で語ります。
では、なぜ「ギブミーベジタブル」なのでしょう。他の食べ物ではいけなかったのでしょうか。
「野菜は魚などに比べて日持ちしますし、単純に『ギブミーフード』よりも『ギブミーベジタブル』の言葉の方が響きがよくてわかりやすいですよね」と思わず笑みがこぼれます。ただし、「ギブミーベジタブル」というイベント名ではありますが、野菜に限らず肉、魚、米、酒、フルーツなど食材であればどんなものでも持込OKです。
アーティストや来場者も多種多様 幅広い年齢層が楽しめるイベント
出演者のジャンルが多岐にわたり、幅広い年齢層の来場者が集まります。それがギブミーベジタブルの特徴です。
「出演者は開催地域の地元アーティストを中心に様々な方が出演しています。ロックバンドやDJ、民謡の歌い手、落語家、地元のおばちゃんたちで結成された琴の団体も過去にパフォーマンスしてくれました」。
入場料が野菜という気軽さで、しかもおいしいものが食べられるので、小さなお子さんのいる家族連れもいれば、若者もお年寄りも、男女問わず幅広い年齢層が来場します。
「地方開催だと、入場料としてたくさんの野菜を持ってきてくれる農家の方や、その日に穫れた魚を持ってきてくれる漁師さんがいます。鹿や猪を仕留めて持ってきてくれる猟師の方が来ることもあります。
農家の方には、イベント会場で野菜を売ってもらうなど協力していただいています。また、入場料の野菜を持参し忘れた方には、野菜を買ってギブミーベジタブルに参加できるようにしています」。
野菜のやりとりで見えてくる本当の豊かさ
「ギブミーベジタブルには、その場にいるみんなが平等に楽しもうという緩やかで心地よい雰囲気があります。まずは、この雰囲気を感じていただきたいです」と池田社長。お金のやりとりをすることなく、野菜を交換することで、「○○円払っているんだから元を取ろう」「△△円もらっているからこれくらいやらなくては」という損得勘定が不思議となくなるそうです。
そして、参加者が持ち寄る食材からも、その土地や地域の豊かさが実際に見えてきます。「地元には、お金だけじゃない豊かさがこんなにたくさんあるんだ」ということが実感できます。
「ギブミーベジタブルの会場にいるみんなが、大事に育てて持ってきた季節の食材が、料理人の方々によって即興でおいしい料理になっていきます。目で楽しんで、音楽を聴きながら楽しんでください。
一方で、野菜やおいしい料理を食べることは、お金をそれほど使わなくても実現できます。お金の本来の役割とモノの価値について考え、交換することの楽しさを感じていただきたいです」。
今後、ギブミーベジタブルは47都道府県すべてで開催して海外での開催も目指しています。お近くで開催の際は、ぜひご参加ください。
また、誰でもギブミーベジタブルが開催できるように、ホームページ上にイベントのノウハウを公開しています。興味のある方は、あなたの地元で開催してみてはいかがでしょうか。
写真提供：ギブミーベジタブル
