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原宿の街で米屋が進化する オーダーメイドのブレンド米が大評判の小池精米店

原宿の街で米屋が進化する オーダーメイドのブレンド米が大評判の小池精米店

「東京・原宿のお米屋さん」と聞いて、どんなお店・店主を思い浮かべますか?流行の先端を行くカッコいいファッションに身を包んだダンディな男性が、さらっと髪をなびかせて、よっこらしょっと米俵をかつぐ?当たらずも遠からじ。ファッションはともかく、小池精米店の小池理雄(こいけただお)さんは、時代のステージの先端に立って、米のおいしさ・楽しさをアピールするカッコいいお米屋さんです。

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今、消費者に選ばれるために提案・アピールを

米の未来が暗いなんて誰が言ってるの?

 「日本の米の消費量は1963年をピークに減り続けている。確かにそれは事実だけど、その数字だけを取り上げて現在と比較し、米の未来は暗いだなんて悲観するのはナンセンス」と小池さんは言います。

米が大量に消費されていた時代、情報は少なく消費者の選択肢は乏しく、主食と言えばほとんど米。つまり作り手・売り手が完全に主導権を握っていました。しかし半世紀を経て食生活が多様化し、パンやパスタなど、おいしい主食も豊富に手に入るようになった今、ビジネス環境はまったく様変わりしています。

主導権は消費者側

 「今は何を買って食べるかの主導権は消費者側にある。米も米屋も消費者から選ばれる立場。そのためには自分がどんな米屋で、どんな技術・サービスを持っていて、どう皆さんの食生活に役立つのかを積極的にアピールし、楽しみ方を提案していく必要がある」。そう語る小池さんですが、実はキャリアはまだ10年そこそこ。2006年に3代目店主に就任したものの、その当時はまだ素人同然でした。その彼が大きく成長できたのは、この原宿という街の環境が要因になっているのかも知れません。

原宿の米屋の顧客は飲食店が7~8割

裏原宿は春の小川が流れる農村だった

 お店は表参道と明治通りの交わる交差点から一歩入ったキャットストリート。ストリートファッションの発信地として、エッジの利いたスタイルの若者で賑わう「裏原宿」です。

実はこの辺り一帯、江戸時代は田園地帯で、穏やかな田圃=穏田と呼ばれていました。界隈に流れていた渋谷川(童謡『春の小川』のモデルともされる)の水流を利用した水車の風景は「隠田の水車」として、葛飾北斎の富嶽三十六景の一つとして描かれています。「穏田」の地名は地図上から消えましたが(現在の住所は神宮前)、商店会や地域施設の名前として残っています。

顧客の中心・飲食店の厳しい注文

 小池精米店はこの原宿・表参道を中心に渋谷・青山・赤坂・麻布などを商圏としており、顧客の7~8割が飲食店。飲食店の客単価が比較的高めということもあり、他地域よりは値段がやや高めですが、注文の仕方にはどこも強いこだわりがあり、分つき(精米の際に胚芽や糠を残して精米すること)の程度や小分けの分量など、細かいオーダーが入ってきます。

小池精米店の対応と研究開発

早朝3時起床で業務開始

小池さんの仕事は、毎朝3時半から始まります。同店における商品の販売は配達が9割。配達先は1日40軒近くに上ります。まずその日の配達リストをチェックし、それぞれの注文ごとに精米を行います。

多種多様・複雑な注文に個別対応

玄米の処理。以前と比べて玄米の需要は圧倒的に増えているそうです。生産地から仕入れた玄米は中に小石・もみ殻などの異物が混じっており、色彩選別機等の機械にかけて取り除かなくてはなりません。そして、それぞれの注文に応じて分つきにします。小分け作業。たとえば玄米3キロ×15パック、2.5キロ×2パックで片方は白米、片方は分つきなどで、一つとして同じ仕様はありません。その他、通常の精米や、無洗米づくり、雑穀米づくりなど、仕事は多岐に渡ります。

小池精米店ならやってくれる

 こうした多種多様な注文は小池さんの代から、つまりここ10年で始まりました。他の地域では例がなく、ユニークな飲食店が集まる、この周辺地域の特色とも言えそうです。しかし逆に「小池精米店ならここまでやってくれる」という評判が広がったために、こうした習慣が出来上がったとも考えられます。

ブレンド米の概念を刷新する商品を開発

味を創造するオーダーメイドのブレンド米

 いずれにしても複雑な注文に応じて、いろいろな米の精米に携わってスキルアップした小池さんは、短期間でスペシャリストに。そして注目すべきは、全国各品種の特徴に関する知識と精米技術を掛け合わせ、独自のブレンド法を開発したことでしょう。

今までブレンド米と言えば、例えば銘柄米に安い米をブレンドし、銘柄米並みの味を維持しつつ値段を抑えた商品でした。しかし、彼は、この寿司にはこんなブレンドを、そのカレーにはこんなブレンドをといった形で、用途に応じたオーダーメイドの配合を提案。ブレンド米の概念を「味の創造」というポジティブなものに塗り変えました。その成果として売上は先代の頃から倍増。小池精米店は今や原宿界隈で、なくてはならない存在になっています。

そこに消費拡大のヒントが

 原宿、およびその界隈という地域特性を的確に掴んで繁盛する小池精米店。しかし、これは単に恵まれた地域の特殊なケースではありません。同店の取り組みには応用可能な、今後の米の消費拡大のヒントがたくさん秘められています。

現に小池さんは全国の生産者に求められ、消費動向に関する講演・相談会をたびたび行っています。新しい品種を作ったが、どう消費者に伝えればいいか苦慮する生産者。2018年度以降は減反廃止もあり、困惑している人も少なくありません。そうした生産現場に対して積極的に情報を提供しアドバイスするなど、貴重な橋渡し役として活躍しています。

小さな店から広げる大きな貢献活動

エンドユーザーと直に向かい合う小売店ならではの肌で感じ取った情報、顧客の多様なリクエストに柔軟に応じ、それを新しい技術やオリジナル商品の開発につなげる姿勢。濃厚な米の香りが充満する小さな小池精米店の、消費拡大への貢献活動はますます大きく広がっています。

三代目小池精米店

http://www.komeya.biz/

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