生産者のストーリーや消費者の体験を共有できる
「OWNERS」のサイト上には、全国各地の生産者がこだわって作る農作物や加工品が紹介されています。生産者のこだわりや希少性を理解し、予約注文をするオーナーを募集しています。オーナーになりたい人は、商品の配送先や支払い情報などの必要事項を入力すると登録が完了します。
しかし「OWNERS」のプラットフォームは、オーナーになったら、あとは商品を待つだけではありません。「コミュニケーションページ」で、商品ができるまでのプロセスが見られるのも魅力です。
例えば、北海道むかわ村にある「ASUKAのチーズ工房」が作る「長期熟成ホールチーズ」のオーナーになった場合を想定してみます。通常、チーズといえば三角形にカットされたものが販売されていますが、このプランの場合はホールチーズを丸ごとオーナーのために製造し、3ヶ月の熟成期間を経て配送します。
その間、農家はチーズの熟成状況や牧場の様子をコミュニケーションページに投稿し、オーナーはその様子をチェックしながら配送される日を心待ちにします。
「北海道の牧場に自分のチーズがあると思うだけで、なんだかワクワクします。しかも、ASUKAさんは熟成している期間中、ホールチーズにオーナーの名札をつけてくれているんです。その写真がメッセージとともに、コミュニケーションページに掲載されるんです。プレミアム感があってオーナーは楽しいです」と谷川さんは語ります。
農家の人柄や思いが伝わるから、消費者は身近に感じる
一見とてもシンプルな仕組みですが、「OWNERS」のオーナーとなる人たちは生産者に親しみを感じやすいそうです。
オーナーとして登録する際に「届けられる作物を主人へのプレゼントにしたい」と農家へメッセージを送る方がいます。また、「来年も楽しみにしています」と作物が届いたことへの、お礼の手紙を農家へ送るオーナーの娘さんもいました。
「そもそも、現状の市場流通においては“誰が作ったか”という情報は表に出ません。直売所やスーパーで『顔が見える』という触れ込みの販売方法であっても名前が書いてあったり写真が貼ってある程度です。
ネット販売においても、一般的なショッピングサイトでは購入して終わりか、もしくはPRとして農家さんの顔を前面に押し出しているだけで、実際は違う生産者の商品が届いてしまうといったサービスもあります。既存の販売方法では、生産者側の情報は伝わりません。検索する手段もなければ、継続的に直接買う手段もほとんどありません」。
『OWNERS』では、地域のことや生産者さんの背景をしっかりと説明します。
「Aさんのイチゴと、Bさんのイチゴでは思いが違う、ということです。コミュニケーションページを通じて、その農家さんとの長い関係性を構築した上で、直接的に買う方法を提供しているので愛着が湧いてくるのです。
だからこそ、農家さんに何か伝えたいと思う方が多いのだと思います。裏を返せば、そういう環境があれば、農家さんとコミュニケーションをとりたかった方は大勢いたのだと思います」。
ストーリーだけでなく、品質にもとことんこだわる
OWNERSでは担当者が生産者を訪問して「どんな思いで生産物を作ってきたのか」など丁寧にヒアリングし、農家の思いやこだわりを引き出します。そして、実際に現場で感じた魅力とともに情報発信しています。
遠方の場合は、インターネット通話サービス「Skype(スカイプ)」を利用することもありますが、対面で話す時と同様にじっくりとヒアリングしています。
もちろん、生産物の品質も重視しています。ただし、その基準は既存の流通とは違います。
「既存の流通においては、形・色・重さといったものが主な価値基準になっていました。これは消費者側から見た価値ではなく、運びやすいか、売りやすいか、といった流通の都合によって作られた基準です。
私たちはそういった基準ではなく、その味や食感など消費者がおいしいと思えることが価値になります。そして、背景や生産方法などの情報まで含めた価値が、ちゃんと消費者に伝わることを重視しています」と小林さんは語ります。
ストーリーだけ、品質だけでもなく、どちらも揃っているからこそは多くの方に支持されます。また、情報の発信源となる「OWNERS」自身が、生産者と真摯に向き合っているからこそ、温かいコミュニケーションが生まれるのでしょう。
「体験農園」の特典を付け、消費者とリアルに交流
生産者の中には、自身の農園にオーナーを招待し収穫や作付けをする「農園体験」を特典に付けてリアルな交流をされる方もいます。
「農園を訪問したオーナーさんから、『ありがとう』『おいしかった』など直に感想を聞けるのは、農家さんにとっても良い刺激になっています」と谷川さん。
「OWNERS」は欲しい商品を買って終わりではなく、消費者が生産者と深い関わりができるのが魅力です。私たちも、できるだけ繋がりを生み出すような提案をしたいと思っています。
農場での体験を通じて、新たに農家のファンが増えることも珍しくありません。交流はその場限りではなく、これからもずっと続いていきます。
SNSで拡散するコミュニケーションの輪
オーナーと生産者とのコミュニケーションは、「OWNERS」というプラットフォームの中に留まりません。
マンゴーのプランに登録した方が、「マンゴーのオーナーになった!」とSNSで発信し、届いたときにも感想を共有してくれました。その投稿をマンゴー農家が見ていて、「自分が作ったマンゴーで、こんなに喜んでくれる人たちがいるんだ」と嬉しそうにしていたそうです。
OWNERSがもたらすのは、オーナーと農家との1対1の交流だけではありません。SNSの普及が進んでいる現在は、喜びを分かち合いたいオーナーを通して情報が発信され、たくさんの人とつながることができます。
「インターネットによって、物理的な距離に関係なく、生産者と消費者が交流できるようになります。将来的には、OWNERS内でオーナー同士が情報を共有したり、コミュニティを作ったりすることができるようにしたいです。さらには、『顔見知りから買ったり、コミュニケーションをとりながら買うのが当たりまえ』という環境を作りたいと考えています」。
生産者の思いや、生産物にまつわる物語を大切に扱ってくれる「OWNERS」。手塩にかけて育てた大切な生産物を、もっと多くの人に食べてもらいたい。そして知ってもらいたいという生産者にとって、とても魅力的なサービスではないでしょうか。興味を持った方は、ぜひ参加ください。