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「農の学校」では、農業に関心のある練馬区民の中から受講生を募集。都市農業をサポートする人材「ねりま農サポーター」を育成しています。初級コースの定員は15人ですが、平成28年度は39人、29年度は25人と、定員を大幅に超える応募がありました。
講師を務めるのは練馬区の農家たち。農業について基礎から応用編まで幅広い知識を教えています。
カリキュラムは初級と中級があり、中級は難易度別にさらに2コースに分かれます。初級では、種まきから収穫までに必要な作業と出荷作業について学びます。さらに都市農業や農地に関する基礎知識について1年かけて学びます。中級になると、練馬区内農家の畑で実習があり、実践に近い高いレベルの講義内容になります。
初級と中級それぞれのコースを修了すると、「ねりま農サポーター」に認定されます。
「初級の修了でもサポーターになれますが、受講者の多くは中級にステップアップしています。中級は講義内容が難しくなりますが、それだけ手伝える範囲も広がります」。
実際に作物を育てながら学習できるカリキュラム
「農の学校」のカリキュラムは、春夏の前期と秋冬の後期で構成されています。春夏は枝豆やトウモロコシなどを栽培し、秋冬はキャベツやブロッコリー、ダイコンなどを育てます。
「ダイコンを育てる場合、初回は農業用マルチシートで畑の表面を覆ってシートの穴に種をまきます。次回は発芽した芽の間引きをして、質の高いダイコンだけを選りすぐり、大きくなるように育てていきます
野菜を育てる段階を追って実践的に学び、最後は収穫作業を行います。そして、次のシーズンも作付けができるように畑を整えてカリキュラムは修了となります」。
「ねりま農サポーター」制度は、講師のアドバイスを受けながら実技を行います。また座学で知識も学べるので、より実践的な技術が理論的に身に付きます。
農家とサポーター双方に喜ばれる「ねりま農サポーター」
「農の学校」のカリキュラムを修了した「ねりま農サポーター」は、どのような活動を行うのでしょうか。
まず、農家から農の学校の担当者に、「1ヶ月後の日曜日に、ダイコンの収穫を手伝ってくれる人はいませんか」などのサポート依頼が来ます。そうすると、担当者が、各サポーターに連絡を取って希望者を募ります。
活動期間は農家やサポーターの都合によって異なります。「1日だけの方もいれば、週1~4回の頻度で手伝いに行く方もいます。中には半年など、長期にわたって活動する方もいます」。
興味を持ったサポーターは、担当者とともに農家の元へ行って作業内容や栽培方法などの説明を受けます。農家によって栽培する作物も違えば、栽培方法も違います。例えば、同じ品種のダイコンでも農家によって肥料の使い方が異なります。
サポーターは農家の話をヒアリングして、その仕事に携わるか決められるのです。このように、事前にお互いがしっかり話し合うため、満足度の高いマッチングを実現できるといいます。
「農家からは『一番忙しい時期に来てもらえて良かった』『除草作業を手伝ってくれて嬉しかった』『収穫作業が大変なので助かった』など、嬉しい声がたくさん届いています。一方、サポーターからも『好きな農業で社会貢献できて嬉しい』『プロ農家のすごさを肌で感じた』『達成感があった』という声をいただいています」。
なお、農サポーター制度をボランティアと有償のどちらで行うかは、サポーターと農家が予め担当者に希望を伝えます。
「有償を希望するサポーターは、給料を渡したいという農家とマッチングします。ほとんどのサポーターと農家は、無償で農サポーター制度を使用しています」。
現在、ねりま農サポーターの認定者は40人いて、そのうち29人が実際に活動しています。また、15軒の農家がサポーターを受け入れています。マッチング数はこの2年間で31件になりました。
時代とともに変容する都市農業「農の学校」の在り方とは
これまで都市部の農地は、いずれ宅地化するものだと予想されていました。しかし、平成27年に都市農業の安定的な継続を図る「都市農業振興基本法」が成立したことで、「都市農業はあるべきもの」という考えになり人々の意識も変わってきています。
生産地と消費地が近いため、都市農業には新鮮な農作物を供給できるというメリットがあります。また、農地は災害時の防災空間としても利用できます。
「都市農業の在り方は、今後も時代によって様々な変化をみせるものと考えられます。農の学校は時流に合わせて、その変化に対応できるサポーターを育成して、都市農業の発展をサポートする機関でありたいと思っています」。
「ねりま農サポーター」たちは、農家から農業作業に必要な技術を実践をふまえてしっかり学んでいます。人手を必要とする農家にとっても頼りにしていることでしょう。どの地域も、少子高齢化により農業の人手不足が心配されています。ぜひ参考にして積極的に考えていきたい取り組みです。